King Gnuこそある種の”カメレオン”である説

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King Gnuは、ここ最近、けっこう短いスパンで新曲を出している。

「BOY」「一途」「逆夢」と立て続けの印象である。

ところで、勝手な印象ではあるが、リリースのスパンが短いと「既視感のある曲」がリリースされがちだと思ったりする。

いや、もちろん曲ごとに魅力あふれるリリースをするだろう。

けれど、実態がどうであれ、どうしても同じボーカルが歌い、同じ人間が曲を書くとなると、少しずつ既視感が増してしまうと思うのだ。

これは、作り手側の問題というよりも、聞き手の話である。

ライトな聞き手が耳慣れていくという呪縛から抜け出すのは、なかなかに難しいと思うわけである。

だが、King Gnuを見ているとそういうジレンマを取っ払った地点にいるように感じてくる。

2022年2月末に発表された「カメレオン」を聴くと、そのことを強く感じるわけだ。

King Gnuの「カメレオン」の話

繊細すぎるボーカル

「カメレオン」で特に印象的なのは、井口の繊細すぎるハイトーンボイスであろう。

歌い出しから楽曲が終わる最後まで、徹底的に繊細なボーカルが炸裂している。

King Gnuの音楽において、井口の繊細すぎるボーカルは代名詞的な存在であろう。

聴きようによっては女性の歌声にすら聞こえてしまう澄み切ったその歌声がきっかけで、King Gnuの音楽に魅了された人はきっと多いだろうから、当然の話であろう。

でも、King Gnuって「それ」だけで押し通しているバンドではない。

ここが大きなポイントであろう。

これは、ボーカルの話だけに限定しても言えよう。

というのも、King Gnuって常田もボーカルを取るバンドだから。

場合によっては、井口のハイトーンボイスすらもフックのひとつになっていき、色違いのボーカルのコントラストで魅せる楽曲も多いわけだ。

最近の曲で言えば、「一途」はそういう色合いが強い歌だろう。

特にシングル曲だとアッパーな楽曲であることも多く、パートごとのアクセントを色濃くするために、井口と常田で秀逸にパートを分ける構成にすることが多いのだ。

そう。

ここ最近の楽曲は、そういう分け方で魅せる歌が多かったわけだ。

そんなタイミングで投じた「カメレオン」。

この歌は、井口の繊細すぎるボーカルが、とにかく存在感を強めた一曲となっている。

常に井口がメインのメロディーを紡ぎ、ドラマチックに楽曲を彩っていくわけだ。

ここ最近の楽曲とは違うパート割で展開していくからこそ、その聴き心地がまったく違ったものになるわけだ。

しかも。

King Gnuの楽曲って、アグレッシブなサウンドで魅了することが多くて、どれだけポップな装いの楽曲でも、ふいにゴリゴリのバンドサウンドで魅せることも多い。

しかし、「カメレオン」においては、そういうアプローチがかなり控えめになっている。

「逆夢」でも、ふいにゴリゴリのバンドアンサンブルを展開することがあったが、「カメレオン」においては、なるべくそういうアレンジを排している。

これが結果として井口の繊細すぎるハイトーンボイスを冴え渡らせる結果となっている。

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複合する要素の融合

でも、単なるメロディー重視の感涙系バラードかといえば、そんなこともなくて。

例えば、エフェクトをかけたボーカルを挿入させるパートは、そんな要素のひとつである。

「泡」のときに見せたような、スタイリッシュなボーカルアプローチを、「カメレオン」でも用いているのだ。

こういうアレンジのひとつひとつが、結果として単なる<聴かせるバラード>とは違った存在感を放つことになる。

また、サウンド全体の印象としても、そう感じる要素はいくつもあって。

淡々としている印象の「カメレオン」であるが、細かく鳴っている音に耳をすませると、他の楽曲では聴かないような音がいくつも鳴っていることに気づく。

井口の歌い始め、最初のサビのパートでも、そのことを実感する。

この辺りは聴いてもらうと、きっと感じてもらえるのではないかと思う。

不思議な響きを与える音を楽曲世界に溶け込ませることで、絶妙なアクセントを生み出すことになるわけだ。

複合的な要素を組み合わせて、楽曲を魅了している。

故に、他の楽曲にはない新たな響きを「カメレオン」から感じることになるのである。

まとめ

といった感じで、「カメレオン」だからこそのアプローチをいくつも散見することができる。

少なくとも、近いタイミングで発表された楽曲になかった魅せ方を至るところで差し込んでくることがわかる。

だからこそ、King Gnuにはいつも魅了されるんだよなーと、そんなことを思うのである。

2022年も、このバンド、容赦がないことを実感する、そんな春の始まりなのである。

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