「踊らせる」に振り切ったときの攻撃力が最強すぎるKEYTALKの話

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2023年の昨今、どんどん若手バンドが台頭してきている印象だ。

特に中学生や高校生がハマっているバンドの並びをみていると、だいぶ世代交代してきたなーと感じる。

2010年代前半の台頭したきたようなバンドはもう「若手」ではなく、「中堅」になっていることを実感してきたりもする。

ただ、「中堅」になりつつあるバンドが全て同じ道を辿るのかといえば、そうではなく、ふたつの道に分かれている印象を受ける。

あの頃の楽曲の輝きが強すぎて、今の曲は正直そこまで刺さらないよな・・・と感じるバンドと、いや〜どんどん過去曲を更新するし最新曲の攻撃力エグすぎるだろう・・・というバンドの二極化に分かれるイメージなのだ。

感覚的に、自分たちの武器をどんどん研ぎ澄ませながらも、最適にチューニングしているバンドほど、最新曲の攻撃力が高くなっている印象を受ける。

KEYTALKの新曲もまた、最新曲の攻撃力がエグすぎるなーと感じる自分がいたので、この記事ではそこを焦点にしながら、話を進めてみたい。

本編

「君とサマー」の話

まず、最初に話をしたいのが、「君とサマー」。

この歌は、作詞を首藤義勝と寺中友将と小野武正の3人で手掛け、作曲は首藤義勝が手がけている。

夏感のある、軽快なKEYTALKらしいダンスロックである。

ただ、 この”ダンスロック”ってキモになる言葉だよなーと思う。

というのも、昨今も色んなバンドが”ダンスロック”というカテゴリー内でのアプローチを行っているし、2022年の音楽で言えば、SEKAI NO OWARIの「Habit」みたいな楽曲を連想する人も多いかもしれないからだ。

TikTokでバズること=売れるに直結している昨今、意図的に踊りを誘発させるビートやアレンジを楽曲に落とし込むバンドも増えているわけだ。

ただ、KEYTALKのダンスロックって、変な言い方になるかもしれないが、安易にTikTok的フォーマットに落とし込んでいない感じがするし、それがいいよなーと思う。(実際にTikTok側でどうなっているのかは知らないが)

例えば、ダンスロックの場合、マニピュレーターが作り込んだ音をバンドサウンドに混ぜたり、DJの音を組み合わせることでノリノリのビートにすることも多い。

でも、KEYTALKの場合、そういうアプローチを用いることで”ダンス”感を生み出すことはしない。

あくまでもバンド的な人力技でノリノリなビートを生み出しているし、確かに軽快なリズムがウリにはなっているが、本質はバンドアンサンブルが生み出すかっこよさがキモになっていることが多い。

特に小野武正のギターフレーズは印象的なものが多く、イントロであれ間奏であれ、個性的で耳に残るメロディーラインをギターで響かせることで、KEYTALKらしい音のイメージを聴く人に印象づけていく。

「君とサマー」でも、そういった技法がたぶん持ち込まれている。

さらには、首藤義勝の楽曲らしく、サビに至るまでの流れがUSJのハリウッド・ドリーム・ザ・ライドよろしく、目まぐるしく展開が変わる流れが痛快だし、単に楽曲の構成が変則的のみならず、首藤義勝と寺中友将がツインボーカルを取ることになって楽曲にメリハリが生まれているのも特徴である。

比較すると、ちょっと優しめなボーカルの首藤義勝と、ちょっとオラオラ感のあるボーカルの寺中友将のコントラストが絶妙で、ここの切り替わりも楽曲の躍動感を生む大きなキモになっている。

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「狂騒パラノーマル」の話

一方、「狂騒パラノーマル」は作詞が八木優樹、作曲が首藤義勝になっている。

作曲は両方とも首藤義勝であるが、改めてこの人のソングライティングのセンスに脱帽することになる。

「君とサマー」も「狂騒パラノーマル」も爽快感が高めで、ビートの流れが心地よい歌である。

ただ、両曲を比較すると、「君とサマー」は明るさ濃度が100%な感じがして、「狂騒パラノーマル」はどこか哀愁も滲ませており、明るさ50%、哀愁50%な感じがするのである(歌詞の内容というよりも、楽曲を聴いたときの手触りの話)。

首藤義勝が生み出す楽曲の場合、明るさに突き抜けた楽曲を作ることもできるが、どこか哀愁を落とし込んだ楽曲を生み出すこともできる。

で、この辺りがKEYTALKの音楽の幅を広げる要因のひとつになっているように感じる。

さらに言えば、より哀愁に焦点が当たっている印象を受けるので、首藤義勝と寺中友将のボーカルが切り替わる際のメリハリが効果的に響くのである。

もうひとつ付け加えておきたいのが、こういう哀愁感の強い歌でありながらも、爆裂的なノリノリ感を生むうえで、八木優樹の細かなリズムアプローチの存在が大きいこと。

Aメロ、Bメロ、サビ、Cメロのそれぞれでどういう風にビートを刻んでいるのかを注目するだけで、いかにドラムが果たしている役割の大きさを実感することになる。

裏拍でシンバルを刻んでいるかと思えば、合いの手のようにタムを打ったり、ここぞのタイミングでは半分の拍でスネアを連続で響かせたり・・・。

細かなアプローチによって、KEYTALKらしい心地よい高速ビートに命が吹き込まれていくのである。

まとめに替えて

要は、2023年のKEYTALK、攻撃力が最強すぎるよなーという話。

キャリア的には中堅の域へと進みつつあるが、あの頃と変わらない躍動感を持ち合わせつつも、今のキャリアだからこその”余裕”感があるからこそ、より最強になっているかなーと思う、そんな次第。

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