ELLEGARDENの「Strawberry Margarita」が生み出す奇跡
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このブログを開始したのは、2015年である。
気がついたら7年の月日が経っている。
ところで、ブログをはじめた当初と今とでは、当然ながらいくつかの変化がある。
その変化は、ポジティブなものもあればネガティブなものもある。
大きなところで言えば、サブスクの浸透率。
これは、2015年と今とで大きな違いになっているであろう。
2015年の段階でもサブスクリプションは存在していたが、当時は大物アーティストの多くが「様子見」をしていたこともあり、サブスクリプション以外の方法で音源を聴く必要のあるアーティストが、今よりもたくさんいた。
フェスシーンにおいては2015年と今の比較よりも、コロナ前コロナ後で話を切り分けた方がすっと入るんだろうけど、ROCK IN JAPAN FESTIVALなんかのメインステージのタイムテーブルをみると、「あれ、今では大人気のあのバンドがこんな小さいステージでライブをやっていたなんて・・・」というケースをいつくも目撃することになる。
また、チャットモンチーやNICO Touches the Wallsのように、2015年のROCK IN JAPAN FESTIVALではGRASS STAGEに名前を連ねていたが、今はバンドの活動をとめているケールも散見することができる。
要は、それだけの変化が生まれるほどの時間が経過したということ。
そして、月日が流れる分だけ、活動をとめてしまったバンドがたくさんいることを知ってしまうことになる。
しかし、だ。
あの頃と比較して目に付くのは、なにも活動休止や解散といった暗いトピックだけではない。
そう、2015年の段階ではもう二度と新作を聴くことも、ライブを観ることもぶっちゃけ叶わないんだろうなあと思っていたバンドが、活動を再開するケースだってあるのだから。
ELLEGARDENは、まさしくそんなバンドの代表だろう。
きっと、2015年の段階では、ほとんどの人がまたコンスタントに活動してくれるなんて、正直なところあまり期待していなかったと思うのだ。
でも、それは夢でも妄想でもなく、現実のこととして訪れる。
ELLEGARDENが約10年ぶりにライブを行ったのは、2018年だった。
ライブを行うと発表されたときの空気はとんでもないものだった。
それだけ、たくさんの人が待ち侘びていたから。
でも、みんな期待はしているけれど、もしかしたら復帰なんて訪れないかも・・・な気持ちもあった。
そんな微妙な空気が流れ続けていた中での、本当に突然の復活のニュースだったのだ。
どうしてもどのライブも高い倍率なので、2018年以降で考えても、ライブに行けた人、行けていない人はいると思う。
けれど、10年の月日が流れた先での「活動再開」は、ELLEGARDENの音楽を好きな全ての人の胸を震わせることになったのだった。
そこからマイペースながらも、コンスタントにELLEGARDENは活動を続けることになる。
一時的の復活なんかではなく、一回花火を打ち上げたらそれで終わりということではなく、確かにELLEGARDENはライブを重ねていったのだった。
コロナ禍も間に挟んだため、当初の想定とは異なる部分もあったかもしれないが、逆に言えばそういうフェーズになったとしても途切れることなく、ELLEGARDENはコンスタントに活動を続けていくことになる。
盟友との対バンライブ。
配信ライブ。
そして、全国ツアーの発表。
ひとつひとつ、誰かにとっての夢だったような活動を、確かに実現していくのだった。
そして、ついにELLEGARDENはもうひとつ、とんでもないニュースを起こすことになる。
そう、新譜を発表することになったのだった。
YouTubeやサブスクリプションを通じて音源に触れるというところに確かな月日を感じることになるが、ELLEGARDENはまがいもなく新譜をリリースしたのである。
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ELLEGARDENのMountain Topと「Strawberry Margarita」の話
最初にリリースされたのは、「Mountain Top」、そしてその後に発表されたのは、「Strawberry Margarita」。
どっちも好きなんだけど、この記事では「Strawberry Margarita」の話をしたい。
ところで、ELLEGARDENのメンバーである細美武士はELLEGARDEN以外にも、the HIATUSやMONOEYESといったバンドで活動している。
特にMONOEYESに関しては、わりとELLEGARDENと音楽性に通ずるものがある。
そういったこともあって、今回の音源を聴くまでは、「細美武士が音楽を作り出すうえで、ELLEGARDENである必要は感じないのではないか」なんてことを思ったのだった。
他のメンバーも個々でキャリアを重ねているが、多くの場合、ELLEGARDEN以降ではじめたバンドの方がテクニカルなことをしている。
そのため、今更ELLEGARDENっぽいことをやるのは微妙な気がするし、かといって必要以上にテクニカルな部分に走るとELLEGARDENっぽさがなくなるしで、難しいんじゃないかと勝手に思っていたのだ。
ELLEGARDENはあの頃は輝くような宝石を生み出したけれど、月日を経つことで、その輝きに新鮮味を覚えないんじゃないかと思ったのだった。
でも、「Strawberry Margarita」を聴いて、思った。
その考えは杞憂だった、と。
なぜなら、ELLEGARDENの音楽を聴くと、他のバンドと比較することができな魅力に満ちていることを実感したから。
どのメンバーの、他のどのバンドとも違う確かな魅力を、ELLEGARDENの新譜は放っていたのだった。
もちろん月日が経っている分、当時のELLEGARDENにあった、どこまでも突き抜けるエネルギーが別の色合いに変わっている印象は受けた。
言ってしまえば、当時の<尖り>が丸くなっていると感じる部分はあった。
でも、ELLEGARDENってただ疾走感があって、ダイブができて、破壊力があるだけの音楽、というわけではない。
確かに抑えきれない衝動が溢れ出す、猛烈なるエネルギッシュな感じもELLEGARDENの楽曲の魅力である。
でも、ELLEGARDENの音楽って、衝動の隣でブルーな色合いを帯びたエモさも同郷しているのである。
変な言い方になるかもしれないが、ELLEGARDENの楽曲って、衝動と哀愁が入り混じっているのだ。
突き抜けて明るいわけではなくて、暗い部分にもきちんとスポットがあたった歌が多い。
だからこそ、少しナイーブな歌詞が際立つし、それがELLEGARDENの魅力になっている。
爆発力と繊細さのこのコントラストもまた、ELLEGARDENにしかない魅力だと思うのだ。
そして、「Strawberry Margarita」には、そういうELLEGARDENにしかできない絶妙な<混ざり>が重厚に織り込まれている印象を受けた。
確かに複雑な楽曲が氾濫する現代において、「Strawberry Margarita」のリズムメイクはどこまでもシンプルである。
でも、シンプルだからこそ、ELLEGARDENにしかできない生み出すことができない衝動と哀愁が際立っている。
さらには、月日を重ねることで、そういう魅力が、より深みをもって音に表現されているように感じたのだ。
当時よりも、きっともっとテクニカルなプレイができるはずなのに、必要以上のテクニカルは楽曲に落とし込まない。
あくまでも全体としてはシンプルで、それなのに引き込まれてしまう楽曲展開で魅力していくのだ。
ああ、これはELLEGARDENにしかできない、ELLEGARDENの新譜だ、と思うのである。
まとめに替えて
新曲を聴いて、改めて思った。
ELLEGARDENは、単なる思い出のバンドではない、と。
「Strawberry Margarita」に触れることで、ELLEGARDENは現在進行形で進化していることを実感する。
確かに昔の歌には昔の歌の良さがあるし、あの時代だったからこその切れ味が当時の楽曲に存在していることは確かだ。
でも、「Strawberry Margarita」には、いろんなフェーズを乗り越えてきた今のELLEGARDENだからこその深みと、ELLEGARDENにしか出せない聴き応えが丁寧にミックスされている心地を覚えた。
タイトルが、マルゲリータというワードを使うのも、エルレらしいよなーと思うし。
なーんてことを思っていたら、アルバムの発表がアナウンスされて、新譜どころではない意識の道中で、この記事を締めくくろうと思う。