秋山黄色の「ソニックムーブ」を、いつもより少しテンションを上げて語ってみた
言っても、秋山黄色の音楽に出会って5年くらい経つ身だ。これまでリリースしてきたシングル・アルバムはリアルタイムで追ってきたし、パワフルなギターロックも洒脱なスタイリッシュナンバーも、身体が音符でずぶ濡れるほどに浴びてきたつもりだ。
ただそうなると、人間、我儘なもので、一定数の刺激を浴び続けると慣れが生じる。最初は辛くて喉の中の存在させることすら困難だったハバネロのお菓子も、気がつくとハムスターよろしく口の中に蓄えることも可能な領域に達するようになる。・・・いや、それは嘘だ。見栄を張った。実際はどれだけ辛いものを経験しても、ハバネロのお菓子なんて食えない。CoCo壱のカレーを2辛でも、俺は涙目になる。
ただ、最初はダイレクトにくらっていた衝撃に対して、いつしか耐性がついて余裕ができるようになる、というのはある。音楽もこれと一緒で、最初はあんなに衝撃を受けていた音楽でも、いつの間にか「へえへえ。今回はこんな感じね・・・」としたり顔で享受することも増えていく。
『名探偵コナン』という漫画をみてほしい。最初は死体を目撃したことで、あんなに狼狽えたはずの善良な小学生ですらも、いつの間にか「はいはいはい、死体ね。事件事件〜。警察呼ばないと〜」「なんなら、僕たちで推理して犯人見つけるわ」くらいの余裕を感じさせることになる。だから、巷では黒幕は光彦だ、なんて暴論まで登場する始末になる。慣れ、というのは本当に恐ろしい。人を強くもさせるし、狂わせるもする。
方向性は違うにしても、音楽だって同じことなのだ。そしてそれは、秋山黄色の音楽だって、同じこと。そこに、例外にはない。そう思っていたわけだ。
「ソニックムーブ」を聴くまでは。
秋山黄色の「ソニックムーブ」の歌詞と音楽の話
秋山黄色のイメージのひとつとして、ロックバンドよりも”ロック”をしているアーティスト、というものがある。
これはロック色の強いアレンジの楽曲を歌うことが多いという意味合いもあるし、ライブのパフォーマンスがロック的というか、枠にとらわれないアグレシッブさがあるという意味合い含んでいるように思う。
ただし、秋山黄色は言ってもソロ・アーティストであり、楽曲のアプローチに対しては比較的”身軽”だ。
ゴリゴリのロックチューンを歌うこともあれば、ポップ色が強い楽曲を歌うことも多い。特に2023年は、ゴリゴリよりは、ゴリゴリ以外の要素を強い歌を世に放っていた。ドラえもんのキャラクターで言えば、ジャイアンよりも源の姉さん寄り、マッシュルで言えば、マッシュよりもフィン寄りのテイストの楽曲が多かった印象。
まあ、キャラクターの話は置いとくとしても、地鳴らしを起こすような豪快なナンバーは最近お控えになっている印象だった。そして、しばらくそういう濃度の秋山黄色の新作を浴びていないうちに、いつしか自分の防御力にも異変が生じていたようだった。だからこそ、「ソニックムーブ」を聴いたときの、本当に一発目の、最初の音がなった瞬間の爆発力が、凄かった。自分の内面にある、何かがどかん、といったのだった。テキストで現すならば、
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!ギターがゴリゴリに炸裂する秋山黄色の音楽だぁーーーーーーっ!!!!!!!!
もちろん、洒脱な楽曲やバラード調の楽曲の秋山黄色の音楽の良さもある。でも、秋山黄色的なロックが炸裂する、パワフルでパンチ力がある歌が解き放つワクワクは、どこまでも変え難いものがあった。改めて、そのことに気づいたのだった。
ギターがエネルギッシュな音を解き放ち、クールでありながらも躍動感に満ちた秋山黄色の歌声が溶け合う心地。初めてアイスクリームのてんぷらを食べた時のような衝撃。冷たいものと温かいものが組み合わさると、こんな美味さを生み出すのかという、あのときの衝撃。そういう過去の記憶を一気にフラッシュバックさせるような、強烈で、甘美なアンサンブル。
ちなみに、歌詞でいうと、今作は強く良いなあと感じるポイントがふたつある。
まず、英詞。
ロック色の強いアレンジで、ビート感も炸裂している楽曲なので、英詞のハマり方があまりにも美しい。ピタゴラスイッチを初めて観たときのような快感。言葉のピースが音楽という展開の完璧な形ではまり込むのだ。これにより、ロック色のロックの部分もドライブするし、メロディーが躍動している印象も受ける。
もうひとつは、ユーモアと本音のバランス。
今作は、ゲーム作品へのオマージュを入れ込みながらも、「うだうだ考える前に行動しろ!」というメッセージを込めた歌ということらしく、色んなフレーズから、今の秋山黄色のモードというか、本音というか、音楽を通して伝えたいことが、びしばしに伝わる。ゲーム愛もあって、それをそういうフレーズで表現するのかという面白さを感じさせる一方で、歌の根幹のメッセージも包み隠さずに伝わる興奮がある。飴と鞭、ではないけれど、違う角度でふたつの興奮がゴリゴリに攻めてくる心地を覚えるたびに、
パッションと激情がゴリゴリに炸裂する秋山黄色の音楽だぁーーーーーーっ!!!!!!!!
そんな内面の衝動が叫び散らすのだった。
いや、思ったね。
やっぱり、ジャパニーズトラディショナルオタクな自分としては、こういう痛快な秋山黄色の音楽が、大好きだな、と。
まとめに代えて
あと、自分は最初この歌のことを「ソニックブーム」と呼んでいた。
ポケモンのせいだ。
それは、許してほしい。
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