BUMP OF CHICKENの「クロノスタシス」の歌詞やサウンドや佇まいから感じるコナン感
いや〜〜〜変わったよなあ。
ついついそんなことを思ってしまうバンドがいる。
BUMP OF CHICKENのことだ。
というのも、先月、空間オーディオ対応で再レコーディングした「天体観測」をBUMP OF CHICKENは発表した。
空間オーディオ対応ということで、広がりを感じる音の響きが宿っている。
でも、そういう<ギミック>の部分を抜きにして、「あ、BUMP OF CHICKENって変わったなあ」と感じさせるテイクになっているのである。
アレンジ自体は大きくは変えずに収録している「天体観測」だからこそ、その違いが際立つ構成になっている。
本編
「天体観測」の話
例えば、昔の「天体観測」を聴くと感じるのは、藤原のボーカルの鋭さ。
演奏もボーカルも良い意味で<棘>が見え隠れしている。
ソリッドなボーカルから展開されるのは、等身大感だ。
「天体観測」ってスケールの大きな歌でありながら、妙に等身大感を覚える一曲なんだけど、それは藤原のボーカルがソリッドであるがゆえのようにも思うのだ。
一方で、再録された「天体観測」は柔らかくて、優しい。
近年のBUMP OF CHICKENの楽曲は良くも悪くも<優しすぎる>と話題になりがちだけど、同じ歌詞、同じメロディーを歌うことで、よりそのことを強く実感する。
ボーカルを伸ばしたときの<揺らぎ>もまったく違うし、今のテイクの場合、声が潰れるような歌い方は避けるようにしてメロディーを紡いでいくのも印象的だ。
どちらの声が好きなのかは好みによるとは思う。
ただ、聴き比べて言えるのは、丁寧に歳を重ねたからこそ、今のボーカルにたどり着いた感があるということ。
そして、そこに深みを覚えるのである。
サウンドにおいても、丁寧さが際立つテイクになっている。
昔なら<青さ>が漂っていたフレーズも、不思議と今ではスマートさが際立つ。
今のテイクは、良い意味でそれぞれの楽器やフレーズが独立していて、心地よく耳馴染んでいくのである。
演奏力が格段に上がった今のバンドのアンサンブル。
今のBUMP OF CHICKENだからこその世界観がそこに宿っている。
クロノスタシスの話
そんな中でリリースされたBUMP OF CHICKENの新曲。
タイトルは、「クロノスタシス」。
映画『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の主題歌にも起用された楽曲となっている。
今のBUMP OF CHICKENだからこその柔らかさが漂った一曲。
アレンジも<オルタナ性のギターロック>からは距離を置いて、打ち込み要素もハイブリットさせたノスタルジーなナンバーになっている。
今までのBUMP OF CHICKENの楽曲でありそうでなかったようなテイストになっていて、その心地よさに引き込まれていくのである。
個人的にド派手さは感じないし、短尺で惹き込むような中毒性を内包しているわけではない。
でも、BUMP OF CHICKENの楽曲でしか味わえない切なさが際立っていて、何度も聴きたくなるような<スルメ>感が際立っているのである。
思えば、コナンのモチーフとBUMP OF CHICKENの立ち位置って通底するものがあるように感じる。
なんというか、BUMP OF CHICKENって成長を感じさせるバンドでありながら、いつまでも青年感が漂うバンドだと思う。
幾分もキャリアを重ねたし、フェスやTVメディアに出演した際の扱いをみても大御所といって差し支えない立ち位置である。
でありながらにして、同世代のバンドにはない若々しさを感じさせるバンドでもあるのだ。
今なお若いリスナーに支持されているのも、良い意味で歳を感じさせない柔らかさを持っているからであるように思う。
そんな立ち位置が、コナンと似ているよなーと思う。
コナンというのもキャリア(年齢)と見た目が乖離した存在だし、「成熟した若さ」を持ち合わせた象徴であるようにも思う。
数あるバンドの中で、もっともコナン的な性質を持ち合わせたバンド、と考えたらBUMP OF CHICKENという回答になるのは、そこまで突飛なことには思わないわけだ。
そこまで考えたとき、BUMP OF CHICKENがコナンのタイアップを手掛けるのも、ある種、必然のように思うのである(勝手ながらの話ではあるが)。
なお、「クロノスタシス」って、BUMP OF CHICKENらしい歌だなあと思うのは、<優しさ>の部分だけではない。
1番のAメロの言葉に対するメロディーの置き方と、そのメロディーに対するリズムの置き方に、とても今のBUMPみを覚えるのだ。
<みたい>と言葉に対して、そういうメロディーを当て込むのか・・・!という驚きと感動があるのである(この辺りは、実際に聴いて、感じてみてほしい)。
なんというか、その言葉をすっと歌わずに、一旦そこで区切るのね・・・!みたいな面白さがあるのである。
また、その音と音をあわせてしまって、一音にして歌ってしまうのね・・・みたいなポイントもあって。
BUMPって大御所的な立ち位置でありながら、他のポップス(バンドも含めて)ではやらないようなメロディーの置き方をみせてくるのである。
変に存在感の強いサビを用意しないのも、そういう部分と通ずるところがあるように思うし。
派手さはないけど、スルメ感はあるという所以も、そういうところだったりするのだ。
あと、「クロノスタシス」の序盤で、こういうテイストの歌なのに<ノルマ>というワードを歌うセンスも好きだなあーなんて勝手に思った次第。
まとめ
自分たちの形で進化を続けるBUMP OF CHICKEN。
どこまでも尊みがあるなーと「天体観測」と「クロノスタシス」を感じたという、そういう話。
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