残響系の話
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自分のブログは一応「邦ロック」をメインに扱っているという設定にしているんだけど、このブログを始めたのは2015年である。
なので、あまりそれ以前のシーンに触れることはしていない。
で、2015年以降の邦ロックのシーン(というかメガフェスのトレンド)にはざっくりとした流れがあって、まず四つ打ちで盛り上がったシーンが飽和してきた中でシティー系が流行るようになり、でも、シティ系の人はそこに留まらず、皆が独自の音楽を取り入れるようになる。
一方、いわゆる四つ打ち界隈も飽和してきていることを実感した結果、各々が独自のカラーを打ち出し、より大きいところで音を鳴らすにはどうしたらいいのかを志向するようになっていく。
そしてそんなシーンの只中に現れたのは様々な音楽を横断するニューカマーが髭男とKing Gnuだった・・・というのが今に接続する大まかな流れだと思っている。(本当はもっと細かく色々あるわけだけど)
んだけど、それよりももうちょっと前のロックシーンを語るうえで、いくか重要なワードがあるのだ。
そのひとつが、残響系、である。
んん???ザンキョウケイ???
ナンデスカソレハ??????
そんな人もいるかもしれないので、わからない人はググってもらえたらいいかと思うんだけど、簡単に説明すると、そもそも残響レコードというインディーズレーベルがあるのだ。
んで、そのレーベルに所属するバンドにはそのレーベルらしいカラーを持っているバンドが多かったので、ある種のバンドカラーを指す言葉として「残響系」という言葉が生まれたのである。
方向性は全然違うが、今でいえば「ナインス系」というくくりも、それと似ているように思う。
で、この残響レコードは、te’という変拍子を武器にしたバンドのギタリストである河野が代表で、このレーベルに所属しているバンドも、塗りつぶすような音圧や変調しを武器にしたポスト・ロックのバンドが数多く在籍していたのである。
出身バンドといえば、9mm Parabellum Bulletをはじめ、People In The BoxやKEY TALKの首藤がメンバーだったthe cabsなんかの名前上がる。
どれもこれも変わったバンドであり、なんとなく残響系のイメージが想起できるのではないかと思う。
まあ、今の残響レコードはなかなかに厳しい結果となっているので(看板バンドがメジャー・デビューに移ったり、資金繰りでミスっている感じがひしひしと伝わってくるので)、今後このブログで扱うこともそうはないと思うんだけれど、なぜ今回、その「残響系」というワードを取り出してきたのかというと、この記事で書きたいバンドの出自も残響系だからである。
そう、この記事で取り上げるバンドの名前はcinema staffなのだ。
知っている人は知っている通り、9mmらと同じように、残響系の全盛期を支えたバンドのひとつである。
今回はそんなcinema staffの話をしていきたい。
cinema staffについて
というわけで、御託を並べるのはもう辞めにして、シンプルにcinema staff(以下、シネマ)の話をしていきたいんだけど、今のシーンにおいてたぶんシネマってすごく地味というか、人によってはなんだか古いバンドに感じちゃうのではないか?と思っている。
90年代のギターロックを通ってきた人からしたら、このサウンドにビンビンのかっこよさしか感じないんだけど、きっと今のロック好きからしたらナンバガなんかのロックに感じるのは「革新的なかっこよさ」ではなく「古典にも似た古さ」だと思うのだ。
それこそ9mmなんかを見ていても、今の流行りではなくなってきているのは間違いなく、ソリッドなギターサウンドと、これでも食らえと言わんばかりの分厚い音圧で魅せるバンドは、厳しい立ち位置を強いられていることが多い。
そして、そこで勝負しようとしているシネマは確かに俯瞰した位置からみていくと、決して存在感を示しているバンドではないように思うのだ。
「eve」ではわりと音と音の間に隙間を作るような構築していて、言ってしまえばポップスに舵を切ったような作品になっていたけれど、「熱源」ではがっつり音圧で仕留めにくるような作品になっていた。
きっとシネマは今後もそういうラインの中で揺さぶりをかけた音楽を作っていくように思うのだ。
トレンドがどう変わろうとも。
そして、思うのだ。
そういうところがシネマの良さなんだよなあ、と。
もし仮にKANA-BOONが大ブレイクしているときに、そのメソッドを拝借して取り入れていたら、きっとシネマはつまらないバンドになっていたと思うのだ。
ナンバカに影響を受けつつ、「踊る要素」を入れたといえば、例えば夜ダンなんかが頭に浮かんでくるんだけど、もしかしたらシネマもそういう立ち位置はあり得たかもしれない。
でも、シネマはそこにはあえて踏み入れなかった。(まあ、シネマが当時、残響レコード所属のバンドでなかったら、この要素を取り入れて全然違うバンドに発展していた可能性は大いにありうるが)
でも、このソリッドでゴリゴリに攻めてくるサウンドは絶対的なシネマの魅力だと思うし、古き良きロックバンドのかっこよさを研ぎ澄ませたようなシネマの存在感って、唯一無二だと思うのである。
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cinema staffのさらなる魅力
シネマといえば、アニメ進撃の巨人の主題歌となったこの歌を頭に浮かべる人も多いのではないだろうか。
この歌を聴いても感じるんだけど、シネマって鋭いエレキギターの音にグッとくるタイプのバンドではあるんだけど、単にバンドサウンドだけで魅了するわけでもなかったりする。
聴いてもらったらわかる通り、美しいメロディーラインも大きな武器だったりするわけだ。
いかついサウンドの中にも、美しさを宿すというか。
きっと先人のオルタナバンドなら「けっ」って思うようなことでもシラフでやっちゃえるところが、他のオルタナバンドにはない魅力だと思う。
メロディーにポップ的感性を持ち合わせているのがシネマの大きな魅力であり、そのメロディーを美しく歌うボーカルも大きな魅力なのである。
こういう荒々しいサウンドの歌もシネマの良さならば、メロディーが際立つ美しいバラードもシネマの良さであり、なぜ幅広い楽曲にグッとくるのかといえば、根底にポップスに根付く美しいメロディーラインがあるからだと思うのだ。
まとめ
確かにこの路線で進み続けるのであれば、シーンの真ん中を撃ち抜くのは難しいのかもしれない。
バンドのスタンスとしても、流行を追いかけるのではなく、自分たちがかっこいいと思うものを音にしていくというマインドを持っているように思うし、おそらくシネマがトレンドど真ん中になることはないように思う。
でも。
他のバンドならおざなりにするようなポイントにこだわり続けるバンドがかっこよくないわけがない。
むしろ、時が経てば経つほど、シネマが持っている武器には希少価値が宿り、元々孤高のバンドだったシネマの立ち位置がより鮮明になるように思うのだ。
なにより、新曲が良い。
音圧を意識してバンドサウンドを構築しているバンドだからこその美しいバラードのように感じる。
どこでどう音を埋めるのかとか、だからこそどう音に隙間を空けたら効果的になるのかとか、そういうことがわかっているバンドだからこその研ぎ澄まされたバラード。
ピアノの旋律がどこまでも美しく響くのは、普段から音圧にこだわってきたからであり、音の「活かし方」を理解しているバンドだからこその技のように思う。
きっとこれからも、巧みの技が冴え渡る名曲を生み出すのだと思う。
そう考えると、シネマの全盛期はきっともう少し先にある。
そんな風に僕は思う。
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