今のBIGMAMAが最高であることを感じた『Tokyo Emotional Gakuen』の話
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今年リリースされたバンドのアルバムの中で、特に好きな作品がふたつある。
ひとつが、a flood of circleの『花降る空に不滅の歌を』というアルバム。
この作品は、自分的にa flood of circleのこれまでの作品の中でも特に刺さってしまった。
結果、何度も何度もリピートしたお気に入りの作品になのである。今年好きなアルバムは何?と訊かれたら、相手が音楽メディアであろうが、リアルで会う友達であろうが、絶対に一度は名前を出す作品である。
そして、もう一作品、あえて名前を出したくなるほどに気に入ったンドのアルバムが、最近ひとつ増えたのだった。
それが、BIGMAMAの『Tokyo Emotional Gakuen』である。
理屈がどうとかはなくて。
これまでの作品と比較してどうとかもないし、トレンドがどうとかという話もない。
ただただ自分のツボに突き刺さったアルバムだったのである。
あえて言えば、Bucket Banquet Bisが加入されてから初めてリリースされたフルアルバムであり、BIGMAMAとしても5年ぶりのアルバムであり、色んな要素をひとつの作品に注ぎ込みまくった純度の高いアルバムだからこそ、刺さったというのはあるのかもしれない。
特に今作は、EMOにフォーカスを当てた作品であること、ここで言うEMOはおそらく色んな意味のEMOを踏まえたものではあるんだけど、ジャンルとしてのエモぬも真っ向に向かい、攻撃的でかっこいいサウンドをぶちかましているのが、個人的に猛烈に刺さったというのは言っておきたい。
BIGMAMAの『Tokyo Emotional Gakuen』の話
今作は良いと思う部分が多いので、順を追って話をしたい。
まず言いたいのは、単純にアルバムとしての作品性が高いというところ。
今作は、青春、学校をテーマにそれぞれの楽曲=教科とリンクさせているというところがポイントで、それぞれの楽曲が独立したテーマも持ちつつも、それぞれの楽曲とのリンクもあり、トータルで聴いたときのアルバムとしての物語を感じる構成になっているのだ。
ひとつの楽曲として良さやメッセージ性はもちろんあるんだけど、それを繋げてアルバムとしてなったときの気持ちよさがある、ということだ。
近年、アルバムのリリースはどのバンドでも行なってはいるものの、実質ただのベストアルバムになっているというか、良い曲が十数曲集まったのでリリースしました、みたいな作品集以上の意味合いを感じづらいアルバムも一定数確認することがある。
そんな中で、BIGMAMAの『Tokyo Emotional Gakuen』は、どこまでもアルバムだからこそのロマンや意味性を強く感じる作品であるように感じたのだった。
先ほど、「今作は、青春、学校をテーマにそれぞれの楽曲=教科とリンクさせているというところがポイント」だと書いたけれど、この作品の「アルバムであることの良さ」は、そこだけに留まらない。
例えば、このアルバムはタイトルに”Emotional”というワードを使用しているが、これはこのアルバムが”EMO”というコンセプトも持っているからこそ付けられたのだろうし、アルバムを通して聴くことで、エモへのこだわりを強く感じる作品になっている良い。そこもすごく良いのだ。
3曲目の「数学 | RULER」だったり、5曲目の「倫理 | ロジカルモンスター」だったり、エモへのリスペクトや憧憬を持ち合わせながら、今のBIGMAMAだからこそのサウンドタッチで、そういう要素をかっこよく響かせている。
そういう軸がずっとあって、サウンドに触れながら終始ゾクゾクするのだ。
エモというジャンルの話だと少し難しく聴こえてしまうかもしれないので、もう少し平たい言葉にしてみると、今作を聴くと、「常に爆発力のある音づかいで攻撃的なサウンドが炸裂しており、その感じがたまらない」という言い方に変えてもいいのかもしれない。
別に難しいことはなくて、今作のバンドのサウンドがかっこいいのだ。
というのもあるし、自分がわりと最初の頃にBIGMAMAにドキドキした要素って、こういう部分にあったなーなんてことも思うのである。
BIGMAMAって時期によって色んなアプローチをしてきたバンドではあるけれど、個人的にはロックサウンドでぶちかます感じのタッチが好きだったし、そういうサウンドがありつつもヴァイオリンというパートを効果的に使って響かせる無二性が、めっちゃ良かったんだよなーということを改めて思ったのである。
例えば、バンドにおけるヴァイオリンって、バラードソングにおけるオーケストラ的なアプローチで取り入れることが多い印象がある。
言ってしまえば、バンドの激しさをマイルドにする意味合いにおいて、ヴァイオリンのサウンドが響くケースが多いように感じていたのだった。
でも、BIGMAMAは違っていて。
激しいサウンドの中で、激しい温度感の中のままで、ヴァイオリンが融合していき、切れ味鋭い音像を作り上げていく。
そういう面白さがBIGMAMAにあったし、そういうサウンドにドキドキしていた。
その結果、BIGMAMAの音楽にハマったときがあったことを改めて思い出したのである。
学校や青春というコンセプトがアルバムの中にあるということもあってか、良い意味で自分はBIGMAMAに感じた初期衝動を思い起こすことにもなって、そういう体験を感じるうえでも、アルバムの流れが秀逸であるように思えたのだった。この辺りは、言葉や物語へのこだわりがある金井政人だからこその部分もあるのかなーなんてことを思ったりしたのだった。
あと。
アルバムのロマンが香るという意味では、曲と曲の繋ぎ方も良い。
例えば、6曲目の「生物 | 悩みの種に花が咲いたら」と7曲目の「歴史 | History Maker」の繋ぎ方。
6曲目の「生物 | 悩みの種に花が咲いたら」は、バラード調の楽曲で、しっとりとした丁寧なサウンドを響かせる楽曲なんだけど、最後にはバンドの爆発音を響かせる構成になっており、お尻のお尻には7曲目の「歴史 | History Maker」のイントロと接続するような切り方をしている。
毎回ここまで前の曲を食うように繋ぎ方をしているわけではないんだけど、12曲であることや、この並びであることを意味を最大限活かすように、曲間の意識もされているのが良い。
曲の繋ぎ方が素晴らしいからこそ、この並びでアルバムを聴くことのワクワクが増大していくのである。
要は、
・言葉としてのコンセプト
・サウンドとしてのコンセプト
・曲の並びとしての意味合い
上記の全てが見事だからこそ、アルバムとしてのロマンがかっちり固まっているし、アルバムとして作品に触れたときのドキドキがたまらない。
なので、自分的にこの作品は2023年の”アルバム”として、どこまで推したいのである。
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改めてかっこいいと思ったBIGMAMAのサウンド
アルバム全体として観たときももちろん良いんだけど、それぞれの楽曲を単品で触れたときも、めっちゃ良いなあと感じるのが、今作の特徴。
今作はエモにこだわっているということもあって、基本どの楽曲も疾走感があって、ビートメイクが気持ちよくて、切れ味が鋭い。
この辺りは、Bucket Banquet BisがドラマーとしてBIGMAMAに加入したからこその化学反応もあるのかなーと思う。
「現文 | 虎視眈々と」を聴いた瞬間から、そのことを感じる。(1曲目の「Tokyo Emotional」はインストソングなので、バンドサウンドをフルで感じられるのは実質この楽曲からである)。
余計なものを削ぎ落とし、BIGMAMAとしての純度をもって、自分たちが今したいジャンルと向き合っている高揚感が、どの作品にも漂っている。
・・・ということもあるし、自分がこういう手触りのバンドサウンドがツボだということもあって、アルバムのどの楽曲を聴いても、とにかく気持ち良いし、単純にアガるのである。
あと。
アルバムの比率としてアッパーで疾走感のある楽曲が多いからこそ、アルバムのラストでは、ミディアム調の楽曲として「帰宅部 | Go Home Anthem」がくるのも良い。
それまでの道中を散々わちゃわちゃしたあと、宴が終わったあとはその余韻に浸りながら家に帰るぜ・・・的な空気感があるというか。
あーめっちゃ良いアルバム体験をしたなーの余韻を増幅させてくれる、優しさがこの楽曲にはある気がするのだ。
まとめに替えて
要は、BIGMAMAの『Tokyo Emotional Gakuen』を聴いていない人は、ぜひ聴いてほしいし、特に昔はBIGMAMAをよく聴いていたな・・・という人こそ、絶対に聴いてほしい。
それだけが、どうしても言いたくなった、そんな話。
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