前説

普段からは、SNSは流し見くらいにしか観ていないんだけど、それでも不思議と“嫌なもの”は目に入ってしまうものである。

で、そういう“嫌なもの”をついつい目で追っちゃうと、精神的にしんどくなることってよくあると思う。

わりとこの数日はそういうテンションになることもある。

んだけど、そういうテンションにこそフィットする音楽っていうのもあって。

というか、そういうテンションだから刺さる音楽っていうのもあって。

けっこう沈んでいた今の気分にフィットして、ほんの少し元気をもらった一組のアーティストをこの記事で紹介したい。

秋山黄色である。

本編

秋山黄色っていわゆる宅録系のミュージシャンというイメージがある。

家で引きこもって音楽を作っていたタイプのアーティストというか。

わりとデスクトップ系のミュージシャンって、作る曲は洒脱だけど、ライブでは迫力よりも技巧派重視であることが多い気がする。

少なくともバンドと比べると、そこが大きな差になっていることが多い印象なのだ。

でも。

秋山黄色ってそういう一般的なイメージを超越しているところがある。

端的に言えば、技巧派よりも迫力重視。

洗練さよりもうるささが目立つタイプのアーティストなのだ。

冒頭で紹介した「猿上がりシティーポップ」なんてその代表である。

イントロのギターとドラムがアグレッシブに鳴り響くところから既にもう迫力がみなぎっている。

エレキギターの音がゴリゴリに聞こえてきて、バンドサウンドのダイナミズムが直にくるような感じ。

一言でいって、良い意味でうるさい感じなのだ。

その流れは、ゆったりとしたリズムの曲でも変わらない。

「モノローグ」はいわゆるバラード寄りの曲である。

でも、こういう歌でも歌と演奏の迫力がゴリゴリに伝わってくるのである。

エレキギターの音が力強く聞こえるように音が配置されるし、うるさい感じのバンドサウンドに負けない力強い歌声が聞こえてくる感じ。

高い声のボーカルが目立つ音楽シーンにおいて、中音域を力強く震わせる秋山黄色の歌声には、頼もらしさすら感じてしまう。

ライブもすごい

とはいえ、サウンドでは迫力がある宅録系ミュージシャンって、他にもいる気がする。

でも、そういう人でもいざライブで曲を披露すると「カラオケ感」が目立つ人って、それなりにいる。

迫力のある音楽を作るのと、迫力のあるライブをするのとでは勝手が違うわけだ。

どっちが良くてどっちが悪いという話ではないが、音源とライブでは与えるイメージがまったく違うアーティストがそれなりにいることは確かだ。

でも、秋山黄色って、そういう類の違いをほとんど感じさせない。

自分が秋山黄色のライブを観たのが、バンドセットだったからということもあるのだろうが、本当にライブでもゴリゴリだったのだ。

なんなら、ライブの方が攻撃的だったし、めちゃくそにうるさかったのだ。

「猿上がりシティーポップ」では叫ぶようにサビを歌い、うまく魅せるつもりなんてなくて、気持ちの赴くままにギターをかき鳴らしていたのだ。

多くの宅録アーティストがそうであるのに、ものすごく前髪が長いんだけど、聞こえてくる声は他の宅録アーティストとはまったく違う強さと勢いを宿していたのだ。

こういうタイプの男性ソロアーティストって、いそうであんまりいなかったよなーと思ったのだ。

いわゆる邦ロックと距離の近いソロアーティストはいくらでもいる。

でも、バンドが持ちがちな迫力にひけを取らない迫力を持ち合わせたソロアーティストって、そんなにいないよなーと思うのだ。

けれど、秋山黄色は違っていた。

そこにある勢いは、ロックバンドのようなそれだったのだ。

表情は色々ある

ただ、いくつか曲を聴いてもらうとわかるが、別にうるさいだけが秋山黄色の持ち味というわけでもない。

ソロアーティストという強みを存分にいかし、楽曲によってサウンドのアプローチを大きく変えてくるアーティストでもある。

シックな歌もあれば、バンドからは距離のおいたアレンジの歌も歌う。

新曲が発表されても、どんなテイストの歌かは聴いてみないとわからないドキドキさも兼ね備えているのだ。

シンガーとしても強いんだけど、クリエイターとしても多彩、とでも言えばいいだろうか。

だからこそ、より今後の活躍に期待してしまうのである。

まとめ

トータルでみると、歌声が強いんだよなあ、と思う。

だからうるさい歌も、テクニカルな歌も並行して映えるのだ。

どんなサウンドも自分の世界に引きずり込んでしまう、ボーカルとしての魅力を持っているのだ。

声が良い。

その声の伸びが良い。

トータルで言ってしまうと、そういう感想を持つ。

だからこそ、ふさぎ込んで気持ちを吹き飛ばしてしまうような元気を、秋山黄色の歌からもらうのである。

だって、「おれ」っていう一人称がこんなにも似合う声のボーカルいないもんなあ、と思うのである。

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