序章:音楽を超えた景色の世界
もう音楽っていうより、景色やん。
そんな印象を与えてくれたのが、Mrs. GREEN APPLEの「夏の影」という楽曲だ。
いやね、マジで音楽を通じての何かを描写する力が素晴らしすぎる。
もともとMrs. GREEN APPLEは達者なアーティストである。
様々な音楽を生み出してきたことは、わざわざこの記事で書くまでもないことだと思う。
わかっていた。
わかっていたのだ。
でも、その「わかっていた」の次をいく感じがあった。
ロックな歌から、ポップな歌から、ダンスソングから、アイドルのようなキラキラした歌から、内面と向き合いまくった深い歌まで。
どれだけ引き出しがあって、どれだけの感情を持ち合わせているのか。
そんな気持ちにさせてくれる芳醇な音楽を生み出すのが、Mrs. GREEN APPLEの凄さ。
「夏の影」で、さらにその歴史に、新しい扉を開かせてくれた感じ。
そう。
音楽を超えて、このうた、風景やんと思わせてくれる、そんな世界に。
あえて言えば、井上陽水の「少年時代」にも通ずるイノセントさがこの歌にはあるとは思った。
でも、様々な夏ソングとはまた違う味わいがあったのだった。
本編
SEとサウンドの絶妙な融合
いやね、マジで外でこの歌を聴いてきたとき、蝉の声がマジで野外から聴こえてきたガチの蝉の鳴き声だと思ったもんね。
今日も外は夏真っ盛りだなーと思って耳にしたその夏の世界、よく考えたら音楽から味わっていた想像の夏の気配だと気付いて、あとから度肝を抜かされたのだった。
それほどに、あまりにも夏の景色がこの歌に溶け込んでいた。
SEの使い方が上手いという話でもあるし、SEとMrs. GREEN APPLEのサウンドの溶け合い方があまりにもナチュラルであるという話でもある。
蝉の鳴き声を楽曲のサウンドに加えるというケースは他のアーティストの楽曲でもあるとは思う。
でも、「夏の影」はなんというか、蝉とか風鈴の音があまりにもナチュラルに音楽世界と隣り合って存在しているのだ。
サウンドの足し算と引き算が巧みだからこそ感じられるのかもしれない。
ギターの音色が描く夏の記憶
例えば、間奏で鳴り響くギターの音色。
クリーンながらも、ちょっとした揺らぎを見せる音色で、優しくアルペジオをする。
だからこそ、夏の景色になぞらえた心理描写を美しく際立たせる歌になるし、様々な音の効果と美しく溶け合う。
夏ソングの中の異色作
なお、Mrs. GREEN APPLEの中でも、夏ソングっていくつもある。
ド派手で盛り上がるような、ザ・夏ソングの中でもキラーチューンがいくつもある。
「夏の影」は、それらの歌とまったく異なる味わいがある。
色々経たうえでの夏ソングだからこその味わいであるとも言えそうだ。
タイトルの通りに、ボーカルもサウンドも「影」を踏まえて、存在しているよなーと思うしね。
光と影の音楽的表現
夏と言えば、光とか日差しの部分にスポットを当てることが多い。
でも、光があれば当然影があって、それは実際の風景においても感情の側面においても同じで、そういう部分に的確な音と言葉と温度と視座を与えるのは、Mrs. GREEN APPLEだからこそ、と思う。
あまりにも国民的アーティストになってしまって、老若男女問わず、Mrs. GREEN APPLEのことなんて当たり前に知っている人が増えた。
にも関わらず、そういう観点におけるMrs. GREEN APPLEらしさは時代を経ても変わらない。
こういう部分に、Mrs. GREEN APPLEとしてのMrs. GREEN APPLEらしさを覚える自分がいるのだった。
夏のエッセンスと溶け合う歌声
また、大森元貴のボーカルも良い。
柔らかなタッチの音楽に、さらに優しいタッチでボーカルを紡ぐ感じ。
繊細なフレーズで構成された歌詞にふさわしい、しとやかで哀愁のあるボーカル。
だからこそ、こういう夏のエッセンスと美しく溶け合う心地を感じさせてくれるのだと思う。
大森元貴の歌声は、Mrs. GREEN APPLEの楽曲において常に中心的な役割を果たしているが、「夏の影」ではその中でも、独特の存在感を放っている。
感情の機微を表現する技術
大森元貴のボーカルは、単に美しいだけではない。感情の機微を繊細に表現する技術を持っている。
「夏の影」では、夏の記憶に対する懐かしさと、同時に感じる切なさを絶妙なバランスで表現している。
計算されたコードの響きと、歌詞の内容とメロディの調和も素晴らしいのだ。
大森元貴が歌うことで、歌詞に込められた夏の記憶がより鮮明に、より感情的に響いてくる・・・みたいな。
なお、このうた、ビートメイクとしてはわかりやすい構成だ。
8ビート基軸で、余計な変化球は投げない。
だからこそ、ゆったりと美しい和音の響きを感じられるし、歌の世界観とマッチして様々な音を堪能できる。
ドラマチックな展開
そういう素朴な歌のトーンの中でも、終わりに向けてドラマチックに歌を展開していく構成力と音の重ね方も流石だ。
ストリングスが気合いをいれて、若井滉斗がギターのメリハリを絶妙につけていき、藤澤涼架のサウンドメイクがより歌の世界をノスタルジックに響かせる。
このMrs. GREEN APPLEとしての構成力と感性が、この楽曲では存分に発揮されている印象。
まとめに替えて
Mrs. GREEN APPLEの「夏の影」は、音楽を超えた景色を描く作品だ。
わりと冒頭に感じたそんな感想が、今作のまとめに行き着く自分。
SEの巧みな使用、大森元貴の柔らかなボーカル、そしてMrs. GREEN APPLEとしての音楽的アプローチの巧みさ。
これらが融合することで、聴く人を夏の景色の中に誘うのだ。
「夏の影」は、そんなMrs. GREEN APPLEの音楽の真髄を体現した楽曲だ。
これからも彼らの音楽から目が離せない。