BUMP OF CHICKENの話
変わったものについて
人によっては、BUMP OF CHICKENは<変わったバンド>だと揶揄されることがある。
特にデビュー当時からバンドを追いかけていた人は、そういうことを言いがちだと思う。
まあ、言いたくなる気持ちもわからなくはない。
昔は青臭さ感がすごくあったし、全てをむき出しにしているようなヒリヒリ感があったから。
MCだって尖りまくっていたし。
ちなみに、尖っていた時代のエピソードはネットでググれば色々と見つけることができる。
言ってしまえば、BUMP OF CHICKENは尖ったバンドだった。
そういうイメージが強かったわけだ。
しかし、気がつくと、わかりやすい牙を隠していき、丸くなっていき、ある種の<若返り>をはかっていく。
「ベイビーアイラブユーだぜ」を歌詞にしたためた「新世界」は、デビュー当時のBUMP OF CHICKENでは考えれれないようなきらめきに満ちた楽曲である。
確かに、こうやって昔の曲と今の曲を比べると、変わっていない、とは到底言えない。
でも、近年のBUMP OF CHICKENは、それを受け入れたうえで、今だからこそ言える当時の人たちへのメッセージを言葉にすることもある。
「話がしたいよ」もまた、そういう歌なのではないかと思っている。
この歌が想定している「君」が誰なのかは、明示されない。
しかし、<あの頃のファン>を代入しても成立するフレーズが並んでいる。
当時は言葉が届いた相手が、もう言葉の届かない距離にいってしまったことを歌うこの歌は、色んな示唆に飛んでいるように思うわけだ。
そのことをもっと具体的に、はっきりと言葉にしたのが「流れ星の正体」だと思う。
この歌の最後のセンテンスは、近年のBUMP OF CHICKENの中でも屈指のものだと自分は思っていて、こんなにもはっきりとあの頃のファンを視座に入れながら言葉を紡いだ歌もないのではないかと思う。
この歌は、変わってしまうことを肯定的に包み込み、変わってもなお輝き続けるものについて歌う構成になっている。
いずれにせよ、この歌が響くということは、それだけ<変わった>という現実をきちんと突きつけるとも言える。
変わらないもののについて
当たり前だ。
誰だって、月日を重ねたら変わるに決まっている。
体力的になのか、性格的になのか、はたまたもっと別のことなのかはわからない。
でも、ずっと同じということはありえないわけだ。
自分が変わらなくても周りは変わっていくし、その変わった環境に影響を受けて自分も変わるということもありうるだろう。
BUMP OF CHICKENもまた、色んなことを経験していくなかで、少しずつ変わっていった。
そして、変わることを受け入れたからこそ、今もなおたくさんの人に支持されるバンドになっているのだと思う。
しかし。
変わったことに目がつくことが多かったからこそ、改めてこのバンドの変わらなさを自覚することも増えていった。
最近、そのことを強く思う。
そのひとつが、メンバーのことだ。
バンドによっては、メンバーが変わるバンドもいる。
そして、メンバーが変わることで、良くなるバンドだってたくさんいる。
是とか非の話ではなく、人同士で構成されたバンドにおいて、そういう変化はありふれた話であるということだ。
でも。
BUMP OF CHICKENにおいて、そこだけは変わらないバンドなんだなあということを実感したのだ。
もっと言えば、メンバーが変わらないといけない事態がきたとしたら、きっとBUMP OF CHICKENはBUMP OF CHICKENとして活動しないんじゃないかなーと思うのだ。
少なくとも、誰かを招くことを意図的に選ぶようなことは、ありえないと思う。
それだけ、このバンドはこの4人でしかないといけない、確かな何かがある。
この4人のバランスだからこそ成立するものが確かにある。
BUMP OF CHICKENは、この4人でしか成立しないし、そういう変わらなさをずっと保ったバンドなのだ。
そのことを改めて思ったわけだ。
BUMP OF CHICKENは三人で活動することになった。
でも、それはBUMP OF CHICKENが4人のバンドであり、いつか改めて4人で活動するために行った選択だったことを痛感する。
この4人だからこそ、BUMP OF CHICKENなのだ。
その根本だけはずっと変わらない。
だからこそ、BUMP OF CHICKENはどれだけ変わろうとも、BUMP OF CHICKENらしさがどこまでも内在しているんだろうなあと思うのだ。
ずっと仲良しとか、幼馴染とか、そういうことすら越えたところにある、この4人にしかない輝き。
それをずっと大事にしてきたバンドだからこそ、いつまでも変わらない輝きを放っているのだと思うわけだ。
まとめに替えて
そういや、トータルテンボスの息子である大村晴空が、将来的にBUMP OF CHICKENみたいなアーティストになりたいと口にしているのをみたことがある。
自分より15歳以上離れた子供にもBUMP OF CHICKENの音楽が刺さっている。
10代の音楽リスナーにとっても、<青春>なバンドなのかーと考えると、凄いことだよなーと思う。
ノスタルジーの対象になるのではなく、20年以上、常に若い音楽リスナーにとっての青春でありうるバンドになっているのだから。
そして。
きっとここから、BUMP OF CHICKENはさらに変化をしていくのだと思う。
でも、ここからの変化はもっとワクワクと暖かさに包まれた、そんなものになるんじゃないかと思う。
だって、この4人じゃないとBUMP OF CHICKENじゃないという結びつきは、きっと前よりも強くなったように思うから。
今はその変化が、楽しみで仕方がない。
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