現在も精力的に活躍している女性ボーカルのバンドで一番好きなバンドは何ですか?
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仮にこういう問いをされたら、僕はパスピエと答えると思う。
なぜなら、単純にパスピエが好きだから。
というわけで、2018年10月14日は服部緑地野外音楽堂で行われたパスピエの野音ワンマンライブ「印象H」に行ってきました。
改めてパスピエってやっぱり良いなーと思ったし、それなりに色んなバンドを観てきたつもりだったけど、やっぱりパスピエって不動だわ〜と実感した次第。
この記事では、そんなパスピエのライブの個人的な感想を書いていきたいと思う。
ライブでしか体感できない音の展開
よく、音源とライブは違うって言葉があるじゃないですか?
それはすごく良くわかる感覚だと思う。
生で鳴らされた音を浴びるという体験は音源では絶対に味わえない興奮だし、観客の反応や音に合わせて身体を動かす体験そのものが、ライブの大きな魅力だったりするわけで。
ただ、演奏そのものを聴くと、ライブよりも音源の方が良いのでは?と思ってしまうバンドもぶっちゃっけ多かったりする。
ノリとか勢いとか熱いMCとかでごまかしていたり、「ウチらは技術とかでは勝負してないんで。ハートっす。ハート」って感じの、テキトーな方便で逃げているバンドも多い。
逆に演奏は上手いんだけど、これなら別に音源でも良くね?音源以上の興奮がないんですけど?ってバンドもいたりする。
そんな中、パスピエはマジで演奏だけで観客の心をがっつり掴む格好良さがあるし、ライブでしかできない(音源では体験できない)ものを魅せてくれる。
例えば、パスピエの楽曲は、2番のサビ終わりの間奏部分が魅力的に展開されることが多い。
歌モノのバンドあるいは盛り上がってなんぼのバンドにおいて、間奏というのは観客にとってはブレイク的な意味合いというか、ちょっと休憩の時間、みたいになっていることも多い。
けれど、パスピエはこの間奏部分がめちゃくちゃかっこよかったりするのだ。
ギターソロがすごく多いのも特徴のひとつだ。
野音のライブでは、ギターの三澤が積極的にステージの前の方にきて、涼しい顔してトリッキーなギターソロを弾く場面もあった。
もちろんバンドにもよるが、最近の傾向としてはあまりギターソロを取り入れないバンドも多い。
理由は色々あると思うが、ギターソロよりもその後のサビが大事、と考えるバンドが多いのだろうし、実際、ボーカルレスのタイミングは煽ることを優先して、楽器演奏の間に観客のボルテージを下がらないように努めるバンドも多い。
けれど、パスピエはちゃんとボーカルレスになった間奏の部分できっちり魅せてくるし、こういう部分だからこそ、音源とは違うカッコいいアレンジを入れ込んできたりして、ちゃんとライブ用にカスタマイズされた展開をしてきて、ライブの世界に引き込んでくるのだ。
なんなら、ここがひとつのピークであることも多く、間奏終わりで演奏を一旦止める→そこで観客拍手→ある程度クールダウンしてからCメロorラストのサビ、みたいなパターンもある。
演奏も魅せ場という意識があるからこその展開だと思うし、実際、ボーカルレスになった演奏の部分でもドキドキさせられる部分がたくさんあるからこそ、パスピエのライブってすごく魅力的なんだよなーと思うし、楽器の演奏でライブの世界に没入する(音に合わせて身体を動かしたくなるということも含め)という体感が生まれるのは、パスピエのライブならではだと思う。
「脳内戦争」の入りの部分では、キーボードのナリハネさんがショルダーキーボードを弾きながら走り回る展開があって、ここもすごく良かった。
こういう所も、演奏でライブを魅せるパスピエならではの魅せ場だよなーと思ったりする。
そういや、ボーカルのなつきがMCで「パスピエのライブは曲と曲の間に余計な間がないから水を飲む時間がない」という旨のことを喋っていたけど(こういう余計な間のなさもメンバー全員の演奏技術が高いからこそできること)、ナリハネさんが走り回ってるとき、「こいつ、なにやってるんだ〜」って一瞥を送りながら、思いっきり座り込んでいるのがすごく良かった。
水を飲む時間はないけれど、ライブ中に座る時間はあるんだよなー、そういう感じ、すごく良いなーと思った。
ちなみに、ナリハネさんが走り回ってるとき、メンバーもなんだかんだで優しく微笑んでいるような気がしたんだけれど、こういうシーンで暖かい雰囲気が生まれるのも、パスピエのライブの魅力のひとつだよなーと思ったりして。
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演奏が上手いバンドはバッチバッチなことも多い
基本的にライブでも高いクオリティーを求めているバンドというのは当然ながら理想が高いわけで、基本、バッチバッチであることが多い。
本当はバッチバッチではなくても、MCでは「自分たちはバッチバッチなんで」と言っちゃうバンドもいるし、MCで「自分たちはバッチバッチなんで」とは言わないバンドは、そもそも絶対にステージの裏ではバッチバッチになっているから、どうしてもクオリティの高い演奏をするバンドのライブほど、良くも悪くもそういうバッチバッチ感というか、何とも言えない緊張感が見え隠れすることも多い。
けれど、今のパスピエにはそれがない。
ライブがすごく多幸感に包まれているのだ。
厳密に言えば、少し前のパスピエはバッチバッチな空気もあった。
スクリーンなどには絶対に素顔を出さないことや、あまり積極的には煽らないこともそこと通じる話である。
けれど、色んなタームを経たパスピエはそんな余計なバッチバッチは捨て去った。
今回のツアー(と言っても二公演だけだが)は、そういうメッセージも込めて「素顔」始まりにしたのかなーなんて思った。
拘るところはもちろん拘るけれど、余計なプライドは捨てて「素顔」になった自分たちが、シンプルに良いと思える音を鳴らしていく、という意志みたいなものを感じた。
だからこそ、あったかいけれど、かっこいいし、クールだけどアットホームという感じの、逆説的なんだけど、それがパスピエの本質みたいな、そういう魅力が存分に見えて、すごく素敵だなーと感じた。
そんな今回のパスピエのライブは、ひとつの集大成を飾るかのように、パスピエの各アルバムのハイライトになるような楽曲オンパレードのセトリだった。
最初から最後までがクライマックスと言っても過言ではないような、そんなライブだった。
そんなライブのラストに持ってきたのは、未来にいるはずの<あなた>に手紙を送る「ハイパーリアリスト」という歌だった。
最初に「素顔」を歌うことで、これからの自分たちはこういうモードで行くんだということを示し、パスピエの歴史を辿るようなセトリで魅了した果てに辿り着いたのは、その次の未来に向けて明確なメッセージを放っていく「ハイパーリアリスト」という歌。
今後もパスピエはやっていくぞ!そんな強い意志を感じるセトリだった。
その辺の熱いバンドとは違って、MCでは必要以上に大きなことを盛って語らないパスピエだからこそ、ちゃんと音やセトリというライブそのもので、明確なるメッセージを表現していたのかなーと。そういう、熱くないけれどちゃんと熱い感じも、パスピエの魅力だよなーと思ったりして。
単純に歌が凄く良い
本編は大好きな歌の連発でそんなもん良いに決まってて大満足だったんだけど、個人的にはアンコールで披露してた新曲にもグッときた。
この歌もAメロ→Bメロ→サビっていう流れから、間奏もしっかり見せて最後サビって感じの歌だったと思うんだけど、各セクションがそれぞれトリッキーに展開していくというか、Aメロがあの感じなのに、Bメロはこうくるんだ?うわあ!ギターすげえオシャレ!って感じの歌だった。
で、そんな変態な感じのBメロのはずなんだけど、サビに入るとまた空気を変えて、ちゃんとポップに着地するというか、気持ち良い感じのサビになっていて、自然と右手が上がっているお客さんも多くて、おおーすげえーって感じた。
変態的な曲展開なのに、総体的にはキャッチーというか。
これこそがパスピエの魅力のひとつだと思うんだけど、新曲でもしっかりとそれが提示されていた。
なにより、新曲ってことは、まだそんなにバンドで合わせたことがないはずなのに、既に演奏が完成されていて、なんですか?実はこれ、旧曲じゃないんですか?って安定感があった。
サポートドラマーであるはずの佐藤謙介も馴染みすぎていて、あれ?この人、もうメンバーになったんだっけ?って思うほどで。
そんな今回のパスピエのライブ。
総じて言えるのは、やっぱりパスピエすげえわ。好きです。好き。好き。今の感想は、ただ、それだけ。
そう、すごく良かったのだ。
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