前説
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さて、Hump Backについて書こうと思う。
cinema staffの記事を書いているときに名前を出した残響レコード。
関連記事:きっとトレンドにはならないcinema staffというバンドについて
残響レコードについて色々と書いてしまったけれど、一人のリスナーとして振り返れば、間違いなくインディーズレーベルとして一時期のロックシーンを作ったとは思うのだ。
で。
今ひとつのシーンを作るまでに影響を与えているインディーズレーベルは何か?と問われたら間違いなく名前を挙げるのがTHE NINTH APOLLO系列(以下、ナインス)だと思う。
ナインスの場合、派生したレーベルもあるし、ナインスで頭角を表したバンドでも今はメジャーに移行したバンドもいるしで、シーンに対する影響という話で語る場合、もう少し慎重に言葉を選ぶ必要があるとは思うし、そもそもここ数年で突然ブームに乗って発生したレーベルじゃないから、”シーンを作った”というのは色んな意味で語弊のある言葉だとは思うんだけど、それでも、ここに所属しているバンドが次々にシーンで存在感を示していることだけは、間違いない事実だと思う。
そして、「ナインス系」という言葉にある種の共通認識があるのだとしたら、そこで名前を上げたバンドにもある程度通底した何かがあるということでもある。
Hump BackもTHE NINTH APOLLOというレーベルにイメージを与えたバンドのひとつであるように思うのだ。(まあ、細かいことを言えば、Hump BackはTHE NINTH APOLLOではなく派生レーベルのPINE’S APOLLO所属のバンドになるわけだけど)
まあ、ここで書きたいのレーベルの話ではなくて、Hump Backの魅力とは何か?ということなのである。
そこについて、書いていきたいと思う。
Hump Backについて
すげえ雑にHump Backの魅力を言うと、歌詞が繊細で詩的な感じもして、ボーカルはそういう世界観に見合う表現力のある歌声をしていて、んだけどバンドの演奏や佇まいはわりと真逆で、とにかくパワフルでかっこいい。
そのかっこよさを言葉にするならば、拳を掲げたくなるような熱さを持っているみたいな、そんな感じ。
とまあ、なんかこういう言葉だけで、自分が言いたいHump Backの良さはほぼ全て説明できた気がするのだ。
でも、流石にこれだけで終わってしまったら記事にならないので、もう少しだけ話を進めてみようと思う。
ボーカルが良い
女性ボーカルのバンドといっても色んなタイプがいる。
今のシーンに即して言えば、SHISHAMOみたいなタイプもいれば、yonigeみたいなタイプもいれば、リーガルリリーみたいなタイプもいて。
各々の個性があるし、どのボーカルも表現力のある素晴らしいボーカルだと思うのだ。
で、この辺って歌詞にも「らしさ」が宿っていて、その「らしさ」を形にできるというか、良い意味で言葉に引き寄せられたボーカルがあるように思っている。
極端であるが、SHISHAMOのボーカルで「アボカドで殴るぞ」って歌を歌うのはちょっと違くて、「君となつフェス」だからグッと来るところがあるわけで、このボーカルだからこそこの世界観の歌詞が映えるよなーっていうのがあると思うのだ。
Hump backもまさしくそこがポイントだと思っていて。
この声にこの歌詞だからグッと来るよなーっていうのが絶対的にあると思うのだ。
このボーカルだからこそ、歌詞が胸に刺さるっていうのがあると思うのだ。
Hump Backの歌って、主人公と”君”が出てくることが多いんだけど、他の女性ボーカルのバンドと違っていわゆる恋愛曲は少ない。
どちらかといえば、日々の鬱蒼とした想いとか、何気ない日常の感情を切なく切り取り、詩的に表現することが多いように感じる。
で、そういうHumpならではの表現を、より尖ったナイフにして心に突き刺してくるのは林のボーカルだからだよなーと思うのだ。
例えばの話だけど、椎名林檎の艶が全面に出てしまうボーカルだったらまた違っていただろうし、SHISHAMOのボーカルでも言葉への尖り方が違っていたものになっていたと思う。
Hump Backの歌詞が最高に活きるのは、林のボーカルだからだよなーと脳内でシュミレートするたびに思うのである。
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言葉が伝わるのはバンドらしいサウンドがあるから
で、そういうフレーズがより突き刺さりやすくなるのはHump Backが良い意味で ストレートでシンプルなバンドアレンジだからだと思う。
エンタメ的発想で曲を作っていたら、きっともっとリズムにフックをつけて、手拍子させやすくしたり、キメのリズムを作って「同じポイントで手を突き上げる」みたいなアレンジをしていたと思うのだ。
そうじゃなくても、身体を動かす快楽を優先した楽曲が作りがちになる。
けれど、Hump Backは明らかにそういうことが念頭にない。
昔、自分たちのライブで手拍子をしている観客に「自分たちのライブでは手拍子が不要」という発言をしたことがあるらしいけれど、自分たちが大事にしているところが「そこ」でないことを明るみにしたエピソードのひとつである。
もちろん、今はそこまで尖ったことは言ってないけれど、それでも音楽を作るうえで、ライブでパフォーマンスするうえで大事にしているものはきっと変わっていないと思う。
少なくとも、自分たちの音楽に集中してほしい部分が、他のバンドのそれとは違うのかなーとは思うのだ。
Hump Backのかっこよさ
Hump Backはかっこいいバンドという形容が似合うバンドである。
かといって、オルタナティブなバンドやメタルなバンドたちと違って、演奏そのもののかっこよさで勝負しているバンドではないような気もする。
というか、きっとそういう思想があるからこそ、イントロがなしにいきなり歌から始まることも多いし、間奏はなしで矢継ぎ早にボーカルパートを続けることも多いし、アウトロなしでさらっと歌が終わることも多い。
想いを届けるんだ!みたいな意識が強いからこそ、こういうあり方をするのかなーなんて思う。
今年リリースされた「人間なのさ」というアルバムでも、4分以上ある歌が「ナイトシアター」だけであり、ほとんどが3分台で、2分経たずして終わる歌も多い。
ここから見えてくるのは、 いかに「言葉のある部分」にフォーカスして曲を作っているかということだし、伝えたいことを届けるうえで不必要なものは容赦なく削ぎ落としているという姿勢も伝わってくる。
自分たちが勝負するところはここ。それ以外の媚びは不要。
そんなHump Backらしい哲学が伝わるような楽曲だからこそ、より言葉が胸に刺さってくるのかもしれない。
まとめ
シンプルなのに個性を出す、っていうのが一番難しいことだと思うんだけど、Hump Backはそういう難しいことを平気でこなしいるバンドである。
音をジャンル分けして言葉にするだけなら「よくいるバンド」になっちゃうんだけど、Hump Backの魅力はジャンル分けできない部分にこそ宿っている。
新曲も瑞々しくも胸に刺さる内容で、すごく良かったし、名前を聴くことも増えてきたからこれからどんどんと大きくなるんだと思う。
これからどう変わるのか、そしてどう変わらずに音を鳴らし続けるのか。
今後が楽しみなバンドである。
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