前置き
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一度でいいから聴いてほしい。今のポルノ、本当にすごい良いから。
事あるごとに、Twitterのフォロワーさんにそう教えてもらっていた。
んだけど、ぶっちゃけ、音源だけを入れて、さらーっと聴き流している自分がいた。
イヤホンに音楽は流すんだけど、ちゃんと聴いていないというか。
今にして思えば、あるタイミング以降のポルノの作品に関しては、そういう聴き方をするようになってしまっている自分がいた。
聴いているんだけど、聴いていないっていうそんな状態。
当然歌詞カードは見ないし、クレジットだって一々確認しない。
だから、ついつに口を開けば、どっぷり作日を聴いたわけでもないのに、3人組のポルノが志向だという論調のことを書いてしまう。
でも、これだけ、周りの人が今のポルノはヤバイヤバイと勧めてくるんだから、きっと本当にヤバいんだろうし、そこで得られる音楽体験はヤバいんだろうなーとも思っていた。これだけ勧めていいるんだから、せっかくだしちゃんと聴かねば!と思ったのは、ほんの数ヶ月前。
で、聴いた。
本編
最近のポルノを聴いてみた
改めて過去のアルバムを全部聞き直しての結論としてあるのは、やっぱり「ロマンチスト・エゴイスト」と「foo?」は、最強の2強だよねえ、ということ。
アルバムとしての完成度というか、そのアルバムが持つ熱量みたいなものは、やっぱりこの2作か強いなーと思う。
が。
じゃあ最近のアルバムは良くなかったのかといえば、全然そんなことなかった。
すげえわ。ポルノグラフィティ。
マジでマジで。
そう思えるのである。
アルバム全体としてみたら、好きな曲と嫌いな曲の差が激しい。
例えば、初めて本間さんの作曲の歌が一曲も収録されず、全作作詞作曲はメンバー自身が担当した『∠TRIGGER』なら、晴一ならでは女性目線の歌詞と、NAOTOのヴァイオリンが冴えわかる「瞳の奥をのぞかせて」は好きだけど、その後の「ネガポジ」はあんまり好きになれないとか。
東日本大震災後、初めてリリースされた『PANORAMA PORNO』はアルバム全体のバランスが取れていて、かつ、超大作となるロックバラード「光のストーリー」は聴いていて、うおおおおってなるけれど、一方で「君は100%」はシングル曲なのにちょっときついなーセンスが古いなーっていう印象だったりで。
そんな感じで、アルバムの中でよく聴く歌と聴かない歌で大別されるんだけど、総じて言えるのは、アルバムが進むにつれての進化がすげえなーってところ。
プレイヤーとしても、クリエイターとしても、アルバムが新しくなればなるほど、そのセンスも質もどんどん研ぎ澄まされていく。
言いたいことが全然つかめない作詞家としての新藤晴一の言葉選びのセンスは、年を重ねるごとに神がかっているし、昔は滑舌が良くて一定の表情でハキハキと歌うところが良さだった岡野昭仁のボーカルは、びっくりするほど表情豊かになり、特にファルセットの使い方がうまくなったなーと感じる。
そもそも、なぜアルバムの中で好き嫌いの曲ができちゃうのかといえば、それはポルノの楽曲の幅が広すぎるからだと思うのだ。
ポルノって、バンドというカテゴリーでありながら、アレンジやアプローチの幅は、鬼のように広い。
例えば、「アゲハ蝶」とか「ジョバイロ」とか「オー!リバル」みたいなラテン系の曲を歌うこともあれば、「シスター」とか「黄昏ロマンス」みたいに、エレキギターから距離を置いた曲を歌ったりすることもある。
かと思ったら、「ネオメロドラマティック」とか「THe DAY」みたいにバッチバチにエレキギターをかき鳴らすアゲアゲなロックチューンもあれば、ピアノやオーケストラが印象的な、壮大なバラードを歌うこともある。
テイストでいっても、爽やかなナンバーもあれば、ダークな歌や、アダルトな匂いの歌もある。
「Mugen」みたいにメロディーのノリと歌詞の方向性が全然違う歌も多いし、「Sheep 〜song of teenage love soldier〜」みたいに、雰囲気も歌詞もなんだか可愛らしい感じの歌もある。
書いているだけで取り止めがなくなってきたけど、言いたいのは、メロディーやサウンドだけではなく、そこに当ててくる歌詞のバリエーションも豊富だということ。
ほんと、そのパターンを数字化してしまったら、きっとカオスなことになると思う。
なぜこんなことになるのかといえば、ポルノが二人組のバンドであり、サウンド構築が自由にできるということ。
また、それぞれが作詞作曲を行うことができて、かつそれぞれのアイデアが異常に豊富であるということ。
近年は曲によってアレンジャーも変えるので、よりサウンドに対して柔軟な対応をすることができているし。
そんな幅広いポルノなんだけど、凄いのは、どの曲を聴いても、きちんとポルノグラフィティになっているということ。
これは、岡野のボーカルの存在感の強さが大きいのだと思う。
だって、グログロなドラマ主題歌からポケモンまでタイアップしていて、かつ、そのタイアップ曲全てに自分たちのカラーを滲ませまくっているバンドなんて、そうはいないもん。
聞き流している時には気づかなかったけれど、「ブレス」がポケモンの主題歌かよって思ったもん。いや、わかんないって。良い意味でポケモンのユーザーに媚びてなさすぎやんっていうね。
そんな。変幻自裁で幅広いポルノに、昨年、一つの金字塔的な作品が生まれた。
それが、「カメレオン・レンズ」という楽曲である。
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カメレオン・レンズがマジで良かった
この歌が良いなーと思った理由はいくつかある。
ひとつは、イントロ。
イントロの作り込みが、まるで現代的R&Bのそれで、その音を聴いた時点で「うおっ!すげえ!」って思ったのだった。
で、そっから打ち込みが入り、メロが進むごとに必要な音が絶妙なタイミングで少しずつ足されていく。
サビではドラムの音が入ってきたり、間奏ではきっちり聴かせるギターソロが入ってきたりと、曲の展開としても本当に怒涛というか、1曲で数曲分の魅力を孕んだアレンジになっている。
でも、決してうるさくないのだ。
その足し方が絶妙なのだ。
多すぎもせず、少なすぎもしないのだ。
場合によっては、ここで音を足しすぎて高カロリーになる恐れもあるわけだが、ポルノのこの歌は、本当に絶妙な塩梅で着地している。
何よりもすごいと思ったのは、岡野昭仁の歌の乗りこなし方。
マジで、きちっとこの音に乗りこなしているなーって思った。
前述したように、ポルノの歌って、他のバンドに比べてアレンジの幅が広い。
血の気の滲みそうな情熱的なナンバーを歌うかと思えば、シックで大人でビターな歌も歌う。
で、近年の岡野は、サウンドに合わせて、完璧な「声」でその歌とサウンドをのりこなしていく。
「カメレオン・レンズ」の場合は、イントロとAメロ部分、あるいはAメロとBメロと、メロ部分とサビでサウンドでサウンドの構築の仕方がまったく違っている。
岡野昭仁はそのサウンドに合わせるように声のトーンを変えていき、自身のボーカルもまるでカメレオンのようにクルクルと変化させて、その楽曲の世界観を完璧なものにしていく。
その変化の仕方が素晴らしいなーと思う。
また、岡野昭仁は声の伸ばし方(あるいはかき消し方)に、特にボーカルとして魅力が詰まっていると思っていている。
「カメレオン・レンズ」のミディアムなテンポが、そんな岡野昭仁のボーカルの良さを完全に引き出している。
で。
メロディー展開が岡野昭仁のボーカルの魅力に見事にマッチしているから、てっきりこの歌こそ岡野昭仁作曲かと思ってみてみたら、晴一作曲ということをあとで知った。
逆に「ブレス」はかなり鬼畜なメロディーラインで、ブレスがきつそうだから、きっと晴一作曲だと思ってクレジットを見直したら
作曲:岡野昭仁
いや、ほんと下記記事で岡野作曲の歌は簡単な歌とか言って、本当にごめんなさいという気持ちになる。
※まあ、この記事がよくないなーと思うのは、ポルノって基本的にどの歌も難しいのに、岡野の歌は簡単であると言い切ってしまったところなんですけどね。これは単純に良い書き方ではなかったなーと反省しています。
ほんと、この歌のブレスのする余地が少なさ。
ライブではどう披露しているんだろうと不安になるレベルである。
しかも、唐突にファルセットの部分を持っているので、歌い方もかなりテクニカルなものを必要とされる。
ちなみに、この歌もアレンジがシンプルな分、ボーカルの魅力が際立つ歌になっていて、より岡野昭仁のボーカルのウマさと気持ちよさが堪能できるようになっている。(かつ、きっちり晴一のギターも存在感が出るようなアレンジになっていて、その辺も流石だなーと思う)
まとめ
で、ポルノと言えば、晴一の歌詞も大きな魅力のポイントとなっていて、ここで紹介した曲にもたくさんのキラーフレーズがあるんだけど、この辺を書くとマジで10000字レビューになるので、今回は割愛しておく。
ただ、改めて聞き直して思ったこと。
それは、ポルノよ、とんでもねえバンドひ進化したなーってこと。
元々実力のある二人だったから僕はあんまり気づいてなかったんだけど、新しい曲を聴けば聴くほど岡野昭仁のボーカルが上手くなっていると実感する。
最近は晴一が歌詞に英語を放り込むことが多いこともあって、メロディーの中で英語を輝かせる発音の仕方にも磨きがかかっているなーと聴いていて、感じた。
打ち込みにも恐れることなく対応しているし、色んな国の音楽のエッセンスを取り入れ、それをバンドに落とし込むこともできる。
そんなバンド、日本にもほとんどいないよなーって思う。
また、両メンバーともに作詞作曲を担当できて、曲によっては作詞と作曲を入れ替えることもあって、そんな柔軟な対応ができるところも凄さだなーと思う。
ほんとさ、自分が中学生から好んで聴いていたバンドの多くは、作る曲に関していうと、どうしても手グセのようなものが見えてきがちで。
アレンジを取り除けば、どの曲も似たり寄ったりやん。まあ、好きやけど。って思うこともあるのだが、ポルノには、ほとんどそれがない。
少なくとも、2018年の新曲はどれも意欲的な挑戦作だなーと思ったし、その挑戦が見事なまでにバチバチにはまっているように感じた。
多くの方が、今のポルノはマジでやばいから聴いてほしいといった意味が、改めてわかった気がした。
と、ニワカながらに、そんなことを思うのでした。
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