パスピエが大好きな気持ちだけで書いた、more humorとmore You moreの話

パスピエのフルアルバム「more humor」について

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今年5月、10周年という節目の年にリリースされたパスピエの5枚目のフルアルバム『more humor』。

今回、わたしは先行試聴を一切せず、アルバムで初めて全曲を聞いたのだが、また”新しい引き出しから出してきた!”という印象を受けた。

例えば、1曲目のシンセサイザーとエレキギターの強い「グラフィティー」と、ピアノとアコースティックギターが印象的な2曲目の「ONE」では、楽器の音や歌い方の方向性がまるで違う。

かと思えば、パスピエらしい和のテイストが入った「だ」のような曲もあるし、スローテンポな「waltz」のような曲もある。

ひとつのアルバムに、個の強い曲たちが詰め込まれた感じなのだ。

リード曲である「ONE」は最初に聞いた時は、率直に「パスピエっぽくない!」と思ったが、聞けば聞くほど引き込まれていく。

どことなく切なくて懐かしいような音とメロディ。

そこに重なるなっちゃんの低音。

成田さんが曲作りのポリシーとして上げていた、「明るいだけじゃない、暗いだけじゃない、どこか影を落とす曲」というものが、まさに表れていると思う。

このように、パスピエはどこかにパスピエらしさを必ず持ちながらも常に変化をしていて、ファンのわたしからすると、やはり”最新が最高”。

毎度、最高を更新してくるのがパスピエなのだ。

バンドなんて大抵そうなんじゃないかって思うかもしれないけれど、パスピエのそれは、他のバンドとちょっと違う。

パスピエの振れ幅は本当にすごいし、やってることもパスピエだからできることだと本当に思うし、パスピエの音楽はジャンル分けのきかない”パスピエの音楽”というものを確立していると本当に思う。

この「more humor」は、フルアルバムでありながら、シングル曲が一切ない。

成田さんが4ヶ月半で90つくったデモの中から選び抜かれた10曲が収録されていて、なっちゃんがインタビューで涙ぐんでしまうほど本気の最新傑作なのだ。

とにかく曲たちを”何度も”聞いてほしい。

全国ツアーmore You moreについて

※ここからは、ツアーについて書きます。一部、曲目についても記載していますので、ご注意ください。

そんな「more humor」を引っさげた全国ツアー、more You more(アルバムタイトルと読み方同じ)。

アルバムとツアータイトルを掛け合せるパスピエのユーモアは健在。

ツアー初日は、全会場で1番倍率が高かった渋谷WWWX。

こんな小さな箱でも、全くモッシュ等が起こらず、最初から最後までパーソナルスペースが確保された状態でライブが楽しめるのが、現在のパスピエのライブ。

一昨年のDAN DAN AND DNAまではかなり激しいライブが多く、わたしも柏のPALOOZAの最前列で見たときは本気で死ぬんじゃないかと思うくらいだった。

OTONARIさんのONOMIMONOの大阪でも柵が倒れることがあったが、昨年のカムフラージュからは一転。

まるでライブというよりコンサートのような快適感。

でもそれは決して盛り上がってないとか、そういうわけじゃない。

昨年、なっちゃんはカムフラージュ(昨年のツアー)にて「体で盛り上がる曲と、体はゆらゆらしてるだけでも心の中ではすごく盛り上がってる曲ってあるでしょ。今作ってる曲たちも、そういう(後者のような)曲なの。(内面から)ふっ!って感じの。」と言っていたことを思い出した。

このとき、MCで作っていると話していた曲達が「more humor」の曲たちであるのだと思うと、なっちゃんのMCにも納得。

今回のツアーでは、各々がパスピエの音楽を楽しんでいて、好きに体を揺らし、踊っている人ばかりだったから。

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ライブ本編に話を戻すが、1曲目の「だ」から本当に驚いた。

なっちゃんの歌声が、さらに強くなっていたのだ。

パスピエの、大胡田なつきの歌声は、高くて可愛い声というイメージが未だあると思うし、それはもちろん間違いではないんだけれど、なっちゃんの歌はどんどん進化している。

ただ可愛いだけなんかじゃ全くないし、本人が以前から挑戦したいと言っていた低音も、今では完全に自分のものになっているし、なっちゃんのその歌声に感情が乗っているように感じる。

以前はちょっと声が小さくて聞こえづらいな、と思うこともあったけれど、今回はそれすらなくて圧倒的な始まりだった。

また、パスピエは1つのツアーに臨むにあたっての、完成のさせ方がすごい。

もともと他バンドよりもスタジオに入る回数が多いと公言していたけれど、ライブを観るたびに、いつもそれを目の当たりにする。

サポートドラムの謙介さんを含めた5人の息がぴったりで、その光景に心打たれる瞬間がライブ中に何度もあった。

「自分が歌う想像が全くできなかったし、歌詞も思い浮かばなかった。でも、バンドで合わせるうちに自分の曲になった。今日の日のために”仕上げてきた”から聞いてほしい」と、自信に満ちた表情のなっちゃんのMCに次いで披露されたのは、今回のアルバムのリード曲であり、パスピエの新境地でもある「ONE」。

言葉通りの「仕上がり」に、驚かされた。

また、約6年ぶりになっちゃんの手書きイラストによるMVが作成された「グラフィティー」と、同様にMVが手書きイラストという共通項のある「電波ジャック」が連続で演奏され、パスピエの新旧を感じられてなんだかふふっとなったのだけど、「グラフィティー」が「電波ジャック」の頃のようで、逆に「電波ジャック」が最新のパスピエの歌い方をしていたように感じて、不思議な気持ちになった。良い意味で。

なっちゃんの地元の国道からタイトルがつけられた「R138」では、この日で1番の無邪気ななっちゃんの笑顔が見られた。

この歌では、つゆさんがなんとシンセを弾いていて、セットリストの位置やお客さんの盛り上がり的にも、アルバム曲の中で1番ライブ映えしていたように感じた。

「△」は昨年冬、ファン投票による曲たちで構成されたFCライブでも演奏されていて、パスピエファンに人気の高い曲だと思うが、それが今回のアルバムツアーのセットリストに組まれているのは、わたしを含めたファンにとって、かなり嬉しいものではないかと思う。

みんなで一緒に、サビの時に手で「△」を作るのが楽しいのだ。

本編ラスト1曲前に位置づけられた「オレンジ」は、個人的に特に心に残っている。

この歌はパスピエのライブの楽しさが詰まったような曲で、それこそ前ツアーのカムフラージュから披露され、メンバーと自分たちが同じ熱量で”パスピエの音楽”を楽しんでいるんだなあ、と感じたのだ。

そしてなっちゃんが「この曲には本当に気持ちを込めた。今、大胡田なつきがみんなに伝えたいこと」という最後のMCで締めくくり、披露されたのはアルバムのラストを飾る「始まりはいつも」。

わたしはこの曲の<いつまでだって別枠でいようね>というワンフレーズがだいすきだ。

パスピエが大好きな気持ち

この日、なっちゃんは「10年もやってると、これは自分の好きなパスピエじゃないなってときもあると思う。でも、そういうひとがまたふと戻ってこれる場所を作っていたい」と言っていた。

パスピエは決してただ前に進んで、変化をし続けているだけのバンドじゃない。

過去も大切にしながら困難を乗り越えて、まだまだ自分たちの音楽の可能性をどんどん広げていっている。

なっちゃんは歌詞に自分の気持ちを込めたこの曲を、ほかのどの曲よりも心を込めて歌っていたと思う。それがすごく響いた。涙が止まらなかった。

間奏で「これからもパスピエと繋がっていてくれ!」と叫んだなっちゃんの言葉がさらに響いた。泣いた。

今回のセットリストには、ほとんどシングル曲が含まれていなかった。

ライブでの定番曲たちも外されており、それがまたパスピエの意志を感じたし、新鮮だった。

MCでは、なっちゃんそしてリーダーの成田さんはもちろん、つゆさんと三澤さんにもマイクが用意されており、メンバーみんなの声が聞けた。

そしてメンバーたちは揃って感謝の意を伝えていた。

こちらこそ、ありがとうの気持ちでいっぱいだった。

パスピエの音楽が気になっている人や、昔好きだった人には、とにかく今のパスピエのライブに足を運んで欲しい。

わたしの語彙のない言葉なんかよりも、目で見て耳で聞いて、感じてほしい。

ライブだ!と意気込む必要はない。学校や仕事の終わりにふっと行くのだっていい。

必ず最初から最後まで、幸せな空間を味わうことができるはず。

こんなにも素晴らしいライブのチケットがまだ手に入るなんて信じられない。急いでチケット買ってくれ。

わたしはこのアルバムを聞いて、ツアーに行ってみて、やっぱりパスピエが大好きだと改めて感じたし、パスピエに出会えて、パスピエのファンでいられることが本当に嬉しくて幸せだった。

自分が大好きなバンドがこんなにも素敵で誇らしい。

きっとわたしにとってパスピエはいつまでも別枠のバンドであると思う。

これからもずっと、そんなパスピエと共に歩んで行きたいと強く思った。

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筆者紹介

ことりん(@midnnn_pu)

パスピエとUNISON SQUARE GARDENがとにかく大好きで仕方がない20代社会人。

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