序章:「ひらく」が切りひらくJO1の新境地

JO1の新曲「ひらく」は、これまで彼らが展開してきたダンス主体のパフォーマンス楽曲とは一線を画す、内省的で情感豊かなバラードである。

っていうくらいに、これまでのJO1の楽曲とは異なる味わいを感じた。

ずっと甘さ強めのカフェオレを飲んできたけど、ちょっとビター強めのカフェモカにチェンジしたような感覚。

クレジットを見ると、作詞・作曲には秦 基博の名前が。

なるほど、どおりでバラードの濃度が強烈になるし、JO1のハーモニーの美しさが際立つわけである。

この記事では、そんな「ひらく」の感想を書いてみたいと思う。

本編

サウンドと歌詞が織りなす情感の世界

JO1といえば、これまで「Born To Be Wild」や「SuperCali」といった、ダンスとパフォーマンスを重視した楽曲のイメージが強い。

「BE CLASSIC」も切れ味鋭いビートと、クラシックのエッセンスの融合がポイントになっていたし。

でも、「ひらく」では、JO1の新境地を大胆に見せてくれる印象がある。

とにかく歌の清らかさと、ハーモニーの美しさが際立つ、上質なバラードであるからだ。

サウンドに目を向けても、ピアノやアコースティック・ギターの旋律で淡々とサウンドを紡ぐ、シンプルながらも深みのあるアレンジになっている。

秦 基博だからこそという言わんばかりの上質なバラードである。

当然ながら、秦 基博といえば、「鱗」「ひまわりの約束」など、これまで情感豊かで柔らかく響くバラードソングを数々手掛けてきたわけだが、「ひらく」を聴くと、見事に秦 基博の個性とJO1が持つ魅力が美しく溶け合っていることを実感する。

ハモるべきところでは綺麗にハマっているし、なんならそのハモリが軸になって歌が展開しているのが特徴。

多人数グループがバラードを歌ったとしても、あまりハモリはしないケースも多い中で、JO1はボーカルが生み出す和音の輝きをいたるところで響かせてくれる。

その結果、ボーカルとしての味わいが際立ち、サウンドと優しく溶け合いながら、サビではストリングスのテンション感と呼応するように、ドラマチックに歌を響かせていく。

特にJO1の場合、メインを担当するボーカルがいて、サブで楽曲を彩るボーカルがいる布陣だからこそ、歌の中で生まれる深みもまた独特なのである。繊細にメロディーを紡ぎながら、バラード調だから生み出せる包容力でもって、柔らかさと力強さをもって歌を展開させていくのだ。

楽曲を聴いていると、アレンジとボーカルの調和も素晴らしいと感じる。

コード進行やサウンドの意匠もシンプルにするべきところはシンプルにすることで、「淡々と歌う」と「ダイナミックに歌う」の変化が滑らかに伝わるようになっている。

歌全体の奥行きが生まれ、JO1の個々のボーカルの美しさが際立つ構成になる。

歌詞の構成に合わせて、ボーカルの表情やトーンが変化していくから、歌詞の中で描かれる「花」の成長に合わせた心理描写も丁寧に受け止めることができる。

なにより歌詞を丁寧に追える構成だからこそ、歌詞の「ひらく」の意味が歌の最後で、ばちりと繋がる構成になっているのも見事。

映画主題歌ということもあって、作品の世界観にも寄り添った歌になっていることが、歌の雰囲気からも想像することができる。

歌詞の表現と、ボーカルの存在感

「ひらく」の歌詞を詳しく見ていくと、秦 基博らしい詩的な表現が随所に散りばめられている。

冒頭から「双葉」「蕾」という単語を効果的に使用して、植物の成長過程を人生の成長に重ね合わせるような比喩を聞くことになる。

目に見えるものをフレーズにしながら、目に見えるものとは別のものを描くという描き方が絶妙で、これが「ひらく」の世界観を確固たるものにしている印象。

そこから「光」「影」「雨」「空」のような描写を巧みに行うことで、感情や登場人物の成長を丁寧に描くようになっている。

こういう描写を丁寧にしたフレーズだからこそ、JO1の歌の存在感がより際立つとも言えるし、繊細な歌詞だからこそ、JO1の優しいボーカルとの組み合わせが見事だとも言える。

映画主題歌の場合、作品の中で歌がどう機能するのかがとても大切になるが、歌の世界観においても、ボーカルの存在感においても、そこを丁寧に汲み取りながらアウトプットしている印象を受けるので、より「ひらく」という歌が味わい深く響くことになる。

こういう点も、JO1のボーカルとしての素晴らしさを実感するひとつの視点だと思う。

まとめに替えて

そうやって「ひらく」の世界に触れると、色んな発見と驚きを味わうことができたのだった。

秦 基博とJO1がタッグを組むからこその感動。

ダンスに定評があるJO1が、まっすぐにボーカルやハーモニーで魅了する楽曲を歌うからこその感動。

JO1というグループだからこそ描けるバラードソングの感動。

素朴なテーマで、丁寧に歌詞を描写した歌だからこその感動。

色んな発見と驚きを、JO1の「ひらく」は与えてくれた。そんなことを思う、そんな次第。