京都藝劇 2025で観たHakubiのライブレポ。セトリの構築~パフォーマンスの話
序章
京都藝劇2025がKBSホールで開催されて観に行ったので、その感想を簡単に書いてみたいと思う。
・・・という書き出しで文章をスタートさせたんだけど。
この日ライブで感じた感想を改めて言葉にすると、なんだか野暮になってしまうなーという感覚もある。ライブって生物だから。だから、なかなかに筆が進まない自分がいる。
セトリがどうだったとか、MCで何を言ったとか、今この瞬間に言葉にしてもなーという感覚がある。
各ライブを観終わったあとの感想を少しでも言葉に残そうと、X(旧Twitter)にアーティストごとの簡易な感想を書いてみたけれど、時間が経ってそれをのぞいたときに「今の自分が本当に言葉にしたかった感想はこれなのか?」という、何とも言えない微妙な感覚が宿っているのだ。
ただ、今振り返ったときに感じるのは、ライブバンドをフェス形式で観るからこその興奮が京都藝劇にあったということと、京都藝劇のラインナップは主催バンドであるHakubiだからこその並びだったなーというもの。
たぶん他のフェス(それは企業主催のフェスであれ、バンド主催のフェスであれ)であればきっとこのラインナップにはならないだろうなあという感覚がある。
少なくとも、自分は同じようなラインナップで展開されそうな他のフェスを知らない。
今回の京都藝劇がこのラインナップになった意図や想いというのは、Hakubiサイドで言葉にしているから、自分の方で改めて噛み砕くのは蛇足だと思うので、わざわざ書かないけれど、この日のラインナップの音を浴びるだけで、Hakubiがどんな音楽に影響を受けてきたのか、その一端をどかんと味わえる一日になっていたことは確かだったと思う。
ちなみに、自分的にこの日のラインナップの中で、特にぐさりときたバンドがTHE NOVEMBERSだった。
過不足のないMCの中、矢継ぎ早に繰り出される名曲を、妥協のないパフォーマンスで展開されるライブパフォーマンスは痺れるものがあった。
道中のパフォーマンスも刺激的だったし、最後に言葉にしたMCの果てに展開された「今日も生きたね」の空気感は幻想でもあり、どこまでも生命力が宿っており、何とも言葉にできない感動を味あわせてくれる時間だった。
THE NOVEMBERSの前に登場したストレイテナーの「イノセント」の披露は自分的にも青春みが強すぎて、なんか色んな意味で童心に帰った瞬間だったし、その後に登場したTETORAはHakubiの盟友ということもあって、容赦ないバチバチ感でとても良かったし、Hakubiが登場するまでの時間だけでも、その日のハイライトになりそうな場面というのはいくつもあった。
Hakubiの登場を前にして、イベントとしての満足度はかなり高いものになっていたのだった。
Hakubiの登場で、また世界が変わる
だからこそ、Hakubiのライブがどうなるんだろう?という感覚はあった。
バチバチのライブが連続した果てに登場する、Hakubiのライブはどんなものになるんだろうという思いはあった。
そして、いざHakubiが登場すると、そんな思いはマジで余計なものだったことを実感する。
なぜなら、この日のフェスの時間の中で、やっぱりHakubiのライブが一番印象的だったって思ったから。
もちろん比べる軸を変えたら、それぞれのバンドが一番の要素っていくつも見つけることができる。
でも、自分軸でこの日に一番ぐっときたバンドは誰だった?って質問されたら、間違いなくHakubiだよ、って即答できるくらいには、この日のHakubiのパフォーマンスが圧倒的だった。
「もう一つの世界(Alt ver.)」や「夢の続き」も、10-FEETの「蜃気楼」のカバーも好きすぎる自分にとって、好きな曲がとめどなく展開されるセットリストがシンプルに良かった。
特に「蜃気楼」においては、10-FEETのTAKUMAが降臨してセッションして披露するという流れが劇的だった。
10-FEETのTAKUMAはのっそりとステージに登場して、多くは語らず、背中でモノを語るみたいな登場の仕方をしてさっと去っていく流れだったのが良かったし、渾身のカバーのパフォーマンスだけでも、この日のハイライトになるような貫禄があった。
Hakubiのライブの感想
ただ色々振り返ると、この曲が観れたとか、このコラボが良かったっていうのは+αの話でしかなくて、シンプルにHakubiのライブそのものがとても素晴らしかったことを実感する。
というよりも、「全体」のパフォーマンスの物語的な流れが何よりも良かったと思う。
歌うことも、歌の並びも、気合いの入ったMCも、ゆるい空気の中で紡いだ言葉の数々も。
余談になるが、2020年に観たHakubiのカンラバに心を打たれすぎて、その年に自分がライブイベントを開催するうえでもめちゃめちゃに影響を受けたことを思い出した。あの日のライブを観て、イベントをやろうという気持ちがより強くなったし、イベントをやるからには誰かによって、あれくらいぐっとくるライブイベントをしたいと思ったことを思い出した。
それくらいに、いつだってHakubiのライブって歌もMCのトーンも、いつも自分的にど刺さりしていた。そして、京都藝劇はこれまでのHakubiとはまた違う、でも確実により芯に刺さるような、そんなライブだった。
温度感も良かった、と思う。
なんというか、Hakubiのライブって、単に希望とかポジティブに全振りする感じじゃない。
最終的にエネルギーをもらえるんだけど、その道中の描き方が絶妙だ。
怯えとか、不安とか、バンドだからこその衝動とか、そういうものも並列して歌とかMCにのせていく潔さがあって、それが最終的にエネルギーに変わっていくような心地。
ネガティブなトーンもあるんだけど単にダウナーになるんじゃなくて、その果てに絶妙なバランスで成立させた、脆そうででも絶対に崩れ落ちないエネルギーを宿して、美しく儚くてメラメラしていて魅力的なのだ。
2025年の京都藝劇においては、楽曲の展開の中でネガティブなモードを魅せる瞬間がありつつも、最後には色んなフェーズを経た今のHakubiだからこその多幸感に溢れていた。
全員で楽曲のコーラスを合唱する、というシチュエーションも相まって、この日のKBSホールにしかない、やんわりとした温かみが、じんわりと心に残るのだった。
まとめに替えて
ということで、ざざざざっと言葉にしてみたんだけど、まとめちゃうと、2025年の京都藝劇、すごく良かったぞ、という話。
きっと2026年も京都藝劇は開催されるはずだから、いまの段階で8月11日はこのイベントに行こうと決めている。
次の1年で、さらに進化を遂げるHakubiの様子を、ただただ目撃したい。そんな気持ちでいっぱいになるライブだったから。