Novel Coreの「“BACK TO AGF” TOUR 2025」のなんばHatch公演を観てきたので、その感想を書きたいと思う。
Novel Coreの「“BACK TO AGF” TOUR 2025」の話
なんだけど、実はワタクシ、前提として、基本あんまりライブレポをブログに書かないようにしているんだよね。というのも、ライブって生で観てなんぼだと思ってるから、ブログとしてライブの感想を書くのは、どうしても蛇足になっちゃうと感じている派で。(音源やアーティストの紹介系の記事だと、その記事を読んですぐにサブスクやYouTubeで音源を聴けるけど、ライブの場合、そういうわけにもいかないしね)。今だとYouTubeやインスタなどで動画でライブの雰囲気を味わえることも多く、「ライブに行くための導入」という話であれば、そちらの方がいいとも思うし。
でも。
Novel Coreのライブレポは書きたいと思った。
なぜなら、自分の想像の何倍もライブが良かったから。自分の内面にある感動水準を大幅に超えるライブだったから。ただ、それだけ。
っていうのも、近年、自分もブログの延長線でライブを主催するようになってから、どうしてもライブを「左脳」で観ちゃう瞬間が多くなった。
興奮しているんだけど、どこか冷静な感じというか。身体はリズムをとっているのに、頭の中では腕組みしながら俯瞰してライブを観ているというか。
楽しんではいるけど、本当の意味で夢中になっているのかは微妙、みたいな温度感。そういうことが、わりとある。
だけど、昨日のNovel Coreのライブは違ったのだ。
ライブの序盤、「手のひらを見せてくれ」と言われた辺りには、自分の「右脳」が全振りでライブを楽しんでいた。夢中で手を掲げ、音と呼応してライブを楽しんでいたのだ。己の感覚が先に踊るような高揚感の中にいた感じ。
だからこそ、思った。
もっと色んな人にNovel Coreを目撃してほしい、と。
ここまで素直に感じられるライブってそうはない。近年、自分としてはとても好きだけど好みは人それぞれだから、好みが合いそうならよかったらどうぞ、くらいの感じでブログに書いている節がある。でも、Novel Coreのライブはちょっと違う。あえて言えば、「騙されたと思って、観てみてほしい」、そういう常套句が言いたくなるようなライブだったのだ。
結果、自分としても「絶対にまた観に行きたい」、そう感じるライブだった。
・・・という前置きまでを書いてみたところで。
じゃあ、Novel Coreのライブのどこが良かったのか?という話をここからしていきたい。
なお、なるべくセットリストなどには触れないようにするが、ライブのネタバレは厳禁という方は、あとで読んでもらう方がいいかも!
ジャンルがミックスされた無敵感
今回のライブはバンドセットでのライブだったということもあるんだろうけど、とにかくジャンルのミックス感がエグかった。
初めてバターライスにチーズを載せて焼いてみたらエグいくらい美味いことに気づいた(そして、ドリアという料理が生まれる)っていう発見も、きっとこれくらいの衝撃だったんだろうなというくらいのミックス感。
良い意味で、混ぜたらえげつない、が繰り返されるライブだったのだ。
自分にとって、Novel Coreとして最初に出てくるイメージはラッパーだ。
実際、この日のライブもラップがかっこよかった。どんなリズムも乗りこなし、高速フロウも圧巻の迫力で展開する。
でも、バンドセットになって、より展開される音のロック濃度が高まったこの日のステージは、あまりにも、ゴリゴリなロックバンド然としていた。生み出す爆音はヘヴィで痛快。しかも、リズミカルで変幻自在。そんなサウンドを乗りこなしながら、パワフルでエッジの効いたボーカルを展開していくNovel Coreの姿の勇ましさ。
しかも。
歌およびラップをしているNovel Coreの全力投球具合もえぐい。ぴょんぴょん飛び跳ねたり、ヘドバンしたり、楽曲のモードに合わせて豊富な運動量でパフォーマンスする。
ある意味、ダンサー。
少なくとも、視覚的な表現力も素晴らしかった。
そこに加えて、ライブ中には観客の上をサーフしてみせるアクティブさまであるし、客席の中を突っ切ってパフォーマンスする瞬間もあって圧巻。
それだけ全力投球でも、ボーカルやラップが乱れないあたりに、Novel Coreのアーティストとしての隙のなさを実感することになる。
時には卓越したラッパーであり、時にはロックバンドのボーカル然とした迫力をみせる。しっとりとした歌では伸びやかなボーカルで感動的な空間を作り上げていくし、ジャンルのミックス具合が容赦なかったのだ。
マインクラフトとファイナルファンタジーとスーパーマリオカートが入り混じったような高揚感、とでも言えばいいだろうか。
しかもそれを、誰も置いていかない包容力で展開するのだから、強烈。
これだけでも、自分の想像を大幅に変える体験だった。
オーディエンスとの共闘と共創
Novel Coreのライブとして印象的だったのは、対オーディエンスとのコミュニケーション。
どんな局面でもNovel Coreはオーディエンスと言葉を交わすようにMCをしていた。その様子が印象的だった。
特に今回のライブはNovel Coreが客席にダイブする瞬間もあって、当然ながらオーディエンスはもみくちゃ。
そんなときでも「大丈夫かっ!?」と声を出して、フロアの顔をみながらもパフォーマンスをする。「助け合え」と「でも、遠慮はするな」というメッセージをしきりに発信していたこの日のライブは、その言葉どおりの空間ができあがっていたのだ。何より、そのメッセージを行動で示してみたのがNovel Coreであり、その姿がどこまでも勇ましかった。
Novel Coreがまっすぐに言葉を投げかけるからこそ、オーディエンスの熱量も高かった。Novel Coreの言葉に呼応して、常に拳が突き上がる感じ。少年漫画なら、擬音語で「ごごごごごごごごごごご」という文字入れが見えそうな、やってやんぞ感が咲き誇る。
しかも面白いのが、こういうオーディエンスの場合、同世代の猛者が集うみたいなケースも多いけれど、Novel Coreは男女問わず、色んな世代が呼応していた印象。だからこそ、その瞬間瞬間を共創して作り上げる、特別感のあるワクワクが続いていた。
ライブ中盤から後半にかけての、Novel Coreが10年のキャリアを振り返るようなMCをしていきながら、セットリストもどんどんエモいやつを披露していき、やがてその果てにたどり着いたのが、今のNovel Coreのメラメラがそのまま言葉になったような「プライド」である流れなのも、めっちゃ良かった。
なんかテキストにするとめっちゃ素朴な言い草だけど、「プライド」に繋がるまでの序・破・急の流れがたまらなかった。あのMCの流れから、スマホのライトをステージで照らしていくときも、なんか妙にじーんとしてしまってたし。
ソロアーティストだからこそ無限の魅せ方ができる。
色んなジャンルにルーツがあるアーティストだからこそ色んなカルチャーを再構築できる。
そういう奇跡のようなワクワクの体現が、そこにあったのだった。
そして、それはNovel Coreがいて、呼応するオーディエンスがいたからこそ、味わえた高揚感と多幸感だったのだと、ライブが終わった今、しみじみと感じている。
ここぞのMCが刺さりすぎた件
ライブ終盤、長尺でこれまでのキャリアを振り返りながら、今のNovel Coreの想いを凝縮してMCにする場面があった。
何を喋ったのかをテキストにするのは野暮かなと思うのと、異なるニュアンスで伝わっちゃうと申し訳ないので割愛するけど、この流れ、魅せ方、そして言葉への熱量の込め方にとにかくぐっときた。
それこそ、近年の自分はMCで仮に”熱いこと”を聞いたとしても、脳内腕組みモードになって聞いちゃうこともある。
んだけれど、この日あの場所で観たNovel Coreの言葉は、随分自分の胸に突き刺さった。
自分もブログをやっていく中で、色んなジャンルの音楽を愛好してきた身だからこそ、Novel Coreの言葉がより切実に伝わったし、そのMCの中で感じた希望のエネルギーは、「この言葉なら胸に留めて信じたい」という、エネルギーが感じられたのだった。
これはたぶん、MCの内容が良かったということもある一方で、それ以上にそれまでのライブの中で、Novel Coreが言葉と行動がリンクして感じられたからだと思う。
というのも、「誰も置いていかない」「一人ひとりとライブをする」みたいなMCを口にするアーティストって、わりとたくさんいると思うんだ。で、どのアーティストもそれ自体は本気で言葉にしてはいるとは思うんだ。
でも、どのアーティストの言葉でも、迷いなくのっかれるかといえば、それはまた違う。それはその言葉に対する徹し方が、楽曲なりパフォーマンスなりに現れているかどうか、っていうのが大きい。少なくとも、自分としては。
そう考えたときに、Novel CoreってSNSの立ち振る舞いでも、この日のライブのオーディエンスにかける言葉をみていても、「誰も置いていかない」「一人ひとりとライブをする」を本気で体現しようとしている大きなエネルギーを感じたのだった。
「大丈夫か!?」と声掛けして、オーディエンスに目配せするとか、その様子をきっちり見届けて次のフェーズにライブを走らせるとか、そういう積み重ねの中で、ライブ終盤に至った際の言葉の重みが強くなっていた感触が、自分にはあったのだ。
MCの中で屈託のない、影の部分をみせる感じもよかった。
その上で、その影を大きく照らす、太陽のような強烈なエネルギーのコントラスト。
だからこそ、MCにぐっとくるし、ステージの姿がどこまでもかっこよくみえたという話。
まあ初めてライブを観た人間が何を偉そうにという話ではあるんだけどね。
まとめに替えて
そういうのも込み込みで、前述したようなオーディエンスとの共闘と共創が生まれていたように思うし、ソロのラッパーでありながら、ラウドロックバンドのようなアグレッシブなオーディエンスの空気が出来上がっていたんだろうなーと感じる今。
つくづく思うんだけど、どんなカルチャーでもそれなりの時間をかけて育んだものだからこそ、異なるカルチャーを、ひとつのフロアで成立させるのって、想像以上の骨が折れる。
ポップのカルチャーが根付いたフロアだとすると、そこにいきなりパンクロックのカルチャーを持っていくと、ある種のカルチャーショックが生まれることは往々にしてある。
でも、Novel Coreのこの日のフロアは、ステージ上で色んなカルチャーやジャンルが展開されているのと同時に、フロアでも様々なカルチャーが吸収されていって、その日にしかできないものを生み出すダイナミックさがあった。
安易な筋書きが見えるライブじゃなくて、ライブだからこそがずっと継続するような生物としてのワクワク感。
こういう体験ができたことも、自分がNovel Coreのライブに対して、想像の何倍もドキドキできた理由のひとつだったりする。
なーんて書いたけれど、これは、Novel Coreのライブの良さのひとつの側面でして。
もっと書き出せば色んな視点にスポットを当てる必要が出る。
だってね、ライブの始まりの演出もかっこよかったし、中盤の楽器隊がばしばしに演奏してからのNovel Coreの登場も痺れたし、楽曲一つ一つにスポットを当てたら、もっと言葉にすることはできるんだけどね。
あんまりオタク喋りでだらだら書いても何が言いたいねん我・・・となりそうなので、、この記事では一旦、この辺で集約してみる。
ただ言えるのは、それだけ言葉にしたくなるライブだったということ。
今回観たのはバンドセットのライブだけど、DJセットの場合は違った魅力が展開されるのだろうし、セットリストによっても、もっと違った魅力が溢れる予感がしている。
そういうのも込み込みで、あーまた早くライブ観てえわ〜と、なっている、そんな次第。