BUMP OF CHICKENの「なないろ」が最強スルメ曲な件

BUMP OF CHICKENが「なないろ」という楽曲を配信リリースした。

この歌は、5月から開始となるNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』の主題歌でもある。

主人公が気象予報士という仕事に向き合うドラマということもあって、「なないろ」では天気にまつわる言葉を散りばめている。

特に水たまりの描写は秀逸だよなあと思ったりして。

というわけで、この歌の感想を書いていきたいと思う。

本編

BUMP OF CHICKENらしい言葉の数々

「なないろ」は、NHK連続テレビ小説の主題歌である。

NHK連続テレビ小説の主題歌といえば、尺だったり展開に対する決まりも多いタイアップであり、楽曲を作るうえでの制約も多い(らしい)。

つまり、もっともタイアップとして綺麗な役割を果たさないといけないタイアップだったりするわけだ。

星野源の「アイデア」なんかはそれを逆手につかったアクロバティックな表現をみせたわけだけども。

さて、「なないろ」を聴いた感じでは、BUMP OF CHICKENもそのテーマに真っ向から組みいった印象を受ける。

というのも、楽曲の節々からドラマとシンクロするエッセンスを見出すことができるからだ。

天気予報士という仕事がドラマの核にあるということもあって、「晴れた朝」「昨夜の雨」「お日様」「水たまり」という天気を示す言葉を秀逸に使っているのがその証拠だ。

ただ、その中でもBUMP OF CHICKENらしいなあと思う要素はたくさんあって、そこが見事だなあと思う。

例えば、晴れと雨という対比を行って心模様を描く場合、

晴れ=喜び
雨=悲しみ

という安易な構図に持ち込むことが多い。

天気模様になぞらえて、上の式に当てはまるような感情表現をすると、なんだか詩人っぽい響きを獲得できる。

だから、上のような構図を取り入れるアーティストも多いわけだ。

だけど、BUMP OF CHICKENはそんなシンプルな構図から少し抜き出たところで言葉を積み上げている。

その証拠に、冒頭の「よく晴れた朝」に添える言葉が<一人ぼっちにされちゃうから>なのである。

<晴れ>という言葉を単なる希望の象徴にはしない。

むしろ、<晴れ>という言葉が持つある種のマイナスの側面を歌の中に忍ばせる。

さらに、ここがBUMP OF CHICKENの真骨頂だなあと思うんだけど、「お日様」に対しては<昨夜の雨の事なんか覚えていないような>という修飾語をつけているのだ。

希望の象徴になりそうなお日様に、軽薄なイメージを与えるのである。

その後、お日様ではなく水たまりに視点を与え、その水たまりが持つ存在感を言葉にしたためていく流れが鮮やかである。

何かしらの事象があったとき、表面に見える希望や光ではなく、その裏側にある傷や悲しみにスポットを当てて、その傷を認めたうえで、その傷こそがその人の力になることを歌ってきたBUMP OF CHICKENらしい眼差しである。

聴き流していくと何気ないフレーズにはなるんだけれど、こういうフレーズをタイアップまみれの歌詞の中に鮮やかに表現に落とし込んでいくのが凄い。

NHKのタイアップだろうと、自分の表現やメッセージに対しては誠実なのがBUMP OF CHICKENらしいなあと思うわけである。

その後も、BUMP OF CHICKENらしい表現は続いていく。

お日様は輝きを隠すものとして描いたり、水たまりこそキラキラの象徴として描いたり。

あるいは、僕と君の対比も鮮やかで、過去の自分=君、と捉えられる構図の中で二人称の言葉を持ち込むのも巧みだなあと思う。

楽曲の中で見える複数の構図を劇的なまでにBUMP OF CHICKENらしい表現に落とし込んでいくわけだ。

こういうレトリックはBUMP OF CHICKENならではだと思うし、「天気がテーマだから歌の中で心象風景を行う」といってもその表現方法が一味違うことを知らしめる。

なにより。

歌の中で鮮やかに痛みと輝きの両面を描くからこそ、<なないろ>という言葉の意味合いが多重的に響くわけだ。

色んな色が混じり合うからこそ虹になるし、色んな意味がまざるからこそ七色の光が美しくなる。

最終的に、今までBUMP OF CHICKENが歌ってきた数々の歌ともシンクロするようなメッセージを放つわけである。

単なるタイアップソングでもなく、BUMP OF CHICKENの楽曲の別枠的な存在でもなく。

いつものBUMP OF CHICKENの楽曲と同じ輝きを放っていて、そこがたまらなく愛おしいのである。

スルメ曲としての輝き

個人的に、この歌はさっぱりしている印象を受けた。

求心力のあるサビでぐっと惹きつけるわけではない。

鼻歌ができるような存在感のあるメロディーラインがあるわけでもない。

良い意味で、聴き心地がさっぱりしているのだ。

レモンをしっかりめにかけた唐揚げのように。

でも、魅力がないのかといえば、まったくそんなことはなくて、聴けば聴くほどに沼にハマる。

藤原らしい言葉と歌声が、そよ風のように優しい景色を作り上げていくのである。

その景色がたまらなく心地よくて、歌の世界に何度も埋没するのである。

バンドサウンドも過剰に存在感を持つのではなく、あくまでも楽曲が持つ景色を優先して描いている気がして良い。

どこまでもナチュラルな感じがして、それがより楽曲を最強のスルメ曲たらしめている気がするのだ。

あと。

間奏ではBUMP OF CHICKENの楽曲としては珍しくホーンセクションが加わっていて、それも良い。

今までの楽曲にはない新風を送り込んでいる感じがする。

トータル。

余計なものは削ぎ落とし、言葉が描く世界観を大切にしているのが伝わってきて、それが良たまらなく良いのである。

まとめ

今のBUMP OF CHICKENだからこその名曲が生まれた感。

でも、それは唐突に生まれたわけではなく、今までのBUMP OF CHICKENと変わらないものがあるからこそ成立しているところもあって、そこが愛おしい。

何にせよ、自分は「なないろ」という楽曲が最強のスルメソングだと感じたという、そういう話である。

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