三浦大知の「Le Penseur」の歌詞とダンスからの勝手なる考察

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三浦大知が「Le Penseur」という楽曲を1月1日に発表した。

また、とんでもない歌を発表した。

初めて聴いたときの感触はアルバム『球体』に出会ったときに近いかもしれない。

三浦大知の「Le Penseur」には、そういう独特の吸引力と、多重的に想像力を喚起する魅力に満ちているのだ。

この記事では、そんな「Le Penseur」の個人的な感想を書いていきたい。

本編

言葉としての「Le Penseur」

「Le Penseur」を聴いて感じるのは、メッセージ性の強さ。

「Le Penseur」という言葉はフランス語で<思想家>=<考える人>ということもあり、思考が螺旋階段のように導き、深淵なる何かに導くような心地を感じさせてくれる。

見えてるのはほんの一部だけ
思考止めないで

このフレーズからも分かる通り、何かを直接的に言葉にするというよりも、<思考すること>そのものを促すような歌詞になっている。

振り返ると、AIとタッグを組んだ「IN THE MIDDLE」のテーマとも通ずる部分がある。

コロナ禍における三浦大知は楽曲は、楽曲の中に強い感情をにじませながらも、あえて直接的に価値を定めたり、早計に何かに善悪をつけるような態度は避けている印象を受ける。

それは自分の言葉の影響力を踏まえている部分もあるんだろう。

けれど、「Le Penseur」の言葉で言えば、自分が<見えてるのはほんの一部だけ>であり、今何かを判断している材料だって、ある側面の一部でしかないことに自覚的だからこそ、三浦大知は今持っている価値そのものを語るのではなく、価値を決めるに至るまでの態度や眼差しについて丁寧に言葉を費やしているのかなーと思うのだ。

実際、コロナ禍においては常に情報が錯綜していて、正しいと正しくないが混在している状態で早計な言葉をSNSに書いてしまったり、他人を咎めてしまう事案がよくある。

三浦大知もまた、そういう言葉をみて感じることがきっとあったのだろうし、そういった価値観を踏まえつつの表現になったからこそ、「Le Penseur」がこういう言葉・テイストの歌になっているのかなーと思うのだ。

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考える人の話

見えてるのはほんの一部だけ
思考止めないで

ここが「Le Penseur」のメッセージのひとつの核だと思う。

でも、その一方で単に<よく考えましょう>を言いたいだけの歌には思えない、というところがある。

「Le Penseur」というタイトルが、よりそういう考えに拍車をかける。

「Le Penseur」という言葉は、ロダンの<考える人>の彫刻作品をモチーフにしているから、と言われているから。

ちなみに、<考える人>とは、この彫刻作品のことである。

また、<考える人>は、ダンテの『神曲』地獄編第3歌に登場する「地獄の門」から着想を得て作った作品の一部だと言われている。

まあ、「神曲」とか「地獄の門」についての細かな説明は省くとして、だ。

<思考を止めないで考え抜こう>が歌のテーマと思われる「Le Penseur」において、なぜロダンの<考える人>を歌のモチーフに組み込んだのか、というところに自分は気になるポイントが生まれる。

いや、もちろん、だ。

そんなに深い意味はない、という可能性もある。

言葉を構築していく中で折り重ねる部分もあるから。モチーフとして加えてみた。

それくらいの話なのかもしれない。

「Le Penseur」の動画を見ていると、冒頭はロダンの<考える人>と同じように何かを見下ろしているポーズからスタートする。

そこから三浦大知が紡ぐ言葉と連動して三浦大知含めたダンサーが動き始まるため、言葉のひとつひとつに大きな意味を感じずにはいられないわけである。

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地獄の門の話

この部分について考えるうえで、少し気になることがあった。

「Le Penseur」からは少し離れた話になるんだけど、昨年の三浦大知のエピソードで、こんなものがある。

それは、『おげんさんといっしょ』に出演したときの話である。

三浦大知はこの番組で「不思議 〜Dance Remix〜」を披露した。

これは星野源の「不思議」をダンスリミックスとしてアレンジしなおしたもので、三浦大知は自身で振り付けをして、この曲のダンスを踊りこなしたのだ。

この曲がとにかく素晴らしかったんだけど、この曲を披露した後、三浦大知は「不思議」について、<星野さんは素敵に地獄を歌うイメージ。地獄の世界観の中で愛を踊った>と語っていた。

そう。

<地獄>というのが大きなキーワードとなって、「不思議」を踊りこなしたというのだ。

そこでふと感じたのは、「Le Penseur」というのは三浦大知が感じる<地獄>の再構築なのではないかということ。

三浦大知が<地獄>を表現したかったからこそ、ダンテの『神曲』地獄編第3歌に登場する「地獄の門」が、ひとつの着想ポイントになったのではないかということ。

「Le Penseur」においても、<開く門><浮かぶ模様>というワードがあって、「地獄の門」の作品ともリンクしそうなフレーズがあるから、そんな風に感じてしまう自分がいる。

さらに言えば、三浦大知の振り付けって歌詞と動作をリンクさせながら、動きを膨らませていくことが多いけれど、もっとも重要なワードはあえて歌詞から削って<振り付け>のみで表現することが多い。

それこそ「不思議 〜Dance Remix〜」を披露したとき、<歩き出す>の部分は星野源の歌を削って、三浦大知のダンスで<歩き出す>を表現していたのだ(ここのパートでは、実際に三浦大知が歩き出すようになっていた)。

<地獄>の表現がこの歌の肝だとしたら、<地獄>は言葉ではなく<ダンス>に落とし込むだろうって思うから、<門>というワードは歌詞としてあっても、<地獄>はあえて言葉から切り落としたのかなーという想像。

なんてことまで踏まえて考えてみると、ロダンの<考える人>や、ダンテの『神曲』地獄編第3歌に登場する「地獄の門」が登場した意味をなんとなく感じてしまう自分がいる。

そう言えば、三浦大知が星野源の「不思議」を語るうえでも、<地獄>そのもののを描くことに感銘を受けているというよりも、<素敵な地獄>に感銘を受けていた、語っていたのが印象的だった。

確かにこの世界は今、限りなく<地獄>かもしれない。

でも、<地獄>の中に<素敵>を見出す眼差しに、三浦大知は感銘を受けたのではないか、と思っている。

つまり、「Le Penseur」は、三浦大知流の<地獄>から<素敵>を見出す歌なのかなーという考察。

さらに言えば、三浦大知が<素敵>を見出す中で重要なのは<考えること>であると結論づけたからこそ、「Le Penseur」というタイトルにし、<考える人>をモチーフにしたうえで、三浦大知の<考える>を言葉にしたのかなーなんてことを思うのである。

「Le Penseur」は<思考し続けて>というワードが締めくくりになる。さらには、

視覚 聴覚 六感 研ぎ澄まして
四角 三角 どう描く この頭で

というフレーズを何度も繰り返すのだ。

流し込む色とりどりの炎

というフレーズにおいては、色んなトピックやニュースに触れると、ついつい怒りだったり、負の感情が沸き起こることになる、その感情を切り取っているのではないか。

言ってしまえば、<地獄>に心を飲み込まれそうになる瞬間を示しているというか。でも、

でもクールにぶれぬ心

というフレーズにあるように、クールにぶれぬ心を持つことで、「IN THE MIDDLE」でいうところの<真ん中>でいることで、そこから脱却できる・・・みたいなことを言葉にしているのではないか。そして、

開く門の彼方 浮かぶ模様
思考し続けて

このフレーズの通り、開く門とその彼方に浮かぶ模様=自分の周りの未来の景色が変わっていくのではないか、なんてことを思ってしまうのである。

そのための根本にはあるのは、<思考し続ける>という行為。

その思考をするためには、視覚、聴覚、六感を研ぎ澄ませる必要があるし、ここが変わることで頭で描けるものも、自分の周りの景色も変わっていく・・・みたいな話なのかなーと思ってしまっている自分。

まとめに替えて

コロナ禍における世界を地獄と捉えつつ、そこから<素敵>を見つける歌、というのがこの歌における自分の勝手ながらな考察。

ロダンの「考える人」やダンテの「地獄の門」は、<素敵>を見つけるうえでの大きな補助線を与えてくれる要素になっている。

そんな風に考えている自分が、いる。

いずれにしても、「Le Penseur」は様々な決意を表現に落とし込んだ歌であり、コロナ禍に考え抜いたことの総決算であり、これからの意思表明の歌だからこそ、1月1日に発表したのかなーなんてことを思うのである。

深い部分に潜ったうえで考え抜いた歌だからこそ、陽も陰も含めた様々な感情を「Le Penseur」から感じるし、言葉と音とメロディーとダンスが結託して、深い表現に落とし込むことになっているのだ!

・・・という、そんな妄想的考察。

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