ポルノグラフィティの「風波」の話。歌詞、ボーカル、サウンド、メロディーに触れて

ポルノグラフィティの「風波」の個人的なレビューをしてみる

ポルノグラフィティの「風波」は、2025年11月19日にリリースされたシングル「THE REVO」のカップリング曲。失恋をテーマにした切ないバラード。でありながら、情感溢れるボーカルと、「あの夏の日」というワードを入れ込むことで、どこか秋冬の情景を感じさせるメランコリックな装いが印象的。今のポルノグラフィティの成熟した表現力が光る印象だ。ということで、この記事ではそんなポルノグラフィティの「風波」の感想を書いてみたい。

メロディー軸の話

「風波」のメロディーは、ゆったりとしたテンポで紡がれるバラード構造が基調となっている。イントロからピアノの繊細なアルペジオが流れて、そこからストリングスをはじめ絢爛なサウンドが響く。イントロの尺は25秒。長すぎもせず、短過ぎもしない絶妙な塩梅だ。ボーカルが入ると、最初はマイナースケールの穏やかな上昇ラインでメロディーが紡がれる印象。優しいトーンのボーカルで、時にファルセットも織り交ぜながら、しっとりとでも情動の溢れるボーカルアプローチで、美しく描かれたメロディーに命を与える。メロディーそのものも風であり、波であるようなそんな美しさを解き放つ。

キラキラした水平線に僕らの壊れた明日を浮かべ
舳先を空に沈んでいくのを手を取り眺めた

のCメロの部分では、がらっとメロディーの雰囲気を変えて、歌の物語が大きなクライマックスに向かう予感を感じさせる。なお、Cメロが終わったあとのギター・ソロの流れと尺も絶妙。サウンドに割く時間が必要な分だけ存在することで、メロディーが持つドラマ性も際立っているのだ。そして、バラード調の楽曲だからこそのインパクトのあるサビで感情を揺さぶるように歌のインパクトを与える。こういうタイプのメロディーラインを岡野昭仁が歌ったときの破壊力は半端ない。改めて、そのことを感じる。

サウンド軸の話

サウンド面では、ポルノグラフィティのロック色を抑えめにしつつ、この楽曲のトーンに合うドラマチックなサウンドを前面出した印象。ピアノ、ストリングスが躍動していき、ベースは控えめ、ドラムはゆったりとしたテンポでさりげなく歌全体を支える。アコースティックギターのストロークも必要な場面で挿入されることで、歌の景色を明確なものにして、クリーンながらもメリハリのある音像を作り上げる。

ギターが果たすアルペジオであったり、必要に応じてソリッド色のあるカッティングで広がりを作っていくギターのアプローチも秀逸。緻密ながら過密ではないアプローチで、失恋がテーマになった歌詞の物語の存在感を際立たせることになる。

ボーカル軸の話

ポルノグラフィティの二人体制を活かしたボーカルが、「風波」の魅力を最大化させている。岡野昭仁のボーカルは、メロパートでウィスパー調の柔らかなトーンで始まる。そして、歌の展開に応じて巧みにギアを入れ替えていく。滲む孤独感、胸に残る強い感情、おぼろげに響く印象的なフレーズの数々、そういったものを細やかなニュアンスのボーカルで立体的にしてみえるのだ。

サビでは、メインボーカルに対してハモリをいれてメロディーに厚みを生み出す。そして、ここぞのタイミングでのファルセット・・・。魂のように叫んでいるとも言えるし、消えうるような儚げなボーカルで切なさを演出しているとも言えるし、このバランスがあまりにも巧みすぎる。長いキャリアを重ねて表現力を磨き上げてきたポルノグラフィティだからこその境地とも言える。

マジで、ハーモニーが素晴らしい。

歌詞軸の話

歌詞は、新藤晴一。いつもにも増して、小説的というか文学的というか、メタファーも巧みに活用しながら芸術的に言葉を組み立てていく。「風波」というタイトルのワードチョイスも秀逸。でありながら、まっすぐに伝えるべきフレーズはまっすぐに残しているのもポイント。

「僕はペーパーナイフ」というフレーズがある傍らで、「どこに帰っていったの」という直接的なフレーズも差し込むバランス感。回想の描写と内面の表出のバランスも見事で、豊かな語録を多々感じることができる。ストーリー性も感じるし、シンプルに歌詞の表現だけでも楽しめるあたりが、ポルノグラフィティの真骨頂だなーと感じる。

まとめに替えて

つまり、岡野昭仁と新藤晴一のタッグ、強すぎるなーと改めて感じたという、そういう話。