前説

三浦大知の「Antelope」が発表された。

通算27枚目となるシングル。

今の三浦大知のモードが投影されたこの作品。

この作品の感想を書いていきたい。

本編

Antelopeの話

まず、1曲目は「Antelope」

一番は、オールアカペラで展開される珠玉のバラードソングである。

三浦大知の魅力って「歌いながら踊る」ということに集約されがちである。

実際、高いレベルのダンスを、ボーカルを一切乱さずに繰り広げるパフォーマンスは、三浦大知にしかできない芸当のひとつだと思う。

でも、三浦大知の魅力ってダンサーとしての側面だけでは語れられらない

なぜなら、ボーカリストとしても素晴らしいから。

そのことを実感させてくれるのが「Antelope」という楽曲なのである。

三浦大知の歌声を多重的にすることで、美しきハーモニーを奏でる「Antelope」は、三浦大知のボーカルの良さを際立たせている。

甘くて表情豊かなボーカル。

1分30分以上あるアカペラパートに聴き惚れてしまうのは、三浦大知のボーカルが優れているからだ。

また、基本の歌声には「甘さ」があって、その甘さが楽曲の美しさを際立たせているわけだけど、それだけではない魅力がボーカルにはある。

例えば、

声の中に、ちょっとした泣きっぽい要素もあるし、時に歌声から鋭さみたいなものを生み出すこともある。(三浦大知の低音がすーっと伸びて生きたとき、特に声の中にある鋭さを感じた次第)

表情豊かという言葉で集約できるのかもしれないが、実際、三浦大知の歌声って声だけでどんどん楽曲に展開を作り上げているなーと思うわけだ。

アカペラパートが終わって以降も、必要以上にサウンドは増やさないアレンジ。

あくまでも、ボーカルの美しさを重点的に置いた構成で魅了していくわけだ。

とはいえ、不思議と音に一切「不足」は感じない。

きっと三浦大知とUTAさんとがっつり組みいって楽曲を制作したんだと思うんだけど、コーラスというか声の配置ひとつとっても絶妙だよなーと思うのだ。

低音と高音の混ぜ方とか、和音的な響きのコーラスをどこまで入れるかとか、本当に全てが絶妙なのだ。

信頼関係のある二人だからこその魅せ方であり、完成度だよなーと改めて思う。

Yoursの話

シックな雰囲気に身をまとったダンスナンバーである。

ダンスナンバーって聴くと、アゲアゲなイメージを持つ人もいるかもしれないが、三浦大知の歌って、独特の色気みたいなものを全編に配置している。

かといって、チルっぽい雰囲気になるのかといえば、そういうわけでもなくて。

きっちり身体が動いてしまうような「リズム」で魅せる気持ちよさがあって。

「Yours」の場合は、特にサビの置き方が面白いよなーと思う。

いわゆるJ-POPって、やっぱりサビ史上主義な音楽構成をする。

サビでいかに盛り上げられるかを大事にして、そこでハイトーンでどかーんと攻めることがよくある。

けれど、「Yours」は、そういう構造から少し離れた魅せ方をする。

あえてサビはボーカルレス(っぽく)することで、ベタなポップスにはない高揚感を生み出していく。

こういうパターンって、日本のメインストリームだとなかなかにやりづらい構成である。

でも、三浦大知はそこにアプローチする。

しかも、単なる変わり種としてのアプローチというわけではなく、そういうアプローチであることの意味を楽曲なりパフォーマンスで提示する気持ちよさもある。

ライブのときの「Yours」をみて、こういうパターンの楽曲をこういう形(ダンス)で魅せるか、とドキドキしたことをよく覚える。

Not Todayの話

NHKのパラスポーツアニメ『アニ×パラ』の車いすバスケットボール編テーマソングである「Not Today」。

スポーツを扱った作品のテーマソングということで、ある種の高揚感が作品に内包している。

打楽器が打つリズムのワクワクが半端ない。

でも、早めのBPMで一気に駆け抜けるわけというわけでない。

三浦大知が流石だなーと思うのは、こういう楽曲に対して、熱さ一辺倒で押すのではなく、ある種のクールさも内包しているところである。

打楽器のリズムが印象的なパートのあとに、ボーカルが際立つパートを配しているんだけど、そのコントラスが絶妙なのだ。

熱さとクールさ。

まるで三浦大知のパフォーマンスそのものじゃないかと思うわけだ。

いやーつくづく面白い楽曲構成だよなーと思う。

王道のポップスからは大きく外れたメロディーラインとサウンドアプローチはここまでふんだんに使われているわけだ。

でも、決してマニアックな作品になるのではなく、きちんと「ポップス」としての輝きも備えている(まあ、この辺は聴きてによるかもだが)。

歌、ダンスともにパフォーマンスとしての説得力は圧倒的で、予想のつかないメロディーラインとサウンドメイクを突きつける。

そりゃあ、ドキドキするしかないよなーと思う。

相変わらず、三浦大知は恐ろしい。

3曲を通して聴いてみて

先程もちらりと言葉にしてみたけれど、三浦大知の音楽って、三浦大知にしかない魅力を持っている。

「Antelope」も「Yours」も「Not Today」も全てカラーの違う曲である。

しかも、魅せるポイントも大きく違う。

ただし、ひとつ共通していることがある。

それは、どれもJ-POPの常識を超えた地点で作品を完成させているということだ。

こういうのが日本の音楽の常識なんだよ、というその常識を粉砕するようなアイデアと実行力がある。

だからこそ、三浦大知の音楽にはいつでもドキドキさせられるのだ。

あえて、ジャンルを述べようとしても、「三浦大知」という言葉でしか表現できなくなってしまうのだ。

ジュエリーボックスのように、様々な輝きをみせる「Antelope」の楽曲3曲。

ぜひとも、聴いてみてほしいと強く思う。

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