前説
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2020年、ボーイズグループが発表したアルバムで一番好きな作品は、Sexy Zoneの『POP×STEP!?』である。
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気に入ったアルバムほど、そのアルバムを軸にしたライブがどういうものになるのか、気になってしまうのが人間の性である。
というわけで、『Sexy Zone POP×STEP!? TOUR 2020』を拝見しました。
ここで、その感想を簡単に書いていきたい。
本編
アルバムの世界観
『POP×STEP!?』は様々なポップソングが収録された上質かつカラフルなアルバムだと思っている。
ただ、ポイントなのはこのアルバムは単なるポップソング=キャッチーなJ-POPが集結した作品ではないというところ。
なんというか、日本(というか東京)を軸にしつつも、その目配が良い意味で外に向いている感じがするのだ。
『Sexy Zone POP×STEP!? TOUR 2020』もまた、そういう意味での外向きな眼差しを随所に感じることができる。
冒頭の映像では、海外からみた日本=日本のみならずアジアの様々なエッセンスが詰まった独特のビジュアルが展開されていく。
和のテイストと洋のテイストが入り混じったサウンド。
中華っぽいテイストと日本独自の文化が入り混じった不思議な世界観。
日本の伝統芸能の風味を残しつつも、クラブミュージックっぽい装いもミックスされていて、短い時間ながら『POP×STEP!?』が持つ複合的な深みを的確に表現していく。
そして、そこに繋がる「極東DANCE」。
ここで、一揆に『POP×STEP!?』を持つ世界観が立体的になって表現されていく。
無観客という空間でありながら、逆に言えば無観客という条件をひとつのアドバンテージにするかのように、カメラワークも意識した演出が行われていく。
ただ、ライブ映像を観ながら感じたことがもうひとつあって。
『POP×STEP!? TOUR 2020』というライブは、『POP×STEP!?』というアルバム作品を表現するための<だけの>ツアーになっていないということ。
Sexy Zoneの今までの歴史を踏まえたうえでの構成というものも、なんとなく感じられるのである。
例えば、ライブの2曲目は「ROCK THA TOWN」は2017年にリリースされたシングルだし、3曲目に披露される「BON BON TONIGHT」は、アルバム未収録となっている「麒麟の子」のカップリングだし。
このように『POP×STEP!?』に収まりきらないSexy Zoneの魅力を出しながら、ライブを盛り上げていく。
初めてSexy Zoneのライブを観たので、どこが<お決まり>で、どこが<新しい試み>なのかまではきちんと整理できていないけれど、きっとSexy Zoneらしい形でステージをアグレッシブに使い、コーナーごとに軸となる魅せ方をしながら、息をつかせる間もなく立て続けの興奮を与えていくのである。
ただ、それ以上に個人的に惹かれたのは、アルバム以外の曲をポイントポイントで披露したり、コーナーごとに魅せ方の区分けをしつつも、全てが『POP×STEP!?』の世界観にも繋がっているところなのである。
なんというか、いかにもライブのためにアルバムに入っていないアゲアゲソングも歌いました、という感じが一切ないのだ。
むしろアルバム以外の曲を歌うことで、『POP×STEP!?』が持つアルバムの持つ世界観をより深く表現するためのエッセンスになっている、そんな気がするのだ。
特にそれが鮮やかに決まっていたのが、メンバーが各ソロ曲を歌ったあとに披露された「make me bright」。
この歌は『POP×STEP!?』の前年にリリースされた『PAGES』に収録されている楽曲で、楽曲を手掛けたiriの作家性も織り込まれているスタイリッシュかつ洒脱なナンバーとなっている。
この歌を披露するタイミングで、ステージを突き刺す緑色のレーザービームの演出が行われるのだが、楽曲の世界観とも合っていたし、『POP×STEP!?』が持つ多様性と広がりのあるポップな世界ともリンクするように感じたのだった。
ステージを巧みに使った演出と、Sexy Zoneが持つアーティストとしてのポテンシャルの化学反応が鮮やかだからこそ、生じた圧倒的な空間がそこにはあった。
かつ、その後に繋がる『POP×STEP!?』に収録されている「Blessed」との繋がりも鮮やかすぎて、「あれ?「make me brightって『POP×STEP!?』に収録されている楽曲だったっけ?」と思ってしまうような収まり具合であった。
以降も、『POP×STEP!?』で魅せた上質かつカラフルなポップスを軸にしながら、Sexy Zoneらしいやり方でポップを超克をするスリリングな感じがたまらなかったわけだけど、結局のところ、Sexy Zoneのポテンシャツの高さが、過去曲も最新曲も同じ解像度で演出に落とし込まれていたのかなーなんて思うわけだ。
「Lady ダイヤモンド」のような初期曲もライブの中でしかるべき形で収まり、ライブの世界観を作り上げるひとつのピースになっていたことが、何よりの証左だと思うわけである。
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Sexy Zoneのカラーがいかんなく発揮される
『POP×STEP!?』は名盤だった。
ただ、逆に言ってしまうと、楽曲の存在感が強すぎるが故に<そこありき>になってしまう、という可能性もゼロではないと思っていた。
でも、ライブを観て感じたのは、そのライブの中でいかんなく発揮されるSexy Zoneの素晴らしさ。
まあ、自分ごときがSexy Zoneの<らしさ>を語るのも気持ち悪い話ではあるが、ライブを通じて、各メンバーの個性だったり、キャラクター性をダイレクトに感じられて、それがまたライブに魅力としてきっちりと投影されていたのである。
身内ノリになりそうな塩梅と、そこを絶妙タイミングで止めて次に進んでいく感じのバランス感が絶妙だった、とも言えるのかもしれない。
特に、ライブ中の煽り方だったり、MCのときの言葉のチョイスだったりに、そういう各々の個性を強く感じたのだった。
なにより、『POP×STEP!?』が名盤なのは、単純にSexy Zoneが良い曲をたくさん提供してもらったからなわけではなく、その<良い曲>をSexy Zoneのメンバーが巧みに自分たちのカラーに染め上げ、Sexy Zoneにしかできないポップソングに着地させているところにあるんだということを、ライブを観ながらひしひしと感じたのだった。
歌とダンスというベースのレベルが高く、かつアイドルらしく演出中に軽やかに<役>に入って表現に落とし込む凄みがある。(この<役>に入るの感覚は楽曲を表現する上でとても重要なことだと思う)
だからこそ、「make me brigh」のようにぐっと魅せるところもあれば、「Lady ダイヤモンド」のように楽しく盛り上がるところもあって、その全てが華麗にキマるのだ。
メンバーそれぞれに強みと個性がありつつも、土台となるパフォーマンスがしっかりしているからこそ、生み出すことができるスリリングさ。
今のSexy Zoneだからこその迫力が、そのライブには間違いなくあった。
だからこそ、響く最後の「RUN」
アンコールという位置づけで最後に披露されるのは「RUN」である。
この歌はそれまで活動休止をしていた松島聡も加わった5人で披露されることになる。
個人的には、ここの部分に一番ぐっときた。
この歌はハンドマイクになって、踊りとダンス、全てで真っ向から<素>を魅せる形でパフォーマンスをされる。
様々な苦難を乗り越えて、ついに5人揃ってパフォーマンスをすることになった中で表明される新たな決意、そんな歌詞にぐっときてしまう。
かつ、この歌は本編で隠していた本音みたいなものをパフォーマンスに落とし込んでいる感じがして、そこにもぐっときてしまうのだ。
本編では穏やか顔で本編をパフォーマンスしていた佐藤勝利は、『困難な問題も難題も挑んで ここでやめんな やめんなよ』という自分のパートを歌っているとき、それまではみせていなかった感情を発露するかのように、力強い歌声でこのフレーズを歌ってみせる。
逆にそれまでクールだったり、時にはちょっとキザな感じでパフォーマンスすることが多かった中島健人や菊池風磨は、この日一番じゃないかってくらいに優しい声で自分のソロパートを歌い上げていく。
時に泣きそうな顔をしながらも、センターに立ってパフォーマンスをするときには堂々とダンスを披露する松島聡も良い。
MCでは独特の空気感を生み出しがちなマリウス葉も、「RUN」では時に感情をあらわにしながらも、凛とした顔で激しくパフォーマンスする姿が印象的である。
特に良いなあと思ったのが、2番のサビ終わりのCメロ。
この間にメンバー全員が端のステージまで歩いていき、中島健人がサビのソロパートを歌いきった後に、そのステージから真ん中のステージまでの道がそれぞれのメンバーのカラーで光り、そこをメンバーが<RUN>する。そして、
止まらないで 止まらないでよ 僕らはまだ始まったばかりさ 途切れないで 途切れないでよ このまま夜が明けてゆくまで
このフレーズを歌い合わるとメンバー全員がひとつのステージに集まり、メインステージへと戻っていくという流れ。
テクニカルかつ洒脱な雰囲気の楽曲が多かった本編だからこそ、最後に披露する「RUN」の躍動感、むき出しにしている感じにぐっときてしまったのである。
『POP×STEP!?』を通してより洗練されたSexy Zoneのパフォーマンスが、以降のシングルでより鋭さと温かさを生み出していく。
そんなふうに、感じたのである。
まとめ
2021年、Sexy Zoneはここからさらにポップシーンをさらに轟かせる楽曲を生み出すことになる。
楽曲そのものが話題になることも多いけれど、その感動の根本にあるのは表現しているのがSexy Zoneだからこそ。
ライブ映像を観て、改めてそのことを実感したのだった。
必ずしも平坦な道のりではなかったグループだからこそ生み出すことができる感動的なパフォーマンス。
『Sexy Zone POP×STEP!? TOUR 2020』にも、そんな要素がいかんなく発揮されていたという、そういう話。
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