米津玄師「BOOTLEG(ブートレグ)」 ジャケットに描かれたフクロウが意味するものは。
『アンナチュラル』の「Lemon」、『ノーサイド・ゲーム』の「馬と鹿」に続き、綾野剛&星野源 W主演のTBS新ドラマ『MIU404(ミュウ ヨンマルヨン)』の主題歌として新曲「感電」を提供することが発表された米津玄師。
リリースされるシングルは常にヒットチャート上位を賑わせ、そのニュースを目にするたび、増々ニューアルバムへの期待が高まります。
現時点での最新は2017年11月リリースの4thアルバム「BOOTLEG(ブートレグ)」。
しかし、これにまだレモンはかかっていない。
つまり、次なるアルバムを華やかに彩るであろう、未収録シングルは以下の通り。
・Lemon(TBS系金曜ドラマ「アンナチュラル」主題歌)
・Flamingo(SONY 完全ワイヤレスイヤホン「WF-SP900」CMソング)
・TEENAGE RIOT(GATSBY CMシリーズ「GATSBY COP」テーマソング)
・海の幽霊(アニメーション映画「海獣の子供」主題歌)
・馬と鹿(TBS系日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」主題歌)
・感電(TBS系 金曜ドラマ「MIU404」主題歌)
すごいヤバい以外の表現が見つからない。どうしましょ。
ならば新たな発表を心待ちにする今こそ、あらためて「BOOTLEG(ブートレグ)」の魅力を再確認したい。
米津玄師の作品はいずれも、何年経過しても何度見聴きしても、新しい発見をもたらしてくれます。
これは本当に不思議ですごい現象。実はまたひとつ気が付いたことがありまして…。
「BOOTLEG」のジャケットもこれまで同様、米津玄師が自ら描いたもの。
左手のドアは大きく開け放たれているのに、別の方向を向いて立つ首のない人。
その壁には不気味なフクロウが描かれ、こちらをにらんでいるようにも見えます。
しかしよく見れば、そのフクロウの足は確かに人の肩にとまっている。
そしてこのフクロウ、どこか既視感がある。
ずっと探していてようやく見つけました。
出典は恐らくDover Publicationsの「Animals: 1,419 Copyright-Free Illustrations of Mammals, Birds, Fish, Insects, etc」から。
この出版社はパブリックドメインの出版物が多く、該当のフクロウもロイヤリティフリーの絵素材のうちのひとつ。なので同じ絵素材を他者も使用しています。
特に有名なのが、コンピュータ関連の書籍の出版を行っているO’Reilly Mediaのアニマルシリーズ。フクロウの本といえば、その存在を知る人にとっては「Regular Expressins」です。
米津玄師はDTMで楽曲制作を行い、また現在のオフィシャルサイト以前のHPは「独りきりで慣れないタグ打ちに翻弄されながら作った」と書き残していることから、当然コンピューター関連の書籍にも詳しいであろうと想像します。
そして「Regular Expressins」の日本語版タイトルは「正規表現」。
書籍のタイトルや、プログラミングで文字列のパターンマッチングを行う機能、という意味ではなく、言葉としてその単語をクローズアップしたと考えるなら「正規表現」は正規な表現。
「正規」の対義語は「非正規」。
正規ではないものを表現する場合、類似品、模倣品、海賊版、などの言葉たちがあげられます。
「海賊版」という意味を持つ単語BOOTLEG(ブートレグ)と対照的につながります。
つまり彼が【肩に重くのしかかるもの=巨大なフクロウ=正規表現】という意味で、あえてあのフクロウをジャケットデザインに用いたと考えても不自然ではない…。
リリース時のインタビューを振り返り、今一度ジャケットデザインの意味するものを探ります。
アルバムタイトルを「BOOTLEG(ブートレグ)」とすることで、以前から考えていたという“過剰なオリジナル信仰”みたいなものに対して、自分なりに解答を出したかった。
ポップミュージックとは、普遍的なものとは、そもそも自分自身とは、継ぎ接ぎのコラージュのような存在なんじゃないか。
それはある種ものすごく透明な存在で、その自覚があれば、わざとらしく開け放たれた扉ではない“奥のほう”に進んで行けるんだと思う。…と語る米津玄師。
楽曲の中だけでなく、あらゆる創作物の随所に隠されたメッセージ。これもまた米津玄師が多くの人を惹きつけて止まない不思議な魅力のひとつだと言えます。
筆者紹介
インザファーム(@inthefarm_m)
映画会社の制作・宣伝を経て現在は主婦。DTPデザインを少々。Webデザインも少々。作詞家を志望し地味に活動中。
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