フレデリックの「ペパーミントガム」から感じる、らしさとらしくなさと切なさの考察

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語弊を恐れずに言えば、フレデリックはいつも独特な手触りの音楽を生み出すバンドだと思っている。

もちろん、どのバンドにも、そのバンドにしかない個性ってあると思う。

けれど、フレデリックの音楽って、そういう類とはまたちょっと違う個性を放っている印象なのだ。

ど真ん中を走るフォームで走っていても、良い意味で端っこの方を攻めているような、そんな独特さがある・・・とでも言えばいいだろうか。

バンドの過去の楽曲をみていくと、キャッチーなこともやるし、マニアックなこともやっている。

中毒性がありそうな楽曲を歌うこともあるし、いわゆるスルメ曲のような楽曲を歌うこともある。

でも、どっちに傾倒しようが、その枠の中にあるど真ん中から、いつの間にか少しズレた地点で城を建てているような、そんな面白さがある印象なのだ。

例えば、「オドループ」。

言わずと知れた、フレデリックの代表曲だ。

この楽曲がリリースされた頃、こういうテンポ感の歌が流行っていたし、多かれ少なかれ、当時の大型フェスに漂っていたトレンドを押さえた楽曲であるようには思う。

でも、単にトレンドを押さえた楽曲なのかといえば、そんなことはないし、何とも形容し難い個性がこの歌に宿っている印象を受けるのだ。

ビートメイクもそうだし、サウンドの色合いもそうだし、言葉選びもそうだし。

もっとわかりやすくてど真ん中の刺さり方ができる楽曲にすることもできた中で、フレデリックの音楽はどこまでもフレデリックらしさを漂わせていた。

そして、その「らしさ」を自分なりに言語化するのであれば、「ど真ん中からいつの間にか少しズレた地点で城を建てている」というような印象を受けたのである。

だからこそ、フレデリックの音楽って、サウンドや一小節を聴くことだけでも「あ、これフレデリックの音楽だ」と感じる瞬間がたびたび起こる。

和田アキ子の「YONA YONA DANCE」は、そんな真骨頂の一曲だったのではないかと思う。

この歌って、フレデリックが生み出す音楽という視点で考えたら、ある種のど真ん中を突き刺す作品である。

が、作品というものをもっと広い範囲で捉えなおしてみると、この作品はマスとかベタとかとは違う香りが漂っていて、こんな音楽生み出すやつ、きっとフレデリックしかいないぞと思ったら案の定そうだった・・・という不思議な安心感を持つ作品である。

なぜ、ボーカルが違うはずの楽曲でもフレデリックの個性をばしばしに感じるのかを紐解くと、上記で記述したエッセンスがまぶされているから、という結論に行き着く気がする。

前口上が長くなってしまったが、フレデリックはいつだって、そういう不思議な魅力を漂わせている楽曲を生み出してきた。

そして、それは新曲である「ペパーミントガム」にも通ずる、というのがこの記事のテーマであり、核として言いたい話である。

ポイントなのは、この歌って、フレデリックとしては新境地感があるし、これまでのフレデリックの楽曲ではやってこなかったような要素やトーンを感じる楽曲であるということだ。

前述したようなダンスロックとは違う趣だし、横揺れしやすいビート感ではあるんだけど、安易に横揺れしたらハマるかと言えばそうとも言い切れない、絶妙なビートのハネ方をしているなーという印象の楽曲である。

しっとりしている楽曲かといえば、そんなこともなくて、ビートがハネる気持ちよさもあるからこそ、どこまでも絶妙な一曲なのである。

そう。

「ペパーミントガム」って、本当に絶妙な楽曲だなあと思うわけだ。

楽曲にも当然ジャンルがあって、どんなジャンルにもそのジャンルだからこその王道がある。

でも、「ペパーミントガム」はこのジャンルの歌である、として捉えたとき、見事にそのジャンルの王道からは外れるようなアプローチをしている。

そんな印象を受けるのだ。

それはバンド全体で構成する音像であったり、リズム隊が生み出すビートメイクだったり、間奏で垣間見えるギターのリフの感じだったり、ボーカルの温度感だったり。

全ての要素で言えることのように思うのである。

結果、この絶妙な感じを言葉にするならば、フレデリックらしさを感じる、と言ってしまいたくなる。

フレデリックの新境地感を覚える一方で、どこまでもフレデリズムを感じるというか。

その上で、「ペパーミントガム」は確かに今までのフレデリックの作品とは違う要素をいくつも持っている。

わかりやすいところで大きく違うのは、切なさを明確に香らせているところ。

しかも、ラブソングとして正当かつ真っ向から向き合う大胆さを持っている。

フレデリックとしての、まごうことなきラブソングであり、そういう部分においても、フレデリックの新しい顔を実感できる歌になっている。

なので、逆説的な要素をいくつか持っているんだけど、らしさとらしくなさを持った楽曲である、とは言えるし、その<らしくなさ>のひとつとして、切なさの香り方を挙げることができるのかなと思う。

まとめに替えて

あと、色んな”余白”を感じさせるところが良いなあと思った。

特に、フレデリックの余白の漂わせ方が良い。

音においても、ビートメイクにおいても、言葉が組み立ているメッセージ的な部分でも、それが言える。

今作は、余白の部分が丁寧かつ美しく展開されているからこそ、色んな想像をかきたてることができて、楽曲を奥深く楽しむことができる。

「ペパーミントガム」というタイトルの通り、噛むことで苦味とすっとした香りを感じさせていき、噛めば噛むほどにその深さに入り込むことになる。

そんなことを、感じるのである。

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