前説

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2013年〜2014年くらいのタイミングで、バンドは四つ打ちばかりを選ぶようになった、みたいな記事を書いた。

ロックフェスで四つ打ちが流行ったことについて

まあ、フェスの人気ソングの多くが四つ打ちを採用していたのは間違いない。

わけだけど、じゃあそれまで四つ打ちは珍しいものだったのかといえば、別にそんなことはない。

この記事では、そこをひとつの引っ掛かりにして話をしていきたい。

本編

00年代のバンドシーンを語るうえで重要なロックバンド・BUMP OF CHICKENの出世作である「天体観測」だって、基本的には四つ打ちだ。

同じく、00年代のバンドシーンを語るうえで重要なロックバンドであるASIAN KUNG-FU GENERATIONの出世作「君という花」だって、基本的には四つ打ちだ。

つまり、バスドラムを一定間隔で音を鳴らす「四つ打ち」というもの自体は、バンドにおいてもそこまで珍しい手法ではなかったわけだ。

バンド史的に言えば、くるりの「ワンダーフォーゲル」辺りが重要な起点になる気がするんだけど、まあそれは置いておこう。

ここで言いたいのは、フェスで盛り上がることを意識するあまり、同じようなリズムパターンを刻むバンドがたくさん散見されるようになったことは否めないが、じゃあ「四つ打ち」ってその当時特有のものかといえば、別にそういうわけではない、ということだ。

量で比べるのはめんどうなので、やらないけれど、BUMPやアジカンという00年代育ちのバンドだって、四つ打ちはそこそこ使っているよ、という話だ。

つまり、2013年頃に四つ打ちが増えた(だけ)と捉えるのは、ちょっと違うように思うのだ。

ポイントなのは、四つ打ちをする意味合いが変わってきたところなのではないか?ということだ。

BUMPやアジカンと2013年頃の若手バンドとの違い

まず、BUMPやアジカンと2013年頃にフェスで勢いをつけてきた若手バンドとの大きな違いはなんだろうか?

端的に言ってしまうと、歌の速さだと思う。

これはKEYTALKのメジャーデビュー作品である。

下記のインタビューを読んでもらってもわかるが、速さやリズムに対して大きな狙いがあったことがわかる。

関連記事:KEYTALKのインタビュー記事

メジャーデビューだからこそ、速くて四つ打ちのわかりやすいやつを選択するという事実こそが、この時代の「売れ線」を感じさせるわけである。

パスピエなんかになると、四つ打ちをベースにするけれど、そこからどうやって自分らしいアプローチをするか?ということを考えて、リズムにオカズを入れてみたり、微妙にずらす箇所をいれてみたりとするんだけれど、それでも意図的に四つ打ちベースの早いリズムを取り入れていたことは間違いない。

そう。

この時期のバンドの多く(特にフェスを意識しているバンド)が、速さに対する優先度を大きくしていることがわかるのだ。

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高速化が意味するところ

とはいえ、単に高速という話ならRADWIMPSであったり、9mm辺りのバンドにだって参照点を見つけることもできる。

でも、2013年頃に躍進をしたバンドの高速化は、上記のバンドのそれとは少し性質が違うようにも思う。

個人的な感覚としては、2013年頃のバンドの“速さ”は、けいおん!をはじめとするアニソンや、ももクロなどを代表するアイドル、あるいはwowakaやハチなどを代表とする高速系ボカロなどの延長線上にあるように思うのだ。

むしろ、そこに影響を受けた“高速であることに心地を良さを感じる世代”がバンドをやるようになったからこそ、高速化することに対して抵抗なく高速化を選ぶことができた、という部分があるのかなーと思ったりする。また、演者だけでなく、リスナーの耳的な意味においても、そう言える。

また、高速化が意味する源流には、その当時のフェスの空気が大きく関係しているはずだ。

で、振り返ってみると、この時代、フェスシーンで若手として圧倒的に存在感を示していたのがサカナクションだった。

あるいは、元々は海外ロックをはじめ色んなサウンドを吸収しまくったthe telephonesもフェスで存在感を示していたが、音楽的な意味において、このふたつのバンドには共通点があった。

それは、意図的に自分たちの音楽が“ダンス的である”ことを主張していたということだ。

少なくとも、フェスのときの彼らはわざと、そういう立ち振舞をしていたように見える。

もちろん、“ダンス”に対するアプローチは両バンドでまったく違うけれど、意図的にバンドのロック性よりも、ダンス的であることを示すようにパフォーマンスしていたことは間違いない。

この、バンドやロックとダンスの距離が近くなるというところにこそ、四つ打ちの意味合いが変わってきたことの本質があるように思うのだ。

この時代のバンドがこぞって四つ打ちを採用したのは、言ってしまえば、バンドをダンス・ミュージックっぽくしようとしたからではないか、と思うのだ。

そして、バンドがお客さんを「踊らせる」ためには、どうすればいいのかを考えた結果として、演奏を速くするというところに行き着いたというわけだ。

ここがRADや9mmの高速化とは違うといえる所以なのである。

四つ打ちの意味するところ

2013年のロックを考えるうえで、重要なキーワードは「四つ打ち」や「高速化」である。

そのことは間違いない。

でも、その意味合いってなんだろうということまで考えると、そこに明確に現れるのは“ダンス“というキーワードなのだ。

だからこそ、BUMP OF CHICKENの「天体観測」の四つ打ちと、2013年頃に躍進してきたバンドの四つ打ちでは、異なるのだ。

この記事で言いたいのは、まさにそのことなのである。

まとめ

もちろん、KANA-BOONやグドモなんかは、ダンスとは少し距離があるのではないか?と思うリスナーも多いことだろう。

確かにフレデリックや夜ダンとは違って、特段ダンスを連想するワードを使わなかったし、彼らの場合はダンスロックという狙い自体はなかったかもしれない。

ここでポイントになるのは、ダンスロック系のバンドも、そうじゃないタイプのバンドも、同じリズムを取り入れ、同じノリ方(この時期のフェスシーンに限定するなら、モッシュやサークルということになろう)に収斂されていっていまった、というところなのかもしれない。

結果的にダンスロックという言葉ではなく、四つ打ちという言葉が残った背景は、そこにあるのかもしれない。

ダンス化を目指すバンドが増えたから四つ打ちが反乱したわけだけど、結果、ダンスを意識しない四つ打ちのバンドも、その波に飲まれていってしまうようになった。

つまり、本来は全然違う音を鳴らすバンドたちが、同じような消費のされ方をしてしまう(されてしまっていた)というところに、この時期のロックシーン、フェスシーンの危うさがあったのかもしれない、ということだ。

10年代という単位で振り返ると、この時期に「ノリ」が固定化されたからこそ、ある種の反動として、Suchmos以降、横揺れを意識させるバンドの躍進が目立つようになったのかなーとは思うけども。まあ、それはもう少し先の話となる。

というわけで。

フェスの話はもう少し続く。

やる気があれば、この話は、また別記事に続くこととする・・・

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