前置き
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2010年代前半のロックシーンって、それこそ同じレーベルに所属しているKANA-BOONの躍進にもあるように「踊りやすいビート感」で音を鳴らすバンドが多かった。
仮に本人たちのルーツはそこになくても、当時は「踊らせること」に寄せているバンドが多かったのは事実としてある。
フレデリックのように今はそこから距離を置いてるバンドでも、一度くらいはそこにのっかったりしていた。
けれど、だ。
BLUE ENCOUNTは違っていた。(以下、ブルエン)
ブルエンは「軽くてもいいから踊れる音楽」ではなく「音が重たくて、踊るよりも拳を掲げるようなもの」を鳴らしていた。
いや、まあ、ライブではそれなりにサークルができていた気もするけど。でも、少なくとも、僕はブルエンの音楽をそのように感じていた。
ただし、それ故、ブルエンの音楽はシンプルに見えることも多かった。
人によっては、それって一昔前に流行ったロックなのではないか?と感じることもあったかもしれない。
特に、ブルエンのやっているジャンルはどうしてもONE OK ROCK(以下、ワンオク)の影がチラついてしまう。
仮にワンオクの影をチラつかせないとしても、どうしても、このジャンルはやり尽くされているフシがあったのは確かだった。
本編
差別化を図るということ
もちろん、細かい音楽的な部分では、どんなバンドも「差別化」を図ろうとしている。
けれど、そんなに音楽に造詣がない人からも「このバンドは他と全然違うな〜」と思ってもらうようにするには、わかりやすい特徴が必要になる。
例えば、04 Limited Sazabys。(以下、フォーリミ)
彼らの場合、Hi-STANDARDの名前をあげるまでもなく、ジャンルだけで言えば、完全に先人たちにやり尽くされたものにチャレンジしていた。
しかし、偉大な先人が多々いるなかでも、フォーリミが明らかに他のバンドと差別化をはかれているのは、GENのボーカルによるものが大きいと思う。
そうなのだ。
似たようなジャンルに挑むなら、音だけで判断できる、わかりやすい特徴が重要となる。
その中でも、一番の大きな武器になるのがボーカルの声であろう。
でも、ボーカルの声だけで差別化をはかれないのだとしたら、次は楽器で差別化をはかることが多くなるだろう。
Fear, and Loathing in Las Vegas(以下、ベガス)が躍進してきたときの「なんじゃこりゃ」感はすごかった。
具材全部載せ感というか、その展開の後にその展開ぶち込むの???みたいな、そういう驚き。
好き嫌いはともかく、音を聴けば、一発でベガスとわかってしまうくらいに、音で差別化を図ったひとつの例となる。
で。
このように他のバンドの差別化と比べると、ブルエンはどこまでも素直だったように思うのだ。
どこまでも、自分が志向するジャンルに誠実だったように思うのだ。
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ブルエンがすごいと思うところ
ブルエンは、普通に音を鳴らしても、なかなか差別化が図れないジャンルに飛び込んだ。
これは間違いない。
しかも、そのジャンルで大成功した同世代のバンドもいる。
音楽的方向性でいえば、わりと茨の道だったと思うのだ。
だからこそ、骨格は重たい音で勝負しつつも、すご〜く細かいところで調整を重ねたり、独自のミックスを繰り返してきた。
同じジャンルのバンドのなかでも、群を抜いて、音の作り込みが繊細だと思うのだ。
この歌を聴いても分かると思うけれど、楽器のパート、とにかく細かい。
ギターのゴリっと感で魅せるところは魅せていくし、「だっだっだっ」とリズムのアクセントを強調していく部分は、そこを強調するし、サビ前に3.2.1とカウントを入れて、ノリやすくする工夫も惜しまない。
しかも、この歌は、Cメロになるとラップパートになる。曲を単調にさせず、飽きさせないように、色んな工夫を楽曲に取り込んでいるのだ。
いや、ほんとね、音を細かく聴けば、めっちゃ細かいところまで工夫しているのがわかる。
それこそ、ELLEGARDENとかASIAN KUNG-FU GENERATIONみたいな先人のロックと比べたら、あるいはエモ路線だった頃のワンオクと比べたら、その細かさがすんげえよくわかると思うのだ。
確かに、ベガスみたいに音の質感だけで「あ、このバンドだ!」とは、なりづらいのかもしれない。
わかりやすい飛び道具は使っていないから。
でも、ブルエンって手垢のついたジャンルにあえて正面から向かい、わかりやすい飛び道具は使わずして、明確に個性を出してきた。
だから、すごいと思うのだ。
それをあえて言葉にするならば、重めのサウンドをキャッチーにしていく技術。
それが卓越している。
だからこそ、こういうジャンル自体は苦手なリスナーでも、ブルエンの音楽はめっちゃ聴くっていう人、けっこう多いと思うのだ。
細かな部分部分を上手にミックスして、エモというロックを、よりポップに、キャッチーなものに変えていく。
そういう繊細さがある。
言葉ではなかなか説明できない感性を持っているのが、ブルエンの凄さなのだ。
そうなのだ。
ブルエンの魅力って、なかなかに言葉にはしづらい部分があって。
ブルエンを紹介するときって「田邊がやたらと泣く」とか「ライブがエモーショナル」とか、そういう「わかりやすいもの」ばかりに触れてしまうことが多い。
けれど、ブルエンってそこだけじゃない。
この手の硬派なギターロックを、2010年代の感性でアップデートして、キャッチーにしてしまうところが、大きな魅力なのだ。
そういうジャンルに親しんでいないお客さんも巻き込んでしまい、全員を魅了してしまうところが、大きな魅力なのだ。
そういう意味では、04 Limited SazabysもTHE ORAL CIGARETTESもやっている音楽のジャンルは違うけれど、そこの部分では似ているのかもしれない。
いわゆるONAKAMAが全員そろって、それぞれのやり方でロックシーンを引っ張っているのは、そういう背景があるからだろなーなんて思ったりする。
まとめに替えて
思うのだ。
もし、ブルエンがもっと分かりやすく音で差別化をはかるバンドだったら、安易に飛び道具を使ってしまうバンドだったら、ライブのMCもそこまでぐっと来なかったのではないか?と。
茨の道であるこのジャンルで音を鳴らしたからこそ、重い音と向き合いつつもキャッチーに消化してきたからこそ、エモというジャンルと誠実に向き合ってきたからこそ、ブルエンのライブって、どこでもエモーショナルだし、MCは心にグサリと刺さるし、ぐっとくるんじゃないかなーと思う。
新曲だって、めちゃくちゃにカッコいいしね。
ブルエンは凄いんだよ。本当に。
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