前説
新曲をリリースするたびにやりやがったなと思うアーティストって意外とそんなに多くはない。
もちろん、好きなアーティストの新譜だったら基本はブチアガるんだけど、その感情って「やりやがった」という類のものとは少し違うように思う。
好きなアーティストの場合、○○な部分が好きというのが明確にある分、そこと照らし合わせながら良い・悪いを判断しがちになってしまうし、意欲的なチャレンジが微妙に思ってしまうこともなくはない。
言ってしまえば「前の方が良かった」という評価に終着することもママあるわけだ。
だけど。
そういう感想に絶対安住させてくれない恐るべき男性アーティストがいる。
三浦大知である。
この記事では、そんな三浦大知について書いていきたい。
本編
Yoursがヤバイ
三浦大知の音楽って、ざっくり言えばダンス・ミュージックである。
ただし、いわゆる「踊れる」楽曲とは方向性もクオリティーもまったく違う。
基本の日本の音楽ってみんなで踊れるキャッチーさを内包していることが多い。
ある程度は真似できるようなレベルに、わざと落とし込むことも多いわけだ。
しかし、三浦大知のダンス・ミュージックにそういう優しさはない。
洗練されたダンスと、独創的な振り付けにより、他にはない作品へと昇華していく。
そもそも、一般的なダンス・ミュージックとはビートの概念が違うように思う。
「COLORLESS」を聴けばよくわかる。
この歌もカテゴライズすることにそもそも疑問を呈し、その殻を破るような勇ましさが見て取れるわけだけど、一般的な日本の音楽リスナーなら「ダンス・ミュージック」として昇華しないようなビート感で、ゴリゴリにダンスを踊るのが三浦大知の面白さであり、かっこよさなのである。
「Yours」も、そこで鳴らされる音やビートの構築の仕方が本当に独特である。
どちらかというと、チルっぽい空気を作っているAメロ。
メロディーラインも不思議な構築をしており、全体的な空気はポスト・球体という感じがして、思わずニヤリとしてしまう。
そうなのだ。
「球体」で作られた、独特のサウンドと歌声だけで世界観を作り上げるメソッドをさらに紹介させていくような感じが全体的にあるのだ。
だからこそ、「やりやがったな」感が出てくるのだと思う。
そういう意味では、わりとBメロは素直な展開になっていく。
少しずつリズムが早くなっていく打楽器は、いかにもダンス・ミュージックならではのアプローチに見えるからだ。
しかし、打楽器の連打が行われ、高揚感のあるサビにバトンが繋がれたかと思えば、まさかのサビはボーカルレスという展開。
散々フリをかましておきながら、そこではボケをかまさない漫才のように、予想もつかない展開にドキドキさせられるのだ。
中田ヤスタカなんかはよくやる手法であるが、こういう音の質感でサビをボーカルレスにして、そのまま魅せきってしまう三浦大知は流石だよなーと思う。
で。
音源ではわからないけれど、きっとこのボーカルレスの間にゴリゴリに踊っているんだろうなーと想像すると、よだれがたれそうになる。
耳でも楽しめるけれど、視覚ではそれ以上に楽しませてくるのが三浦大知の真骨頂だから。
声も良い
三浦大知って声も良いんだよなーと最近強く思う。
あれだけゴリゴリに踊っておきながら、歌にも一切の妥協がないのが三浦大知の良さなわけだけど、「踊りながら」みたいな枕詞を抜きにしてボーカルだけに耳をすませてもその破壊力は相当なものだよなーと思う。
この歌には、ワンオクのTakaをはじめ、名だたるアーティストが参加する黄金のようなコラボである。
このコラボに三浦大知も参加している。
全員歌がうまいコラボであり、その中で個性を出すのも一苦労なはずなんだけど、三浦大知はこの場でもしっかりと存在感を示している。
三浦大知の歌声って、すごく紳士的な立体感があるんだよなーと思うのだ。
なんというか、歌がうまい人って、バラエティーにおける関ジャニの村上のように「俺やで」感が強く、どんどん前に出ていく印象を与えることも多い。
もちろん、ボーカルなんだからそれは大正解なわけだけど、どうしても我が強すぎるゆえに損なわれる繊細もあって。
そう考えたとき、三浦大知の声は、そういう類とはちょっと違うよなーと感じるのだ。
ウィスパーになったときにも、耳の奥に柔らかく届く優しさがあるからだ。
声量がめっちゃあるのに、紳士さも感じるのである。
そして、声量があるうえでの紳士さだから、そのボーカルにどこまでも立体感を感じるのである。
というか、そういうボーカルだからこそ、物語調の歌でもメッセージ性の強い楽曲でもハマるのかなーと思う。
「Yours」も、そういう繊細だけど力強い三浦大知のボーカルが炸裂している。
とくにBメロの伸びやかなボーカルに、その要素が色濃く現れているように思う。
まとめ
色々グダグタ書いたけれど、新曲をリリースするたびに軽やかに前作を超えていく凄さがあるのだ、三浦大知の楽曲は。
まじで長年連載をしている少年漫画レベルに「凄さ」がインフレしているはずなのに、まだまだ高みをみせていくれる。
自分はここ数年、三浦大知の楽曲をベスト3以内に入れてしまっていて、今年はそろそろないかなと思っていたけれど、新曲を聴くたびにそういう気持ちを打ち砕いていく。
「Yours」を聴いていない人は、今一度聴いてみてほしいなーと思う。
ダンス・ミュージックの概念がきっと更新されるはずだから。
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