前説
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3月にリリースされたアルバムの中で、一番オススメしたいアルバムは何?と問われたらけっこう悩む。
SEKAI NO OWARIの新譜も良かったし、sumikaの新譜も良かったし、a flood of circleの新譜も良かったし、THE NOVEMBERSの新譜も良かった。
だから、正直今はまだこれが一番というアルバムを決めることができない。
けれど、今、人に一番勧めたいアルバムは何かと問われたら一枚のアルバムが頭に浮かんだ。
この記事では、そのアルバムを推させてほしい。
そのアルバムとは、私立恵比寿中学の「MUSiC」である。
決して僕は、エビ中の活動を丁寧に追いかけていたわけではない。ファンとは到底呼べないような人間である。
だから、このアルバムがエビ中のアルバムとしてどれくらいの作品なのか?という眼差しで語ることはできないし、ファンがこのアルバムにどのような評価を持っているのかは正直わからない。
けれど、僕は単純にこのアルバムが好きだった。
3月に発売されたたくさんあるアルバムの中でも、特にお気に入りの一枚だった。
この記事では、このアルバムのどういうところが「お気に入り」なのかを、簡単に書いていきたいと思う。
本編
曲が良い
シンプルに言ってしまうと収録されている曲がすごく良い。
まず、冒頭の「Family Complex」。
この歌は岡崎体育が作詞作曲を手がけた歌なんだけど、メロディーを聴くだけでも「ああ、岡崎体育の歌だ」ってわかるメロディーになっている。
岡崎体育のソングライティングとしての良い部分が存分に詰まった作品になっている。
この歌の他にも、良い歌がたくさんある。
吉澤嘉代子が作詞作曲を手がけた「曇天」、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴が作詞作曲を手がけた「シンガロン・シンガソン」、宮藤官九郎が作詞、ニューロティカのKATARUが作曲、編曲はニューロティカが手がけた「元気しかない!」などなどなど。
そして、どの歌にも共通しているのが、どの曲も聴けば一発で「ああ、この人が作った歌だな〜」というのがわかるという作家性。
この歌なんて、ミセス感、めっちゃあるでしょ???
これってどういうことかと言えば、作り手の個性がキチンと輝いた歌を提供してもらっているということになる。
曲の提供者は妥協なく、本気の歌をエビ中に提供したということになる。
で、普通このように個性が強い歌を、中途半端な実力の歌い手が歌うことになると、「歌に歌わされている」感が出てしまいがちになる。
提供されたその人の歌じゃなくなってしまっていることが多くなる。
いや、お前が歌うんじゃなくて本家が歌ってくれよ?そっちの方が良い曲になるからさ?
そういうことになりがちになってしまう。
けれど。
エビ中の場合、そんなことが一切ない。
どの歌も、見事に自分たちの歌にしてしまっているのだ。
これって簡単そうに見えて、凄いことである。
クセの強い歌を完全に自分たちの歌にしてしまっているのだから。
エビ中の歌唱力が優れているからこそできることだし、単に歌が上手いというだけじゃなく、言葉に感情を込めて表現する力が優れているからこそできる芸当のように思う。
ほんと、エビ中は歌うというパフォーマンスが抜群に優れている。
しかも、その表現力の振り幅が凄い。
例えば「元気しかない!」のようなユーモアのある歌であれば、元気良く楽しく歌を歌いきってみせるし、
「曇天」のような、ちょっと背伸びをしたような歌であれば、聴いているこっちがドキリとするような大人びたトーンでしっとりと歌いきってみせる。
作り手が作家性を発揮して生み出した優れた曲を、高い表現力を持ってして、自分の歌にしてしまうエビ中。
そんな歌が12曲も収録されているのだ。
良いアルバムじゃないわけがない。
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個人的に好きな歌
そんな僕が特に好きな歌は「イート・ザ・大目玉」と「曇天」だ。
「イート・ザ・大目玉」は、いしわたり淳治が作詞を手がけた歌で、独特のユーモア溢れる言葉選びが展開されている。
その一方で、サウンドは骨太で硬派な本格派のバンドサウンド。
というのも、BACK DROP BOMBの有松益男がドラムを叩いたり、元ヌンチャクの溝口和紀がギターを演奏していたりするのだ。
まるで、90年代のAIR JAMかよと突っ込んでしまうようなメンツである。
そりゃあバンドサウンドはカッコよくなるわけだ。
とはいえ。
このご時世、バンドサウンドが本格派のアイドルソング自体はそこまで珍しくないのかもしれない。
重要なのは、エビ中がそういう荒々しいサウンドをしっかり乗りこなし、完全に自分たちの歌にしていることである。
この歌は、アレンジも元ヌンチャクの溝口和紀が行っている。
つまり、ロックバンド畑の人が作った歌を、ポップな感性のある人がアイドルソングに仕立て上げました、みたいな生ぬるさがない。
細部まで妥協なき骨太なバンドサウンドが展開されている。
きちんと曲を聴いてみても、本気で楽器を鳴らしていることがよくわかる。
かなり攻撃的なギターサウンドに、エビ中のメンバーのコーラスが見事に交わる。
それがとてもカッコよく、とても美しいのだ。
何より、この歌、全編ハモっているんだけど、このハモリがとにかく綺麗で、聞き惚れてしまうのだ。
まさしく格好良さと美しさが同居した、すんげえ歌だなーと思う。
もう一つ名前を挙げた「曇天」は、先ほども述べたように、吉澤嘉代子が作詞作曲を担当している。
元々作詞の奥深さや繊細さで定評のある吉澤嘉代子であるが、この歌はむしろエビ中が歌うことによって、吉澤嘉代子の楽曲が持つ魅力を最大限まで引き出しているように感じる。
吉澤嘉代子の歌としても新境地な感があるし、エビ中が歌うからこそ多幸感を感じさせつつも、不思議と切なさも感じさせる、幻想的で儚げな一曲になっている。
まとめ
昨年もそうだったんだけど、エビ中の歌は何度も聴きたくなる不思議な魅力がある。
確かに、単純なる歌の「上手さ」だけなら、もっと上の人だっているのかもしれない。
でも、作家性が宿った複雑な歌を完全に自分のものにしてしまう表現力、という部分においては、エビ中の歌唱力は随一であると僕は思っている。
素直に良い曲たちが、エビ中が歌うことで、さらにカラフルになって、ワクワクさせるものに変わっていく。
エビ中は、そういう力を持っている。
だから、エビ中が歌う歌が大好きなのだ。
「MUSiC」というアルバムを、何度も何度も聴きたくなってしまうのだ。
もし、このアルバムを聴いていないという人がいるならば、悪いことは言いません。ぜひ聴いてみてほしいのだ。
予想以上に、めっちゃオススメですから。
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