前説

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毎年、クリスマスシーズンにベストアルバムの記事を書いているので、今年も上梓したいと思う。

なお、この記事ではランキング形式でアルバムを発表していく。

ランキングにする罪深さを意識しつつも、ランキング化するからこそ見通せるものもあると思うので、年に一回限りでこういう形で紹介させてもらっている次第。

ちなみに、このランキングは<音楽の技術的な良し・悪し>は脇に置きつつ、1年間ブログを更新してきた中での<自分なりの美学>を物差しにしてランキング付けしている。

なので、インディーズだからとか、アイドルだからとか、キャリアのあるベテランだからとか、無名のアーティストだからとか、そんなのは関係なしにして<自分なりの美学>で順位づけしている。

物差しのひとつとして、楽しんでもらえたら嬉しい限り。

また、ランキングを作るうえで、下記、ルールを設定させてもらった。

・選出アルバムは全ていわゆる“邦楽”。

・オリジナルアルバム限定(ミニアルバム、epは除く)

・一組のアーティストの一作品まで

まあ、こいつの好みは、こういう音楽だったんだなあ・・・というものをなんとなく感じてもらえたら嬉しい限り。

なお、今年はベスト12というランキングにしてみました。(ベスト20だとちょっと書くのがしんどかったので)

それでは、どうぞ。

本編

12位:秋山黄色 『FIZZY POP SYNDROME』

まずは、秋山黄色のセカンド・アルバムとなる『FIZZY POP SYNDROME』を選出。

秋山黄色らしい彩りに溢れたこのアルバム。

10曲収録されているので、作品ごとの音楽ジャンルは微妙に異なっているんだけど、全部同じ背骨で楽曲が構築されている心地がする、というか。

冒頭の「LIE on」からラスト・ソングとなる「PAINKILLER」まで、ロック色が強めながらも、ポップなキャッチーさを内在した楽曲が揃っているのだ。

アルバム全体でみると、序盤は「サーチライト」「月と太陽」「アイデンティティ」と、今作の秋山黄色のキラーチューンが並んでいて、パブリックな秋山黄色の感性をぶちかましている印象を受ける。

で、後半に向かうにつれて、秋山黄色の内側に向かうような楽曲が並んでいるような印象を受けるのだ。

というのも、アーティストってふたつのタイプがいると思っていて。

「人に聞きたい言葉」を回り道して歌詞にする人と、「自分が内に秘めた言葉」を中心にして言葉にする人がいる。

で。

秋山黄色は自分の<思っていること>を比較的率直にするタイプのアーティストだと思っていて。

最初はセカンドアルバムということもあって、大衆的になった分パブリックな一面を魅せていきつつも、アルバムが進むにつれて、秋山黄色の核の部分、それこそ『From DROPOUT』で魅せた真髄に近づく楽曲が配置されている印象。

何にしても、アルバムを通して、秋山黄色の作家性を存分に感じることができて、それが良いなあと思ったので、数あるアルバムから『FIZZY POP SYNDROME』を12位に選んだ次第。

関連記事:秋山黄色の『FIZZY POP SYNDROME』に感じるポップ性について

11位:anewhite 『2000’s』

次世代の才能が切れ味鋭くやってきた!

『2000’s』に収録されている「ソフト」を聴いて、そんなことを思った自分。

上手く言葉にすることが難しいんだけど、今いわゆる”メガフェス”に出演しているギターロックバンドとは違う感性で、音とメロディーを積み上げる心地を覚えたのである。

だからこそ、その楽曲がどこまでも瑞々しく響く。

anewhiteの歌って、メロパートはメロディーが細かく刻まれいて、ラップではないんだけど<語り>のようなテンポで楽曲をドライブさせて、キャッチーなサビへとなだれ込むケースが多い。

かといって、いわゆるタメを作って、どかっと盛り上がるような形にサビにしているわけではなくて、絶妙なスルッと感で楽曲が展開される感じもあって。

こういう何気ない楽曲を構成するピースひとつひとつに、新しい感性を覚えるのである。

anewhie初のフルアルバムといったこともあり「カヤ」や「切言」のような代表曲を収録しつつ、「オールドスクール」のようなバンド的に新境地感のある楽曲もバランスよく収録している感じが良い。

何より『、新世代感を提示すると言わんばかりに、アルバム名を『2000’s』にしてるのが良い。(いや、意図は知らんけどね)

関連記事:2022年にすごく飛躍しそうな若手バンド特集

10位:Hakubi 『era』

Hakubiのメジャーデビューアルバムを10位に選出。

メジャーデビューアルバムということで、インディーズ時代のキラーチューンを再録したものをバランス良い並びで構成しているのが良くて。

「栞」のような今のHakubiだからこその歌もありつつ、「辿る」や「mirror」といった楽曲もある。

これにより、Hakubiの魅力的が多面的に広がっているし、荒削りな部分がありつつもロックバンドとしての力強さみたいなものを全面にぶちかまされることになる。

アルバム全体でみると、「悲しいほどに毎日は」でがらりと空気を変えつつ、「アカツキ」で次のフェーズにバトンを繋ぐような広がりを提示する感じなのが良い。

Hakubiらしさと、Hakubiの新たな一面を行ったり来たりしながら、このバンドにしかない景色を描いてみせる。

関連記事:Hakubiの「era」に気がついたら抉り取られていた件

9位:(sic)boy 『vanitas』

ラウドロックとトラップの融合。

複数のジャンルをこういう地点に落とし込むのか、という面白さが(sic)boy の『vanitas』
にはある。

「Creepy Nightmare feat. lil aaron」ではラウドロックのイズムが力強く残っており、歌モノとしての存在感が際立つ。

一方で、「BLACKOUT SEASON feat. phem」では、オルタナティブなラップミュージック感がって、同じアルバムの中の作品とは思えないカラーを提示してみせる。

楽曲の多くをKMがプロデュースしたからこそ、というのは当然としてあるものの、KANDYTOWNのGottzやTempalayのAAAMYYYなど、畑違いの第一線で活躍するミュージシャンとのタッグがこのアルバムの縦の深さをより立体的にしている。

(sic)boyが持つ音楽センスが、途方もない形で炸裂したアルバム。

アルバムの最初から最後まで、唯一無二の美学が通底しているのが、圧倒的な魅力ポイント。

8位:Age Factory 『Pure Blue』

アルバムをリリースするたびにバンドが持つ武器が尖っていくAge Factory。

他のバンドと思っている武器は変わらないはずなのに、持っている武器をどんどん尖らせている結果、その攻撃力が半端ないものになっている心地。

音を鳴らしたときの重たさと説得力が、圧倒的なのである。

「OVER」から、色褪せることのないAge Factoryのかっこよさが展開されていく。

また、今作はコラボ曲も収録することで、アルバムの緊張感みたいなものが最後まで変わることなく紡がれている印象も受ける。

10曲のアルバムなのに、もっとボリュームがあるような印象もあって、いかにAge Factoryの作品の密度が濃いのかを実感する仕上がりでもある。

関連記事:Age Factoryがエモいというやつは両成敗

7位:クリープハイプ 『夜にしがみついて、朝で溶かして』

各楽曲をシングルで聴いたとき「そんなに・・・」って感じだった楽曲が、アルバムとして然るべきピースにハマると破壊力が絶大になる。

『夜にしがみついて、朝で溶かして』を聴くと、そんなことを実感する。

尾崎世界観は、他のアーティストと言葉の向き合い方が違っていて、諦念を持ちつつもそれでも何かに抗うような言葉を紡ぐからこそ、アルバム単位になることで輝く言葉が多い。

「愛す」は、そんな典型の歌ではないかと思う。

色んなことを諦め、でも、特定の部分では諦めない尾崎だからこそのメッセージが際立つ印象を覚えるのだ。

サウンドメイクにしても、常にひとつふたつ想像を越えていく何かを構築していて、それが楽曲に惹き込まれるスパイスになっている。

「なんか出てきちゃってる」は、そんなクリープハイプならではの美学の集積のように感じてならない。

およそ3年ぶりのアルバムだからこその密度が、アルバムのいたるところで散見される。

関連記事:クリープハイプの歌から感じる独特の歪みについて

6位:佐藤千亜妃 『KOE』

佐藤千亜妃の2年ぶりのセカンドアルバム。

“声”をテーマにしたアルバムということで、少しずつ楽曲の表情が変わりながらも、佐藤千亜妃 らしい趣を感じさせるアルバムになっている。

綺羅びやかで明るいとか、ストレートで激情的、というわけではない。

弱火で少しずつ内側の何かを温めるような心地を覚える楽曲が多く、繊細な何かを佐藤千亜妃の歌声が紡いでいく印象。

アルバム冒頭、「Who Am I」では佐藤千亜妃の”声”のみで始まることになる。

そこからバンドサウンドを軸にしながらも、ここぞの場面で佐藤千亜妃の声が印象的に響くことになる。

「カタワレ」のようなポップ色の強い楽曲でも、どこかしらに切なさがまぶされている。

アルバム全体としてみると、最初は大きな枠組みのものを歌っていることが多く、少しずつ個人の恋愛模様=ラブソングを歌うような構成が面白く、他の作品にはない聴き心地を与えてくれることになる。

5位:KID FRESINO 『20,Stop it.』

とにかく圧倒的な音楽センスに魅了されるKID FRESINOの『20,Stop it.』。

細かいレベルで音の積み重ね方にこだわりをみせ、奥深い楽曲世界を展開させることになる。

個人的には「Cats & Dogs (feat.カネコアヤノ)」、「youth (feat.長谷川白紙)」の2曲にぐっときていて、歌とラップの融合をこういう形で落とし込むのか、という感動をこの楽曲から感じるのである。

「Rondo」が生み出す壮大なスケールにも惹き込まれてしまう。

楽曲そのものにこだわり、そのこだわりがどこまでも自分の美学に基づいている感じがするのが、たまらない。

4位:SixTONES 『1ST』

SixTONESのファーストアルバムを4位に選出。

理由としては、このアルバムはSixTONESにしか生み出せない作品だよな、というのが一番にあって。

確かにひとつのジャンルを深堀りにするうえでは他のアーティストの方が優れている部分もある。

しかし、他のジャンルを丁寧に横断しつつ、そのジャンルを然るべき水準まで掘り下げて魅了するという、ジャンル全体のある種の総合得点でみたとき、SixTONESはずば抜けているよなーと思った次第だ。

自分のブログでは、SixTONESそのものがジャンルである、といった表現をしたりするんだけど、「1ST」というのは、まさにSixTONESというジャンルを体験するうえで、これほどにないアルバムであるように思う。

「ST」というロック色の強い楽曲から始まり、ダンスチューン、スタイリッシュな楽曲、ボカロに接近した楽曲など、宝石のように輝くジャンルレスな楽曲が展開されていき、やがて「Lifetime」という壮大なスケールのバラードに行き着く。

そこに至るまでの流れ、道程に唯一無二性を覚えずにいられないという話。

関連記事:SixTONESの「1ST」における個人的な感想

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3位:NEE 『NEE』

メジャーデビューアルバムとなったNEEの『NEE』。

この作品を自分は三位にした。

インディーズのキラーチューンも惜しみなく収録したアルバム、という手触りだけど、自分はNEEの音楽を聴くたびに、バンドの新時代感を覚えるのだ。

その新感覚にどこまでも魅了される自分がいた。

ボカロとロックバンドの融合、みたいな切り口でNEEの音楽を語るような人もいるけれど、ふたつのジャンルが合体とした「だけ」の手触りではまったくないのだ、NEEの作品って。

聴いてみてほしいという言葉で終わってしまうんだけど、新しい感性、新しい切り口、新しい音楽センスで構築された音楽の芳醇さをNEEの音楽からどこまでも感じるのである。

そして、そんなNEEの音楽エッセンスをひとつのアルバムに凝縮したからこそ、このアルバムは『NEE』というタイトルなんだと思ってしまうのだ。

とにかくこの作品から生じる音楽体験が唯一無二だったので、三位にさせてもらった。

関連記事:NEEが生み出す中毒性的不気味さについて

2位:Tempalay 『ゴーストアルバム』

楽曲ひとつひとつの完成度はもちろんのとこ、アルバムとしてのコンセプトの完成度の高い作品。

いかにTempalayの音楽性が円熟しているのかがよくわかる作品である。

Tempalayといえば、サイケデリックな要素が強いサウンドで話題を集めたバンドだったが、このアルバムを聴くと、このバンドはジャンルに終始するバンドではないことを強く実感する。

和のテイストを織り込んだり、文脈に揺さぶりをかけるようなユーモアを取り入れたりと、ナチャラルな姿勢で自分たちの美学を貫く姿勢にぐっときてしまうわけだ。

なにより、『ゴーストアルバム』というタイトルのアルバムを、オリンピックイヤーの年に「大東京万博」という楽曲を結びにしてリリースするある種の批評性もたまらない。

言葉としても、サウンドとしても、メロディーラインにおいても、聴きどころがたくさんあるこのアルバムが、個人的な2021年のベストアルバムの第二位にさせてもらった。

関連記事:Tempalayという揺るぎない個性を集結したバンドについて

1位:Official髭男dism 『Editorial』

あえて一位を選ぶとしたら。

今年においては、個人的なこのアルバムしかないということで、一位はOfficial髭男dismの『Editorial』にしました。

コロナ禍を踏まえつつも、Official髭男dismとしての、という軸はぶらさず、音楽的な要素においてもアルバムの物語性としても妥協なく高い水準で構築されたこのアルバムは、今年のアルバムでも群を抜いた輝きを放っているのではないだろうか。

言ってしまえば、前回のアルバムが出世作となってしまったわけで、期待されるハードルは上がる一方のはずだが、それを軽やかに飛び越えてみせる凄さがある。

さらには、きっちりとメンバーそれぞれの良さも作品の中で引き出し、それを踏まえつつも「Editorial」から「Lost In My Room」のメッセージ性も見事だし、それを踏まえつつも、個性だらけのシングル曲をバランス良く配置させる手腕も見事で。

もちろん、好みによって多様な評価があると思うが、好き嫌いを抜きにしたときのこのアルバムの完成度がずば抜けているのではないかと自分なんかは思ってしまう。

14曲というのは、このランキングにおいても比較的曲の数が多いアルバムとなるわけだが、そんなボリュームでありながら、本当に削ぎ落とす部分がなく、然るべき流れの中で楽曲を積み上げている印象を受ける。

・・・ということで、自分のランキングとして発表することを考えたら、このアルバム以外の一位はなかったというわけでした。

関連記事:Official髭男dismの『Editorial』が伝えたいけど語ることができないことに気づいた件

まとめ

というわけで、12枚のアルバムを選出しました。

1位:Official髭男dism 『Editorial』
2位:Tempalay 『ゴーストアルバム』
3位:NEE 『NEE』
4位:SixTONES 『1ST』
5位:KID FRESINO 『20,Stop it.』
6位:佐藤千亜妃 『KOE』
7位:クリープハイプ 『夜にしがみついて、朝で溶かして』
8位:Age Factory 『Pure Blue』
9位:(sic)boy 『vanitas』
10位:Hakubi 『era』
11位:anewhite 『2000’s』
12位:秋山黄色 『FIZZY POP SYNDROME』

当然ながら、このランキングに入れていないけれど、入れてもいいほどに聴き込んだアルバムもあるし、そもそも聴けてないアルバムだってたくさんある。

好きなアルバムを12枚に選ぶというのは、想像以上に悩んでしまう話である。

でも、その中であえて選ぶならで、この12枚を選びました。

いわゆるこういうランキングを作る人とは、まったく違うベクトルでランキングを作っているので、人によっては「なぜ、このアルバムが入っているのにあのアルバムがないんだ」とツッコミをしたくなる人もいるとは思うが、自分の価値観と照らし合わせたうえでの結果なので、ご了承いただけたら幸いだえる。

まあ、このランキングをひとつの参考にして、2021年の音楽作品を聴き直してもらえたら嬉しいし、一枚でも興味の持てるアルバムやアーティストと出会えたなら、嬉しい限り。

2021年個人的ベストソング21は2021年12月31日に更新する予定。

なので、よかったらそちらもまた観てくださいな。

それでは、今回はこの辺で。

ではではでは。

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