前説
2年ほどの時を経て、再びNao’ymtとタッグを組んだ三浦大知の新曲 「Backwards」。
この歌がすごく良い。
端的に言えば、この歌はアグレッシブなダンスナンバーということになる。
ライブでも盛り上がりそうなアゲアゲなやつだ。
んだけど、その<アグレッシブさ>が一味違うのだ。
三浦大知にしか生み出すことができないスリリングさがそこに落とし込まれている。
そこで、この記事では「Backwards」で感じた興奮と感動を、簡単ながら書いてみたいと思う。
本編
三浦大知が提示するポップス
だいぶテレビでパフォーマンスされるJ-POPも多様性を帯びてきた。
カラオケで歌えるような、(ある種)わかりやすいメロディーラインではなく、リズムだったりビートといった要素にも注目したくなるような、そういう音楽体験を提供してくれるポップソングが増えた印象なのである。
ただ、メロディーのキャッチーを損ない、別の部分を強調する手法は往々にして<洋楽的なエッセンス>として吸収されることも多い。
もし、今<邦楽的>と<洋楽的>を二分にして音楽を語るのだとしたら、メロディーの存在感というところに話が行き着くと思っていて、(良くも悪くも)J-POPの構成から離れたアプローチをした楽曲は、洋楽に接近した(ような印象を)与えることになりがちなのだ。
ただ、三浦大知とNao’ymtがタッグを組むと、そういうものを超越したところにポップスを着地させるところが多い。
洋楽のエッセンスを輸入した日本の音楽、という感じではなく、日本の音楽のままで、ワールドワイドに進化させたようなスリリングさを感じさせるのだ。
「Backwards」もまた、そういうスリリングさに身をまとっている。
キャッチーを覆す楽曲構成
冒頭はちょっと懐かしさのにおいのするシンセが展開される。
<新しい音楽>を突きつけてきた三浦大知のサウンドからすると、少し意外な始まりでドキリとさせられるんだけど、それが良いスパイスになっていることが次第にわかっていく。
というか、三浦大知的な質感のサウンドを配置させつつも、このシンセが絶妙に混ざりあうことで、楽曲に確かな高揚感を生み出していくという印象なのだ。
<綺麗>というよりも<攻めている>の感触をこの楽曲から覚えるのは、こういうサウンドのスパイスの効かせ方も関係しているかなーなんて思う。
1番の終わりから2番の始まりの間で、三浦大知のブレスをしっかり聞かせるパートがあるんだけど、この差し込み方も良い。
この歌にとってアグレッシブ感ってすごく重要だと思うんだけど、こういうある種の肉体性というか、溌剌した一コマみたいなものを差し込むことで、楽曲にある種の緊張感が生まれて、それが楽曲のアグレッシブ感に増大させていく。
選び抜かれた音たちが三浦大知の歌声と共謀することで、とんでもない破壊力を生み出していくのだ。
三浦大知とNao’ymtのコンビがなぜヤバイのか。
それを痛感しっぱなしの5分間となっているのだ。
過去を明らかに超えたダンスの表現力
きっとこの楽曲のMVを観た人なら全員、思うはず。
ほんとにこれ、歌いながら踊るの?と。
なぜそう思うのかといえば、この楽曲のダンスの難易度が高すぎるから。
踊ることのみ焦点を当てたとしても、相当に難易度が高いことが明らかなダンスなのである。
瞬間的に動きをピタッと止めることができる筋力と集中力。
指先ひとつひとつの細かやな動き。
全体的なフォーメーションも考えたしなやかな動き。
ダンスを構成する上で必要となるあらゆる要素を相当高いレベルにしておかないと<かっこいい>とはならないダンスパフォーマンスで、MVが展開されていくのだ。
息が切れるとかそういうレベル以前の動きの激しいダンスが展開されているわけで、どう考えても歌いながら踊る姿が想定できないわけだ。
MVではマイクをもたず、口パクで<歌うこと>表現をする三浦大知なわけだけど、一体ライブで披露するとき、どうなってしまうんだという気持ちが膨れ上げる。
ただ。
恐ろしいのは、きっと三浦大知はこの楽曲をライブでパフォーマンスするときは、がっつり<歌いながら踊る>んだろうなあということがなんとなく想像できるということ。
普通のボーカルならもっと歌が乱れてもいいはずなのに、きっと三浦大知の場合、ほとんどそこに対する違和感を覚えさせないパフォーマンスをするんだろうなあ、ということ。
歌いながら踊り、踊りながら歌うことに対して、まったくスキのない完成度のパフォーマンスをするんだろうなあということ。
いや。
こんな記事を書いている今でも、正直その姿が想像できない、いくら三浦大知でも。
でも、三浦大知はそういうことを努力と研磨によって行って魅せてしまう。
パフォーマンスそのもので、そういう否定的な想像を乗り換えてしまう凄まじさがあるのだ。
だからこそ、三浦大知に魅了され続けている自分がいるわけで。
まあ、この辺りはしかるべきタイミングで明らかになるところだろうとは思う
とにかくここで言いたいのは、それくらいにダンスパフォーマンスが素晴らしいということなのだ。
もちろん、これは三浦大知のみならず、PURI, Shingo Okamoto, Taabow, Macoto, KAJ1, Kyoといったダンサー陣が優れているからこそでもある。
チームとしてのダンスの一体感、楽曲と踊りのシンクロが絶妙だからこその迫力であるわけだ。
空間そのものをステージにしていき、身体の先端の先端でも躍動感を感じさせる。
三浦大知とそのチームにしかなしえない、圧倒的なアグレッシブさが、そこで提示されているのである。
まとめ
「Backwards」という楽曲をもってして、改めてその凄いポテンシャルを世に提示した三浦大知。
MVでも相当にドキドキさせられるけれど、(TVも生も含めて)ライブでパフォーマンスされるとき、さらに興奮と感動を与えてくれるものになるのかなーなんて思っている。
2021年。
三浦大知は三浦大知のやり方で、日本のポップスの可能性を更新し続けるのだと思う。
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