フェスのない夏
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おかしいことに気づいた。
今は8月である。
例年の8月といえば、土日は毎週のようにフェスにいく。
フェスに行けば、チケット代をはじめグッズ代やら酒代やらで、真夏のかき氷のように瞬時にお金が溶けていく。
空に打ち上がった花火のように、瞬時に財布から消えていく福沢諭吉をみていると、不思議と笑みすらこぼれてしまう。
でも、それは仕方がないことなのだ。
なぜなら、この夏が一年間の数少ない楽しみのひとつだから。
新しいバンドを探したり、いつものバンドの「違い」をそこで発見したりするのも楽しみだし、サマソニに行くことをきっかけに洋楽を深堀りしていくのもこの時期ならではの楽しみだったりするわけだ。
フェスでお金を支出するのは、仕方がないことなのである。
福沢諭吉の一人や二人、あるいは十人や二十人、別に惜しくはない・・・・ことはないけれど、彼らを生贄に捧げるだけの価値はもらっていると思うのだ。
しかし。
今年は、その夏フェスがない。
一部の夏フェスは開催に向けて尽力しているし、開催されるのであればできれば足を運びたいと思ってもいるが、まだ確定的に言えることは少ないため、ここではあまりそれについて口を出さないでおこう。
事実としてあるのは、今年はお金を溶かす最大の要因であるはずのフェスに行ってないという事実。
であるのならば、今年は節約に節約を重ねた一年になったはずだと思うのだ。
が。
おかしいのだ。
おかしなことが、己の身に起こっているのだ。
銀行の残高をみても、おかしなことに例年と支出がほとんど変わっていないのである。
毎年のお金を投じている「それ」がなくなっているにも関わらず、だ。
一体何が起こったというのか。
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お金のありかはどこに?
あらぬ疑いが頭を駆け巡る。
もしかしたら、知らないところでクレジットカードを引き落とされているのではないか。
不正にクレジットカードを使われていて、勝手に決済が行われているという話をきいたことがある。
もしかしたら、自分の身にもそれが起こってしまったのではないかという見立て。
確かに、今年はクレジットカードの引き落とし額が大きくなっている。
0の数が通常よりも多い気がする。
おのれ、やりあがったな。
どこのクソ野郎か知らんが、人のクレジットカードを勝手に使いやがって。
人様のカードでやりたい放題するとは良い度胸じゃないか。
だがな、貴様の思い通りにさせないぞ、しかるべき措置をとって、しかるべ鉄槌をくらわせてやるからな。
そう思って、急いでクレジットカードの引き落としの履歴を見つめてみる。
が、これまたおかしなことに引き落とされている内容が全て、自分の心当たりのあるものばかりなのだ。
あの日のあの時のネットショッピング、あの日あの時の夕食、推しへの惜しみない愛もきっちりカードの履歴には刻まれている。
その総額を足し算すると、確かに「不正」はどこにも存在しない。
自分の身に不正がなかったという事実だけが明らかになるのだ。
よく酒飲みが酒を飲んでいるとき、そのお酒が水になっているとよく言うが、自分も推しに金とを投じているときだけはなぜかその決済のハードルが鬼のように低くなる。
もしくは自分の脚力が、本気を出したときのゴキブリように凄まじいことになってしまっている。
マリオカートで言えば、スターを取ってしまっている状態。
無敵だからハードルだろうが何だろうが、一切気にならない。
そういう状態なのである。
だが、どれだけ水のように感じてもお酒はお酒でしかないし、「無料」に思えた決済もやがては冷酷な数字となって襲いかかってくる。
言ってしまえば、自分はトラップにかけられていたのだ。
どれだけお金があっても足りない現実
好きなものがひとつならいい。
その好きなものに全力を投じたらいいから。
でも、その好きが複数になったり、色んな形で派生していくと、もうどうしようもなくなっていく。
というか、好きなものがひとつと思っていても、その支出がどんどん分散してくのがオタクというものなのだ。
最初は音源だけ聴いて満足していたのが、ライブとかに派生していくようになる。
ライブだって最初は一本で満足していたのが、いつしか二本三本と増えていき、気がついたらライブがまずスケジュールの前提にあるような生活になる人も多い。
自分の場合は、色んなアーティストが好きなので、ひとつのものに多額を投じるというよりは、色んなものに満遍なく投じるタイプの人間なんだけど、何にしても色々と「沼っている」ことに変わりはない。
気がついてわかったのは、フェスに使うお金が浮いたとしても、そのお金は貯金にはまわらないという現実。
というよりも、本来だったらフェスに使っていたお金が今は<余っている>から、今月はこれが買えるぞ、という謎の精神状態に陥り、そこにお金をつぎ込んでいく。
呼吸をするのと同じで、意識せずにそれをやってしまうから、振り返ってあとから気づくことになるのである。
クレジットカードは、本当に恐ろしい。
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