2021年上半期ベストソング20
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早いもので2021年ももうすぐ半分が終わろうとしている。
世の中的にはまだまだのほほんと暮らすことができない人が多いと思うし、音楽面においても色んなレベルで厳しい局面が続いているように思う。
ただ、それとは別に今年リリースされた楽曲は素晴らしいものが多かった。
それは、間違いない。
そこで、せっかくなので上半期にぐっときた楽曲を20曲セレクトして紹介できればと思う。
題して、2021年上半期ベストソング20。
ちなみに、これは音楽の優劣を決めるものではなく、個人的な趣向を晒すものと思ってもらえたら幸いである。
なお、楽曲の選定については、下記の条件は設定させてもらった。
・選出ベストソングは全て“邦楽”
・ひとつのアーティストにつき、選定は一曲まで
また、月別ベストソング・期間別ベストアルバムはこちら
2021年1月、バンド・アーティストの個人的な月間ベストソング15
2021年2月、バンド・アーティストの個人的な月間ベストソング15
2021年3月、バンド・アーティストの個人的な月間ベストソング15
2021年4月、バンド・アーティストの個人的な月間ベストソング15
2021年5月、バンド・アーティストの個人的な月間ベストソング15
2021年6月、バンド・アーティストの個人的な月間ベストソング15
2021年春、バンド・アーティストの個人的なベストアルバム10選
2021年夏、バンド・アーティストの個人的なベストアルバム10選
特定のアーティストばかりを選ぶよりも、色んなアーティストが登場した方がワクワクするというのが個人的な見解なので、ご理解いただけたらと思う。
自分の好みと照らし合わせながら読んでもらえたら嬉しい限り
それでは、スタート。
ずっと真夜中でいいのに。「あいつら全員同窓会」
上半期のベストソングとして最初に選出したのは、ずっと真夜中でいいのに。の「あいつら全員同窓会」。
ずとまよの音楽は、他のアーティストにはないかっこよさが宿っている。
ポップの枠組みで分けることができる作品だとは思うが、いわゆるポップな音楽とは違う聴き心地があるのだ。
飲みやすさを売りにした甘そうなカクテルかと思って口に含むと、実は猛烈に度数の強いお酒だった・・・みたいな感触とでも言えばいいだろうか。
メロディーはキャッチーなんだけど、サウンドは革新的でロック性を帯びていて。
予想もつかないところで予想もつかない音を鳴らし、荒ぶるところではトコトン荒ぶっていて。
一見するとポップな聴き心地だからこそ、容赦ない感受性豊かな音楽の組み合わせにドキドキさせられっぱなしなのだ。
耳をすませて、丁寧に音の細部を聴けば聴くほど、その構築の仕方がおぞましくて、中毒的になってしまうのである。
考えたら、「あいつら全員同窓会」っていうタイトルもエッジが効いている。
普通の発想では出てこない言葉をさらりとポップな文脈に置いてしまう辺りも、つくづくセンスを感じる。
2021年上半期のベストソングを語るうえで、外せない一曲である。
関連記事:ずっと真夜中でいいのに。とかヨルシカのような匿名性のあるアーティストの話
ヒトリエ「3分29秒」
3人体制のヒトリエがいかに凄まじいのかがわかる一作。
というか、ここにきてまさか<化ける>バンドになるとは思っていなかった。
シノダの作曲センスが素晴らしくて、メロディーの詰め方、展開のさせ方にワクワクさせられるのだ。
なにより、シノダの音楽センスに共鳴するかのように、イガラシとゆーまおの音が自由に荒ぶっているのがたまらない。
このバンドでしか成立できない、高速ビートなのに繊細なアンサンブル。
あと、テレビアニメ「86―エイティシックス―」のオープニングということもあって、今までヒトリエの音楽を聴いてこなかった層にも、このかっこいい音楽が届いてるのが痛快で、感動的である。
そりゃあ、これだけかっこいいサウンドを鳴らしているんだから、ぐっとこないわけがないよなーと思う。
関連記事:新しいヒトリエの音楽がかっこいいということを伝えたい
なきごと 「知らない惑星」
3曲目は、アグレッシブなサウンドが印象的ななきごとの一曲。
キュートさと豪快さが折り重なったような手触り。
余計なスキはつくらず、畳み掛けるように楽器のサウンドが展開されているのが良いのだ。
ギターが見せ場を作ったかと思えば、不意にドラムが躍動したり。
バンドサウンドが身を引いたかと思えば、ぐっとボーカルが全面に出てして、存在感を示すみたいな、ワクワク続きの構成が良いのだ。
さらには、水上えみりのボーカルがみせる表情の作り方も良い。
凛とした表情を魅せつつも、クールに決めるところはクールに決めていて、ボーカルそのものの展開が楽曲のスリリングさを助長しているのだ。
あと、演奏でぐっとくるポイントが多い歌なのに、最後はアウトロなしでスパっと終わるところもかっこよい。
小林私 「風邪」
世に放たれたタイミングだけで言えば昨年の歌になるんだけど、この曲がリード曲となっているアルバム『健康を患う』は2021年1月20日発売ということなので、上半期のベストソングとして紹介させていただきたい。
小林私の持ち味はしゃがれたパワフルな歌声。
そして、特有のコブシの効かせ方も魅力的である。
歌声のあり方が劇場的というか、とにかく表情豊かなのが良いのだ。
弾き語り一本でも存在感を示す力強い歌声なんだけど、「風邪」はバンドアレンジに仕立てられているため、より歌声が持つドラマ性が本領発揮している感。
サビのコーラスの入れ方も絶妙で、サビの「どうせなら どうせなら」の中毒性が高い。
あと、単純にサビのメロディーラインが自分のツボだったりする。
Awesome City Club 「勿忘」
映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソングとして書き下ろされた一曲。
映画の世界とシンクロする切なくて、味わい深い歌詞が印象的である。
また、「恋」をテーマにした歌を表現するうえで、atagiとPORINの男女ツインボーカルが素晴らしく、良い味を出している。
冒頭は余計な削ぎ落とし、あくまでも淡々とメロディーを紡いでいく構成。
だからこそ、時間をかけてきた音の積み重ねていくアレンジにある種の時の流れを感じさせるし、サビで一気に景色が開けたときの感動が代えがたいものになっている。
2番ではメロ終わりにそのままサビにいかず、一旦間奏に入る流れも良い。
ここでは、モリシーの躍動するギターフレーズが炸裂しているんだけど、このメロ→間奏→サビの流れが、秀逸で惹き込まれる要因になっているように思う。
この歌の構成そのものが、この歌の出てくる主人公の人生の激動を表現しているような心地。
だからこそ、どこまでも歌詞の解像度が高くなっている。
Pii「カキツバタ」
MVにチラリと映る印象的な紫の髪の色。
無名でありながら突如としてラジオなどで取り上げられ、あの小沢健二も話題にあげたことから、PiiとはAwesome City ClubのPORINの別プロジェクトではないか、という声も挙がっている。
声もなんとなく似ているし。
ただ、これについての真実は未だに謎。
まあPiiの素性は置いといて、仮に無名のアーティストだとしてもこの歌を知ってしまったら話題にしたくなるような魅力をはらんでいるのは確かで。
昭和の歌謡曲を感じさせるノスタルジックなメロと音の運び。
こういう雰囲気の歌に「アナログのレコード」みたいなワードを使うことで、より歌が持つ美しい懐かしさが際立つし、楽曲全体の解像度が鮮明になっていく。
ただし、この歌が単なるノスタルジーに終わるのではなく、未来に目を向けている構成も良くて。
一番のサビでは<昔を想う>という言葉で綴っていたが、最後のサビでは<子に語る未来と
今をゆく私を思う>という言葉で締めくくっている流れにぐっとくる。
ノスタルジーのその先を行く、そんな意志を言葉からもサウンドからも感じるのである。
和ぬか 「寄り酔い」
20歳の現役大学生であること以外は、情報が皆無なシンガーソングライターである和ぬか。
シンプルなアレンジながらも、祭囃子のようなビートに乗せた不思議な装いが中毒的。
ボーカル自体は中性的で無色な印象を与えるんだけど、歌詞はゴリゴリにセクシャル的でセンセーショナル。
この相反する要素をあざとくなく並べているところに、この歌が持つ魅力が内包されている印象を受ける。
チャラさをウリにしたようなアーティストではなくて、こういう装いのアーティストがこういう歌詞をうたうからこその魅力があるというか。
まとめると、サウンド、歌詞、ボーカル、リズム、全ての要素が絶妙な装いに仕立てられて、他のアーティストとはまったく違った魅力を放っているからこそ、どこまでも惹かれるという話。
STUTS & 松たか子 with 3exes 「Presence I feat. KID FRESINO」
STUTSのスリリングなビートメイクと、作詞作曲を手掛けたbutajiの卓越した才能がまず印象的。
そんな楽曲の中に、瑞々しい雰囲気を放った松たか子のボーカルと、3exesとしてドラマの出演陣である岡田将生、角田晃広、松田龍平がコーラスが美しくハマっていく。
KID FRESINOもラップも秀逸で、甘さ際立つメロウな楽曲に、スパイス的なエッジを効かせていく。
端的に言えば、それぞれのアーティストが自分たちの持ち味をいかし、その融合が圧倒的な化学反応を放っている印象なのだ。
華やかなんだけど、素朴な雰囲気もあって、個性的なんだけどマイルドな感じもあって、結果、何回も聴きたくなる魅力をはなっていくのだ。
あと、単純にこの歌が主題歌だったドラマも良かった、というところもある。
話題になるべくして話題になった一曲とも言えよう。
クレナズム 「酔生夢死」
ノイジーで幻想的に響くサウンド。
歌の出だしは繊細で儚げな印象が強い。
しかし、35秒ほど経ってサビに入ると楽曲の表情がぐっと変わる。
音の深みを保たせたまま、歪んだバンドサウンドがありったけの轟音をぶちかますのだ。
シューゲイザーやドリームポップに影響を受けたクレナズムらしいサウンド運びで、ぐっと心を射止められるのだ。
タイトルの『酔生夢死』は森鴎外の『妄想』という短編作品に出てくる熟語から引用した言葉らしいが、暗い雰囲気の曲ながらも楽曲が紡ぐ言葉の矛先には光のキラメキがある。
この歌が圧倒的な美しさを放つ理由のひとつである。
Kroi 「Balmy Life」
R&Bやファンク、ソウルやロックやヒップホップなど、ジャンルレスに海外の音楽を巧みに自分たちの色に昇華させたKroiの「Balmy Life」。
ただし、海外の音楽をそのままアウトプットするのではなく、自分たちのフィルターを通した解釈だからこその心地よさがある。
というのも、メロディーに対するサウンドの相性がバツグンというか、サウンドがメロディーを聴く上で余計な邪魔をまったくしておらず、耳馴染みがとても良いのだ(この視座はKroiというバンド名にも通底する価値だと思う)。
サウンドが印象的なのに、メロディーも心地よい。
鬼に金棒モードに突入しているというか。
卓越したバンドアンサンブルで、クールかつスリリングに渦のように生み出す楽曲のグルーヴが素晴らしいからの聴きごこちであろう。
あと、ラップパートと歌メロパートのコントラストも鮮やかで心地よい。
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Cody・Lee(李) 「悶々」
Cody・Lee(李) のサウンドには、オルタナティブ・ロックのさらなる<オルタナ>を感じさせる。
シンプルな言葉で言ってしまうと<クセのあるサウンドである>みたいな言葉に修練しちゃうんだけど、フジファブリックや銀杏BOYZといった、00年代を彩ったオルタナティブ・ロックのエッセンスを吸収して、自分たちの色に染め上げた心地を感じるからこその感触なのだ。
「悶々」においても、Cody・Lee(李) ならではのセンスが炸裂している。
ギターの音の響かせ方やリフ、リズムアプローチに他のバンドにはない変則的なアプローチを随所に感じさせるのだ。
サウンドはもちろん面白みにあふれているんだけど、浮遊感のあるメロディーと、多重なコーラスのバランス感も絶妙で。
トータル、Cody・Lee(李) にしか生み出せないロックソングを感じさせるのだ。
長谷川白紙 + 諭吉佳作/men 「巣食いのて」
イントロ、冒頭数秒でこのリズムメイクだけで誰の歌かすぐにわかってしまうような独創性がある。
ポリリズムなビートメイクで、緩急の付け方も唯一無二。
ポップスが持つ秩序を全てぶち壊して、新しいルールに基づいた秩序を構築するような面白さが滲み出ている。
しかし、そういう複雑怪奇なリズムアプローチを涼しい顔して泳いでいく諭吉佳作/menのボーカルが素晴らしい。
やがて、長谷川白紙と諭吉佳作/menの歌声が混じり合い、音の快楽を耳の中に容赦なく流し込んでいく。
新世代の才能が結集してできた、2021年屈指の名曲のひとつであるといえよう。
星野源 「創造」
「不思議」と「創造」。
星野源は、すでに今年、ふたつの代表曲を生み出した。
どちらを選出させるのかが悩ましく、名曲製造機である星野源を恨みたくなる。
とはいえ、自分の好みとしては断然「創造」だったりするので、こちらを選出するんだけどね。
さて、この歌が良いのは、任天堂に対する圧倒的な愛とリスペクトを詰まった歌詞とサウンドの遊び心。
リスペクトが突き抜けるからこそ、星野源としてのクリエイティビティも圧倒的なものを放っているのが素晴らしい。
ゲームサウンドを効果的に使っているんだけど、そんな音の中でも随所にマリンバを使っていて、きっちり星野源の音楽としても向き合っていて、その感じが良い。
あと、この歌そのものが歌詞を通じてのメッセージになっている<創造>することの素晴らしさ・楽しさを全面に提示しているという構成も良い。
単なる言葉先行の歌にならず、歌詞で主張していることが=「創造」という歌そのもので表現されているというか。
だからこそ、聴けば聴くほどにワクワクが止まらなくなるのである。
関連記事:星野源の「創造」が任天堂への愛とリスペクトで詰まっている件
三浦大知 「Backwards」
ボーカルしながらダンスする、ということにおいて閾値を越えた一曲。
よくこの歌は他のアーティストにはない楽曲である、といった褒め方を言葉にするけれど、三浦大知の歌は、楽曲に直接触れたあとでも真似できない凄さを放っている。
楽曲で表現されていることが単純に真似できない境地で成立していて、パフォーマーとしての三浦大知がいかに別格であるかを痛感させられるわけだ。
故に、この歌には、三浦大知にしかできない高揚感がそこにある。
観ても良し、聴いても良しなスリリングなダンスナンバーを成立させている。
あと、三浦大知とNao’ymtのタッグということがたまらない。
煌びやかなシンセサイザーの中を、甘さと鋭さのある三浦大知の歌声が突き抜けていく感じ。
クールなんだけど、良い意味で緊張感があって、それが「Backwards」のかっこよさを随一のものにしている。
Bメロで一回楽曲全体の空気感を変える構成なのも良い。
関連記事:三浦大知の「Backwards」で魅せる、突き抜けたアグレッシブ性
Sexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」
2021年の上半期にリリースされたダンスナンバーの中で、一番と言っても過言ではない一曲。
なぜ良いと思うのか、については個別記事もある程度書いた気がする。
んだけど、ざっくりとした言葉で語るならば、様々なダンスチュージックの要素を踏襲しつつ、Sexy Zoneのボーカル四人だからこそのセクシーかつスマートな歌声が楽曲を唯一無二のものにしている。
複雑怪奇なビートメイクの上を、あくまでも自然体で(しかもSexy Zoneのメンバーだからこそ自然体になるアプローチで)軽やかにビートを乗りこなしている感じが、スリリングでワクワクするのだ。
ほんと、ビートへの乗りこなし方が細部までかっこよさで研ぎ澄まされている。
さらにサビについてもメロディーで魅せるのではなく、リズムアプローチ主体で魅了していくからこそ、ダンスミュージックとしてのかっこよさが不動のものになっている。
サビの歌の割り方もSexy Zoneだからこその構成のように思うし、今回楽曲に参加している四人の個性が綺麗に現れているように思う。
2番のAメロの畳み掛ける構成も素晴らしいし、キメとタメを効果的に使っている流れも良いし。
関連記事:Sexy Zoneの「RIGHT NEXT TO YOU」が最高傑作と思う理由
宇多田ヒカル 「One Last Kiss」
音の響き。
言葉のチョイス。
ボーカルとしての温度感。
楽曲の構成。
諸々を含めて、宇多田ヒカルのセンスってずば抜けているなあーと感じる一曲。
メロパートに対して、サビパートをこういう風に展開させていくのか・・・という面白さがあるし、少しずつ楽曲全体がアッパーになっていく流れも良い。
まあ、この歌が主題歌だった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』がとてつもなく良かったのが、この歌に対する加点ポイントを大きくしている要因だったりもするんだけどね。
関連記事:宇多田ヒカルの「One Last Kiss」とエヴァンゲリオンのシンクロ率について
米津玄師 「死神」
基本的に自分はベストソングではカップリング曲を選ばないし、「Pale Blue」だって名曲だと思うから記事の選出的には「Pale Blue」にしようと思っていた。
・・・んだけど、「Pale Blue」と「死神」、どっちが好きなんだという問いを自分に立てたら「死神」という答えが出たので、この歌を選出した次第。
米津玄師らしい、音楽センスとユーモア、そしてある種のシニカルさが炸裂した意欲作である。
もはや日本でもっとも人気のアーティスト、という言い方をしても語弊がないような立ち位置になった米津玄師であるが、それでもなおシーンにおいて革新的な楽曲を生み出すのだから凄い。
しかも今回の歌はサウンドの意匠を大きく変えました・・・みたいなお金を積むことによる変化で過去と差別化するのではなく、アイデアとセンスで過去の楽曲を塗り替えていく革新性があって脱帽という他ない。
古典落語の「死神」をモチーフにした世界観を、米津玄師らしいセンスで塗り替えていくのだ。
とはいえ、楽曲の雰囲気は初期の米津玄師らしさも通底しているものがあって、そのあんばいがたまらない。
願わくば、MVのフルサイズを観たいのが、数少ないこの歌に対する注文である。
関連記事:米津玄師の「死神」が圧倒的にヤバイ件
BUMP OF CHICKEN 「Flare」
3人体制のBUMP OF CHICKENで生み出した一曲。
しかし、タイトルから今作では不在になった直井の存在を予感させる。(詳しくは個別記事を読んで欲しい)
どういう形になってもBUMP OF CHICKENというバンドは四人がいてこそ、であることを感じさせる演出は流石の一言。
ただ、そういう文脈を抜きにして、藤原らしい心の機微や、奥深くにしまった悲しみを射抜き、丁寧に言葉に落とし込んでいく表現力は流石の一言。
フォーキーの音色が主体のシンプルなアレンジだからこそ、言葉の繊細が浮き彫りになっているのがたまらないし、優しく、時に切羽詰まった表情で言葉を紡ぐ藤原のボーカルが、この歌の持つ切なさを尖らせていく。
BUMP OF CHICKENの楽曲だからこそ感じられる感動があるし、この感動はBUMP OF CHICKENの歌じゃないと味わえない類のものだよなーと強く思う。
関連記事:BUMP OF CHICKENの「Flare」に対する素朴な感想
Official髭男dism 「Cry Baby」
Official髭男dismはとんでもないバンドである。
「Cry Baby」を聴いて、改めてそう思った。
「Cry Baby」は革新的な楽曲である。
今までのOfficial髭男dismの殻を破り、ある種の<黒さ>が際立つ歌詞構成になっている。
「青アザ」「バッドエンド」「反撃のパンチ」などなどなど、今までのOfficial髭男dismの歌には出てこなかったような威力の強いワードが立ち並ぶ。
そして、そういう言葉が似合うような装いに楽曲全体がなっているのだ。
ただ、何よりも圧巻なのは、楽曲の進行。
この歌はとにかく変調が多く、しかもその変調が一般的なポップスではありえないものの連続なのである。
端的に言えば、”変”な構成なのだ。
並のアーティストがやれば、違和感だけが残るような変調の数々。
しかし、Official髭男dismには、その変を楽曲のアクセントにしてしまい、きっちり歌メロとして美しいポップスに落とし込むのだ。
Official髭男dism、ひいては藤原の伸びやかかつ表情豊かなボーカルだからこそ成立させることができる凄さである。
それぞれのアーティストが、それぞれにしかないセンスで圧倒的な個性を確立しているが、Official髭男dismのこの歌もまた、Official髭男dismにしかできない境地になっていて凄まじい。
変と言われてもおかしくない独創的な構成が圧倒的な魅力になり、凶暴的な中毒性を生み出す。
Official髭男dismにでしかない境地であるといえよう。
関連記事:Official髭男dismが放つ「Cry Baby」のおぞましい世界観
SixTONES 「Lifetime」
2021年上半期のベストソングとして、最後に選出したのは、この歌。
SixTONES 「Lifetime」である。
SixTONESに関しては、2021年から良い歌をたくさん発表した。
力強いメッセージが印象的なロックナンバーの「ST」、洒脱で軽妙な印象の「Coffee & Cream」、人力ボカロの結晶といってもいいような完成度の高さである「うやむや」。
洗練されたメロディーラインと鮮やかなコーラスワークが印象的な「僕が僕じゃないみたいだ」も、今年発表された魅力の高い一曲であった。
ただ、多数ある素敵な楽曲の中でも、自分があえて一番を選ぶとしたら、「Lifetime」一択だった。
SixTONESのメンバー各位のボーカリストとして素晴らしさを体感できるそれぞれの歌割り、ミニマムなサウンドでありながら、どの曲よりも壮大でドラマチック。
こういう魅せ方でぐいぐい楽曲の世界に惹き込んでいけるのは、SixTONESならではだと思う。
ほんと、SixTONESはどのメンバーもボーカルとして素晴らしいのだ。
「Lifetime」を聴いていると、そのことを強く実感する。
ただ、改めて「Lifetime」を聴き直すと、ボーカルが優れているSixTONESの中においても、ジェシーの存在感って大きいなあと思っていて。
大サビ前のひとりのソロのパート、冒頭とラストで同じフレーズを歌うジェシーの存在感が圧倒的に際立っているのだ。
SixTONESは六人が揃うからこそ宝石のように輝くわけだけど、その輝きの先頭にはジェシーがいて、それがSixTONESの輝きを確かなものにしているとでも言えばいいだろうか。
Don’t be scared, Take my hand
I’ll hold you down to the end
Make it through ups and downs
Don’t look back, We’ll stand strong
ジェシーがこのフレーズを歌うからこそ、言葉が持つ意味がより強く、眩しく、輝く。
まあ何にしても、「Lifetime」が描く言葉は、今までのSixTONESとこれからのSixTONESを紡ぐものになると思うし、「Lifetime」はアーティストとしてのSixTONESとしての可能性をどこまでも強く感じさせてくれる歌だと思うわけだ。
個人的な2021年のベストソングを語る上で外せない一曲だと思う。
まとめ
こういう記事を書くたびに20曲という縛りプレイに苦悩してしまう自分。
せめてベスト50なら入れたい曲を全部入れられるのに・・・なんて気分になるわけだけど、その中であえて選ぶことに意味があるのかなーということで、悩みながらも20曲に絞ってみました。
なんであの曲が入ってないんだ、あの曲は入れて然るべきでしょという声は人の数だけあるかと思うけれど、その辺りはご了承してもらえたら幸いである。
自分としては、この記事が新しい音楽との出会いのきっかけのひとつになれたら嬉しい限りです。
それでは、今回はこの辺で。
ではではでは。
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