前説

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よくアルバムをリリースすると、アーティストはこういうことを言いがちである。

今作は過去最高傑作である、と。

もちろん、今までで一番良いと思う作品を作ったからこそ、作品をリリースするのだろうし、少なくとも技術面では過去を更新していることがほとんどだと思う。

ただ、仮に作り手は本気でそう思っていたとしても、聴き手側がそう判断するかといえば、当然違う。

やっぱり作品ごとに思い入れがまったく違うわけだし、そもそもリスナーが求めているのは「上手さ」ではない。

なので、場合によっては、なんだかんだで一番最初のアルバムが一番良かったなーなんて思うことも多いわけだ。

仮に、今作が最高傑作であるとしても。

しかも、アーティスト側が「今作が今までで一番ヤバイ」と言っているのを聞いてしまうと、聴き手側のハードルが上がってしまい、その期待を超えることが難しくなることも多い。

んだけど。

そういう常識を毎回、木っ端微塵に粉砕してしまうバンドがいる。

Mr.Childrenである。

ミスチルもまた、アルバムリリースのタイミングで「過去最高」の煽り文句を謳うことが多い。

新しいアルバムとなった「SOUNDTRACKS」でも、そういう言葉がいくらか散見された。

ただ、ミスチルはもうキャリアが長いバンドだし、名盤と言われるアルバムを過去にたくさんリリースされたバンドである。

いまさら「過去最高」と言われても・・・みたいなことを思われる可能性だってあるわけだ。

実際、自分は期待と不安を入り混じりながら、Mr.Childrenの「SOUNDTRACKS」を聴くことになった。

本当かな・・・・という気持ちがあったから。

で、思ったのだった。

「過去最高」の言葉、こいつは伊達じゃねえぞ、と。

本編

SOUNDTRACKSの良さについて

「重力と呼吸」以後のミスチルはバンドであることを剥き出しになった印象を感じることが多い。

ミスチルは長い間、小林武史をプロデューサーに招いて作品を作ってきた。

そういう背景もあって、バンドサウンドよりも鍵盤の音やストリングスの方が印象的な楽曲が多いバンド=ロックよりもポップ、みたいなイメージが付いていたバンドなのかなーと思うのだ。

もちろん、ロック色の強い歌も歌ってきたが、それでもここ一番の楽曲はバンド以外の音を積極的に取り入れた楽曲が多かった。

だから、ポップのイメージが強かった。

しかし、小林武史とタッグを組むことをやめて、新しい形で音楽制作に勤しんだミスチルは、バンドの殻をどんどん破ることになる。

「重力と呼吸」のタイミングでは、ロック・バンドとしてのミスチルをどかーんと提示した。

少なくとも、自分はそのように感じたのだった。

それを好きとるか嫌いととるかは個人の好みだと思うけれど、これだけのキャリアを持つバンドがまだまだ攻めにきている感じに、自分なんかはヒリヒリしたものだった。

もともと、ボーカルの説得力は桁違いのバンドだったわけで、そのバンドがある種の躍動感を全開にするんだから、良くないわけがなかったのだ。

そんなロックモードになったミスチルが、「バンドであること」を強く志向しながらもポップであることに向き合ったのが「SOUNDTRACKS」なのではないか、と勝手に思っている。

自分の主張やメッセージ性を研ぎ澄ますのではなく、あくまでも主役は音楽を聴いている一人ひとりであるあなた。

そういうミスチルならではの眼差しが「ポップ」という形に現れた作品なのではないかと思っているし、だからこそ「SOUNDTRACKS」というタイトルがタイトル以上の意味を持つ。

そんな気がする。

「Brand new planet」は、まさしくそういうミスチルならではの名曲だと思う。

万人に愛されるようなキャッチーかつ求心力のあるメロディー。

歌のテンポとかリズムの部分ではなく、メロディーで人の心を撃ち抜くような力強さがある。

メロディーの良さが最高級に際立つのは、シンプルそうに見えて一切「ぬるくない」ミスチルの楽器隊の演奏があるからこそ。

なにより、歳を重ねても高音が一切衰えない、むしろその歌声に磨きがかかっている体力底なし沼のようなボーカルである桜井の歌声があるからこそだと思う。

「王道」という言葉のその上をいくような感動。

他のバンドがいくらミスチルっぽいをやったとしても、なぜミスチルを超えることができないのか。

その答えが全て詰まったような一曲。

そのように感じる。

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DANCING SHOESが良い

アルバムの冒頭は「DANCING SHOES」という歌である。

この歌が自分はすごく好きで。

「Brand new planet」とは対照的で、ちょっと独特な雰囲気を持った一曲で、ミスチルのロックバンド性を知らしめるような一曲だと思う。

なんというか、こういうアレンジのときのミスチルが持つ無敵感が、本当に凄いんだよなーと思うのだ。

メロディーが王道とかそういうんじゃなくて、全てにスキがないというか。

逆に(リスナーの)心にスキがあればそこから付け入って、一気に虜にしてしまうような「ヤバさ」を持っている。

端的にいえば、鈴木のドラムが暴れている歌が好きという話だったりするんだけど。

ミスチルの凄さ

ミスチルの歌って、楽譜的に起こしたところで、必ずしも「超人的なもの」にはなっていない。

もっと凄腕で超絶テクニックのバンドアンサンブルで、楽譜に起こすと激ヤバなことがすぐわかるロックバンドって他にいると思うのだ。

つまり、ミスチルって表層的な部分であれば、マネができないバンドではないと思うのだ(カラオケでたくさん歌われているのだって、「マネできない」レベルではないからこそだと思うし)。

でも、ミスチルの持つラスボス感と対抗できるような説得力を持つバンドは、そうはいないと思う。

その理由を、一般的なリスナーへの説明するのであれば、桜井のボーカルが優れているからだ、みたいな話になるのかもしれない。

それは、ひとつの真実ではあるだろう。

しかし、それが全てではない。

「Documentary film」をはじめとする「SOUNDTRACKS」の楽曲を聴けば、桜井のボーカルが凄いから、だけでは説明がつかないドキドキ感を覚えると思うのだ。

バンドの間奏でもグイグイに引き込まれるし、このバンドが音を紡ぐからこそ圧倒的な世界観を生み出すことができていることがわかると思うのだ。

このアルバムは、海外でレコーディングをしたという話らしいが、そういう音へのこだわりもこのアルバムはずば抜けている。

というか、音のひとつひとつにこだわっているからこそ、桜井の歌声がどこまでも輝いている、という言い方ができると思う。

それをシンプルな言葉にすれば「ラスボス」とか「絶対的」とか、そういう単語に落ち着いてしまうのだ。

まとめ

結論。

「SOUNDTRACKS」はヤバイアルバムだ。

過去最高傑作、という言葉も伊達じゃないという話。

やっぱり、このバンド、凄いよなーと改めて思ったのだった。

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