紅白の出演が決まった2023年に語る10-FEETの話

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パフォーマンスの良さは年々磨きがかかってくるバンドは多い。

だが、ある程度キャリアを重ねていくと、それとは反比例して、どうしても“人気”という部分では落ち着くバンドが多い。

特に当時の若者を熱狂させていたバンドほど、そういう状態に陥りやすい。

なぜなら、そのバンドがキャリアを重ねる分、若者だったお客さんも年を重ねるからだ。

多くの人は年を重ねると、ライフステージが変わることになる。

結果、あの頃はゴリゴリにライブに行っていたキッズも、音楽の嗜み方に関しては落ちついていくケースも多い。

だんだんとそのバンドのライブに行かなくなる、当時めっちゃライブに通っていたファンも出てくるわけだ。

では、それに比例して、新しい若者を同じ母数だけ魅了することができるかというと、そう簡単な話ではない。

もちろん、そのバンドは表現力が当時よりも良くなっているケースが多い。

フェスに出演してもらったら、そのパフォーマンスの安定感に脱帽するケースも多い。

でも、今の若者が、それをみてストレートに刺さるのかといえば、それはケースによる。

なぜなら、今の若者には、今の若者を熱狂させる新しいバンドの存在が大きく映るからだ。

音楽は面白いもので技術だけではない部分で魅了される。

だからこそ、シーンはめぐるように常に新しいバンドが台頭するわけだ。

そうなると、人気が落ち着くバンドも出てくる。それがシーンのさだめである。

そして、それはシーン全体でみれば、それ自体はとても健全なことでもあるわけだ。

ただ、そういう実態があるからこそ、キャリアを重ねたバンドは、人気とか集客という点では「昔に比べると落ち着いた」という状態が生まれやすい。

でも。

キャリアを重ねるに従って、どんどんファン層を広げるバンドもたまにいる。

なんなら”人気”という点では、キャリアを重ねている今が最高を更新しているケースもある。

10-FEETもまた、そんなバンドのひとつになっている。

なぜ、10-FEETは今なお、たくさんのバンド好きの心を掴むのか?

この記事ではそんなことを考えてみたいと思う。

本編

新曲が大きく話題になった

わかりやすいところで言えば、「第ゼロ感」が話題になったところが大きいだろう。

この楽曲は、映画『THE FIRST SLAM DUNK』だったこともあり、これまで10-FEETの音楽に触れなかった人、あるいはしばらく10-FEETの音楽に触れてこなかったリスナーの心をぐさりと突き刺した。

思えば、主催フェスではバスケの試合を開催するほど、10-FEETとバスケの親和性は高かった。

なので、10-FEETを知るものからすれば、SLAM DUNKの主題歌を担当する未来は、ありえる未来だったことを感じる。

とはいえ、実際にタイアップをこうして10-FEETが手がけることになるまでにはきっと色んな経緯があったのだろうし、実際にタイアップが決まったとして、きちんと作品にハマる楽曲を作れるどうかというのは、また別の話になる。

そんな状況下でも、10-FEETはここぞのタイアップで、これしかないという楽曲を生み出した。

ここに10-FEETの凄さを感じる。

しかも、きちんと10-FEETらしい、自分たちのルーツを感じさせるサウンドで楽曲構成しているのが良いなあと思う。

ゴリゴリなサウンドで存在感を示す人気バンドは、MAN WITH A MISSIONをはじめ一定数存在はする。

が、それでも、日本の音楽シーンにおいて、10-FEETのサウンドはベタなものでは到底ない。

まだまだマニアックな手触りのそれであるし、たくさんの人に届ける場合、そういうゴリゴリなサウンドはマイルドなアレンジになるように、手を加えるケースもある。

でも、10-FEETはそういうアプローチをしなかった。

少なくとも、10-FEETがこれまでリリースしてきた「自分たちが好きなジャンルの音」できちんと土台を作った上で、作品の世界観と共創するようなアレンジを生み出した。

そんな印象を受けるのだ。

そう。「第ゼロ感」は、どこまでも10-FEETらしい楽曲だと思う。

少なくとも、きちんと<らしさ>を持ち合わせた楽曲であった。

そのうえで、たくさんの人を熱狂させて、魅了させているところに凄さを覚えるのである。

ノリが良くて、キャッチーな楽曲たち

そんな10-FEETの楽曲の特徴として挙げると、どの歌もノリが良くて、キャッチーである。

でも、ここぞのサビや部分的なメロディーはキャッチーである一方で、構成はテクニカルなことが多い。

特に、TAKUMAは色んなタイプの歌声を使い分けているため、楽曲に様々な展開を与えている。ダミ声で歌ったり、ラップっぽく歌って見せたり、そのアプローチは様々だ。

なので、キャッチーではあるものの、まったくシンプルではない。

ここは、10-FEETの楽曲の面白さのひとつであるように感じる。

また、10-FEETはオリジナルのフルアルバムは9枚リリースしているが、サウンドの軸はそこまで大きく変化している印象はない。

もともとのサウンドのベースは、複合的に色んなロックのジャンルのサウンドを混ぜ合わせてはいるが、そこでできたベースはどの楽曲の軸になっている印象。

だから、10-FEETってキャリアが長いバンドであるが、あまりどこかのフルアルバムで「前作から作品が変わりすぎていて、今回は微妙。前のジャンルの方が好みだった」という指摘をされる印象がない。

もちろん、各リスナーの中でこのアルバムが好きとか、こういうアプローチの楽曲が好きとかいう感想はあるとは思うが、他のバンドはどこかのタイミングで、がらっと作品性を変えるケースがあることを考えると、10-FEETはどこまでもベースを大事にしている印象を受けるのだ。

常にベースを大事にしてきたからこそ、「第ゼロ感」は色んな人のツボに刺さったのかなーと感じる。

サビのコーラスで一緒に合唱したくなる感じも、10-FEETだからこそのアプローチとメロディーセンスであるように感じるし。

全ての人を楽しめるマインドを持つハートフルさ

その上で、10-FEETが今なおたくさんのバンド好き、音楽好きから人気を博しているのは、ライブ上でのパフォーマンスにも要因があるように感じる。

10-FEETのパフォーマンスって熱い。そして、MCは面白い。

攻守揃っている・・・というと微妙な表現かもしれないが、色んな切り口からみて見惚れるライブをする。

もちろん、ライブで熱いパフォーマンスをするバンドはたくさんいるし、面白いMCで笑いを取るバンドだって、それなりにいる。

でも、10-FEETって熱さも面白さも兼ね備えているんだけど、それだけに留まらない。

なんというか、とてもハートフルなのだ。

ライブのスタンスもハートフルだし、観ている人もハートフルに感化されるケースが多いと思う。

そういうライブをするのだ。

だから、10-FEETって、人として惹かれるファンも相当数いる印象。

色んな立場の人に目配せしつつ、全体的にハートフルな空気を送り込み、でもちゃんと自分たちが信じてきたスタイルで魅了する激しさと優しさがある。

もちろん、人気になるに比例して、色んなスタンスのお客さんがライブにやってきているだろうから、わりと「ライブの塩梅」については悩んでいるのかもしれないなんてことも思う。

それでも、ライブを観にきている人全員を巻き込みながら、ライブが楽しいと思ってもらえるように全力で挑んでいる心地は常にしていて、そういう魅せ方とかスタンスを通底してきからこそ、10-FEETはたくさんの人を魅了してきたんだろうなあと改めて感じるのである。

まとめに代えて

こういうスタンスで活動を続けていても、ライブハウスとかそういうシーンを大切にするようなスタンスを続けていても、ちゃんとたくさんの人に己の音楽が突き刺さり、やがては紅白に出演するような存在にまでなる。

考えたら、凄い話だと思う。

しかも、10-FEETの功績ってそれだけに留まらない。

こういうゴリゴリなロックが大型フェスで存在感をもっている上で、10-FEETが果たした功績ってとても大きいと思うし、アーティスト主催フェスが今、人気になっている流れの源流にも10-FEETがいるように思えるので、そこまで考えると、その存在感はさらに凄いよなーと思うのだ。

Hi-STANDARDがAIR JAMを行ったことは、日本のロック史に大きな影響を与えたが、10-FEETが京都大作戦で生み出したインパクトも、それに比例するよなーとしみじみと思うのである。

なんにしても、10-FEETって改めて凄いよなーということが言いたかった、それだけの記事。

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