前説
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Mrs.GREEN APPLEが活動休止前に発表した「Theater」。
壮大ながらも、素朴なにおいも感じさせる不思議な歌である。
今までのミセスにありそうで、なかった歌のように感じるのだ。
僕はミセスのこの歌が暖かくて、優しくて、とても好きである。
なので、この記事では「Theater」について書いていきたい。
本編
「Theater」という歌について
ことあるごとに書いている気がするけれど、Mrs. GREEN APPLEはすごく芸達者なバンドである。
自分たちだけで様々なサウンドを発想し、アプローチすることができるバンドである。
なので、バラード曲の場合、ピアノの旋律が印象的な壮大なバラードにすることもできただろうし、オーケストラをバックに携えた王道な楽曲にすることもできたはずなのだ。
もっと泣かせるような展開を作ることもできたし、もっとわかりやすく数字が跳ねる歌を作ることもできたように思う。
でも、「Theater」は必ずしもミセスの外側にいる人達まで、遠くにいる人達にまで届けようという感じがしない。
という書き方をするとちょっと語弊があるけれど、今までミセスが好きだった人にさえ届いたらいいなあ、みたいな空気感を感じるのである。
鍵垢のTwitterアカウントで、ツイートした感じ、とでも言えばいいだろうか。
だからなのかはわからないけども、「Theater」は比較的素朴な歌のように感じるのだ。
なんせ、お化粧をする前のバンドサウンドが中心にあるような気がする。
バンドとしてミセスが全面に出ている、そういう歌のように感じるのだ。
「5」であるミセスが全面に出ている、とでも言えばいいだろうか。
思えば、この歌ってデビューしてからの5年間の集大成であると思うし、実際、それまでの道中を振り返えるようなフレーズもいくつか散見される。
だからこそ、5人のメンバーがちゃんと歌の真ん中にいるような、そんなアレンジをしたのかなーなんて、改めて思うのである。
主人公は大森本人?
この歌は少年が夢を見る場面から始まる。
で。
この歌に出てくる少年って、ミセスのボーカルである大森のことなのではないかなーなんて思ってしまうのである。
少なくとも、大森は当時の自分を重ね合わせるようにして、この歌詞を紡いだのかなーなんて思うのである。
心の寂しさを埋めるようにして音楽を発信した、と大森は雑誌のインタビューで語っていた。
つまり、大森はただ好きが溢れてしまってどんどん音楽を作っていったというよりは、何かしらの目標を達成するために音楽を作ってきた背景があるわけで。
この歌に出てくる「夢」というのは、そういう大森の音楽に対する本音に通ずるように感じる。
そういう本音の中で突き進んだ5年を改めて振り返る、というのがこの歌のひとつの構造になるのだろう。
ポイントなのは、この歌はフェーズ1の振り返りと集大成でありながらも、すでにフェーズ2の幕開けを予感させる歌にもなっていることである。
サビの末尾に綴られる「何かしら次に繋いでネンネします」というフレーズは、まさに今のミセスを指差すような言葉に思えてならない。
フェーズ2という舞台につなぐため、一度僕たちは活動休止しますね、というメッセージに聞こえて仕方がないわけだ。
この歌のアウトロが行進曲のようなリズムで終わるのも、そういう次に向けて進んでいく意志を表しているように思えてならない。
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このスタッフと作る最後の音楽
過去は素晴らしかったし、素敵な未来に向けて突き進んでいくよ。
そういうテイストの歌って世の中にはたくさんある。
言ってしまえば、これだけの話なら「よくある歌だね」という感想で終わってしまう可能性もある。
でも、僕はこの歌には、それだけでは説明がつかない妙な感動を覚えてしまうのである。
その理由は、主人公以外の人(つまり、あなたやみんな)に向けての眼差しにあるように思う。
というのも、ミセスは、この歌(アルバム)を最後に、前所属事務所から独立して、新体制になることが発表されている。
つまり、今のスタッフたちと音楽を作るのは、この歌が最後になってしまうということでもある。
次はどういうチームを組んで歌を作っていくのかはわからないが、おそらくけっこうな部分が刷新されるように思うのだ(じゃないと独立なんてしないだろうし)
独立を選んだ具体的な理由はわからないが、おそらく今回を最後に疎遠になってしまう人がけっこう出ることだけは確かなはずで。
「Theater」というタイトルの中には、周りの人への感謝の気持ちも込められているのではないかと思うのである。
この5年は、とても素敵なものだった。
それは、自分たちの周りに素敵な人がいたからだ、という裏のメッセージが込められているように思えてならないのだ。
そういう眼差しが、サビにちりばめられた色んな単語からなんとなく想像できるのである。
夢を追っていた少年が、いくつかも夢を叶えることができたこの5年間。
そこにいたのは、支えてくれたスタッフがいたから。
この歌はミセスが主人公であるとともに、二人称の矛先にはそういうお世話になった人たちの姿がなんとなく透けて見える。
少なくとも、僕はそう感じた。
だからこそ、この歌にぐっときてしまうのである。
まとめに替えて
インタビュー内容とかは置いといて、なんとなく自分が思っていたことを言葉にしてみました。
この歌をミセスらしいと思うか、そうではないと思うかは人それぞれだと思うけれど、自分はこの歌がとても好きであるということだけは改めて言葉にしたいと思う。
きっとこれから先も続くはずの、ミセスの長い長い物語においても、きっと重要な一曲になる。
そんなふうに、僕は思うのである。
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