前説
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メンバーが30代半ばくらいのバンドになると、そのバンドのカラーが固まりつつある一方で、そのカラーとはまったく違うベクトルに進んでいくバンドも多い。
このベクトルの変更は音の足し引きで生み出すものが多く、海外の音楽トレンドに敏感なバンドほど、世界の音楽トレンドと日本の音楽トレンドと自分たちのやりたい音楽と(昔からの)ファンが望む音楽の隔たりに対して、どのようにバランスを取っていくかに腐心しがちな気がする。
ただ、そんななかでも「もう古いでしょ?」と言われながらも、世の中の潮流的にそうでもないことはある程度理解していながらも、バンドの音にこだわり続けて、ほとんど足し算「は」しないで、ギターロックにこだわり続けるバンドもいる。
もちろん、音の余計な足し引きをしないだけで、現状維持とはまったく違う音を鳴らしていることが多いんだけど、パッと聴きのたてつけで言えば、シンプルなギターロックにこだわる硬派なバンドもいるわけだ。
そんな中でも、特に硬派なギターロックを続けているバンドがいる。
それが、a flood of circle(以下、フラッド)である。
この記事では、そんなフラッドの魅力を書いていきたい。
本編
音が硬派
フラッドの魅力の一つはガレージ感の強いギターロックな音だと思う。
パワフルとかエモーショナルという言葉が似合う、いかにも男臭いロックって感じの音を鳴らす。
ボーカルの佐々木は(少なくとも僕がライブで見る限りでは)いつも革ジャンを着ていて、で、その革ジャンがびっくりするほどサマになっている、今のシーンでは珍しいタイプである。
見た目は完全に一昔前のロックバンドのそれ。
パッと聴いたときの音の感じも、今の大半のロック好きの高校生や大学生が好んで聞きそうな感じではない。
とはいえ。
じゃあ、フラッドって単なる懐古主義のバンドなのかと問われたら、そういうわけではないと思う。
フラッドの佐々木はトラップ以降の今の海外のトレンドもしっかり吸収しているようだし、ソロ作品ではそこで吸収したことを踏まえたうえでのアウトプットしている印象もある。
というよりも、ソロでそういうアプローチを試みたからこそ、バンドにおいては単なるトレンド合わせの音楽が必要でないとは考えたのかもしれない。
バンドでやるときは 「バンドだからこそ表現できるもの」と切実に向き合ってきたのだろう。
だからこそ、 どの楽器にも余計な加工は施さない、ガレージっぽいサウンドをかき鳴らし続けたのだと思う。
2019年にリリースされた「CENTER OF THE EARTH」では、クリック(メトロノームのようなもの)を聞かずにライブっぽい形で音を録音したということが、他メディアのインタビューで語られている。
この方法論も根底にあるのは、バンドだからこそ鳴らせる音を突きつけた結果だし、作品を聴く限り、このアプローチは大成功を収めているように感じる。
バンド作品であっても音を修正して加工することが当たり前となりつつある昨今において、どこまでもガチンコで音を収録したフラッドのサウンドは、紛いもなくロックである。
どこまでもヒリヒリしていて、パワフルさがあって、当たり前のようにエモーショナルに包まれた作品になっている。(もちろん、一発撮りをしたわけではないから、しかるべき手順を踏みながら音を積み上げているのだろうが、その辺りの話はこの記事では置いておく)
兎にも角にも、他のバンドとは違うところにこだわり、違う哲学で勝負をかけた音だからこその熱さがあるし、響くものがあるし、ロックバンドのかっこよさが詰まっている、というわけである。
そこがフラッドの大きな魅力のひとつなわけだ。
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佐々木の声の主張の強さ
そんなフラッドだけど、個人的に好きなのは佐々木の声である。
あえて言えば、ミッシェル(現The Brithday)の千葉さんに通ずるものがある、しゃがれたあの声。
そして、メロディーを伸ばしたときの独特のビブラートも、佐々木ならではの魅力だよなーと思う。
ガレージなギターロックがどこまでもサマになっているのは、土台となるボーカルが佐々木の声だからだ。
ボーカルの声がどこまでも尖っていて主張が激しくて力強いものになっているからこそ、フラッドの男臭さが確固たるものになっているように思う。
要は、バンドサウンドとボーカルの声質が完璧にマッチしているという話。
だから、フラッドの音はどれだけ聴いても、気持ち良いものになるのである。
うっさいバンドを容赦なくクソうるさく鳴らせるのはボーカルが佐々木だからだし、佐々木が容赦なくしゃがれた声で叫びまくれるのは、バンドサウンドがバチクソなロックだからである。
ボーカル、バンドサウンド、パフォーマンスの全てが同じ方向を向いているから為せるという話だし、フラッドの楽曲やライブには信じられないエネルギーが宿る理由も、そこが根底にあるように感じる。
今となっては、トレンドではないバンドサウンドをかき鳴らし、それでもライブを観た人の心は見事にがっつり掴むのは、フラッドがそういう性質のバンドだからなのかなーと思う。
まとめ
他にも、メンバーの脱退が多くて色んな困難を乗り越えたという話もフラッドを語るうえでは重要なのだろうと思うけれど、この記事ではシンプルに僕がフラッドの音楽に触れて感じることだけを言葉にまとめてみました。
少なくとも、先程紹介した「CENTER OF THE EARTH」という最新アルバムは、キャリア史上最高傑作だと感じているし、フラッドはここにきてどんどん磨きのかかっているロックバンドだなーと痛感している。
普段はうるさいロックはちょっと・・・という人も、ぜひフラッドを聴いてみてほしいなーなんて思う次第。
メンバーが固定化された、今のフラッドは強いと思う。最近、それを本当に実感する。
というわけで、今回はこの辺で。ではではでは。
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