米津玄師「でしょましょ」ここどこでしょ？にアンサーを。

前説

このブログでは定期的にブログ運営者である“中の人”以外の方にも記事を書いてもらっている。

筆者紹介は末尾でさせていただくが、今回取り上げてもらったアーティストは米津玄師。

「でしょましょ」という楽曲の歌詞にスポットを当ててもらった。

では、どうぞ。

本編

米津玄師「でしょましょ」の歌詞の意味は？

「ここどこでしょ？」にアンサーを。

米津玄師10枚目のシングル「馬と鹿」のラスト3曲目に位置する「でしょましょ」。

え？でしょましょ？

情報が解禁された当初から、そのタイトルの珍しさに様々な憶測が飛び交った話題曲。

熱狂【自分を高める戦い】をテーマに制作され、胸に刺さるような強い歌詞と強いリズムの「馬と鹿」。

それに対し、狂気【他人を貶(おとし)めるような争い】をテーマに制作され、ゆるめの歌詞とゆるいリズムの「でしょましょ」。

どちらも我を忘れるような没頭する瞬間を切り取ったものだが、そのふたつはまさに表裏一体だった。

「でしょましょ」はいくつかのインタビューの通り、この令和の時代に入ってからの圧縮されたような異常性が歌われている。

四半世紀…とは言わないまでも、長きに渡りネットの世界を見聞きし熟知する彼にとっても、その異常性には深く考えさせられるものがあったのだろう。

ただ、彼の曲は常に、音も意味合いも何重にも重ねられ、入念に作り込まれている。

つまり表面ではこの異常な世界に警鐘を鳴らし、その裏面では何を訴えようとしているのか…。

歌詞を読み解いていきたい。

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如何でしょ あたしのダンスダンスダンス
ねえどうでしょ？それなりでしょ？
一人きり 見よう見まねで覚えたよ 凄いでしょ？
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急にダンスから始まる話。

彼がリスペクトしている辻本知彦氏に指南してもらった「ダンス」を、“一人きり”と言うだろうか。

どうしても疑問に思えてならないな。

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異常な世界で凡に生きるのがとても難しい
令月にして風和らぎ まあまあ踊りましょ
るるらったったったった
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凡に生きるのが難しいのは非凡であるからこそ、であるようにも思う。

非凡な彼から見れば、正常なはずのこの世界こそが異常に映る事もあるのかもしれない。

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獣道 ボロ車でゴーゴーゴー
ねえどうしよ？ここどこでしょ？
ハンドルを手放してもういっちょ アクセルを踏み込もう
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異常な世界に警鐘を鳴らす意味を持つこの曲で、コントロールを失った状態でさらにアクセルを踏み込もうと言うだろうか。

どの側面からどう考えても、いけないな。

やはり「ダンス」はストレートに「ダンス」ではないらしい。

一人きり見よう見まねで覚え、制作し続けてきたものはやはり楽曲であり、ねえどうでしょ？それなりでしょ？凄いでしょ？と問われれば、「はいおっしゃる通りで。」と、それ以外に答えようがない。

おこがましくもしっくりと、彼自身がここまで辿ってきた道のりの苦しさを、素直に真っ直ぐに打ち明けるように歌った曲として、合点がいくような気がする。

「ハンドルを手放して もういっちょ アクセルを踏み込もう」は、逆に彼が自身に問うてきた言葉。

制作過程でもう一歩踏み込まなければ見つけられない何かを見出しては、楽曲に落とし込んできた。

そうしてここまでやってきたのだと、言っているのではないだろうか。

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非常にやるせないことばかりで全部嫌になっちゃうな
今日はいい日だ死んじゃう前に なあなあで行きましょ
るるらったったったった
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なにもかも全部嫌になって地獄の奥底まで落ちるだけ落ちて、もうそれ以上沈めなくなってあとは自然にふわっと浮上してくれば「なんだ、いい日じゃん。」って妙に鮮明に周りが見渡せる時って確かにあるある。

そんな感じで「でしょましょ」が文頭で言った両面の性質を持っているとするなら、やはりサビの「なあなあでいきましょ」にも、両面のメッセージ性があるのだろうなと思う。

人に呼びかける「なあなあでいきましょ」救う性質を持つ。自分に言い聞かせる「なあなあでいきましょ」癒す性質を持つ。

そして最後にアンサーしたい。

「ねえどうしよ？ここどこでしょ？」に対してのアンサー。

米津玄師はライヴMCでもパプリカインタビューでも、「あなたの心にほんの少しでいいから居場所が欲しい。あれば嬉しい。」と、そんな話を繰り返してきた。

それと照らし合わせてみれば…あなたが今いるその場所は、あなた自身が作り上げ守り抜いてきたからこそ“ここ”にある、まぎれもないあなたの居場所「でしょ？」

筆者紹介

インザファーム（@inthefarm_m）

映画会社の制作・宣伝を経て現在は主婦。DTPデザインを少々。Webデザインも少々。作詞家を志望し地味に活動中。