前説
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以前、質問箱で哲学的な歌詞のバンド特集をやってほしいという声があった。
哲学的な歌詞・・・。
なんとなくわかりそうで、わからない「哲学的」という言葉。
正直、哲学的という意味にとらわれると、なかなか難しそうだったので、今までの人生レベルで刺さったバンドやアーティストの歌詞を簡単に紹介してみたい。
本編
Mr.Children 「終わりなき旅」
人生がひとつのテーマになっているこの歌。
この歌に背中を押されたリスナーも多いのではないだろうか。
綴られている言葉はわりと素朴な内容のものだが、単純な応援歌にはない希望をこの歌は与えてくれるのである。
桜井の声って、独特の鋭さがあって、ポピュラリティーもあるんだけど、そこ知らぬ暗さも同居しているムードがあって、「終わりなき旅」の声も、そういう独特の渋みみたいなものを感じるのである。
だからこそ
閉ざされたドアの向こうに
新しい何かが待っていて
きっと きっとって 僕を動かしてる
っていう、シンプルなフレーズに言葉の意味以上の深さを感じるのかもしれない。
もちろん、活動休止開けのタイミングでリリースされたとか、そういうバンドの物語としてみても、この歌の意味は大きい気がするしね。
こういう自問自答的な歌詞を歌わせたら、やっぱりミスチルって別格だよなーとつくづく感じるのである。
BUMP OF CHICKEN 「ray」
ことあるごとに記事にも書いている気がするが、「HAPPY」と「ray」の眼差しは、とても哲学的だと思うのだ。
希望と悲しみを織り交ぜた、藤原ならではの眼差しで的確に繊細な感情を言語化しているように感じるのである。
冷静に歌詞を読んでみたらわかるけれど、明るい曲調に対して、けっこう辛辣な言葉が歌詞になっている。
楽しい方がずっといいよ ごまかして笑っていくよ
大丈夫だ あの痛みは 忘れたって消えやしない
これはサビの歌詞のワンセンテンスであるが、ここにあるのはある種の諦念と読み取ることもできる。
どういう境地に立てば、こういう眼差しの言葉が紡げるんだろうと驚くばかりなのである。
結果的にこの歌は痛みすらも肯定するような結論に導かれるわけだけど、重要なのは普段の生活の中なら「なかったもの」にしてしまう感情にもスポットを当てているということだと思う。
そして、そういう痛みすらも自分を作り上げている要素だということをきっちりと教えているところなのではないかと思うのだ。
クリープハイプ 「オレンジ」
持論があって。
クリープハイプの歌詞って、若い人にももちろん刺さるんだけど、きっとそれ以上に40歳くらいのおっさんとかにこそ刺さるのではないかと思っていて。
ある程度、酸いも甘いも経験した人だから、より刺さる言葉が並べられているような気がするのだ。
例えば、銀杏BOYZなんかだと「青春時代」だからこそ刺さったみたいなところがあるんだ。
けれど、クリープハイプの場合はもう少しその先の人生を過ごすことで、よりその言葉がリアルに感じられる、みたいなところがあるのかなーと思っていて。
これはきっと歌における他者との関係がちょっと違うからだと思っていて。
クリープハイプの場合、社会経験をすることで、その歌詞にある屈折みたいなものがよりクリアになるのかなーなんて勝手に思っている。
話が遠くにいったけれど、「オレンジ」という歌もぱっと聴けば、オレンジ色のハッピーに進んでいく歌に見えていくけれど、ある程度人生経験を重ねた人からすれば「あ、この二人はきっと上手くいかないんだろうな・・・」みたいなものまでもが見えてしまい、この歌が描くちょっとした希望すらも刃に見えてしまう・・・みたいなところがあるのかなーなんて勝手に思うのだ。
そして、クリープハイプのギターのアルペジオはそういう余計なものをいちいち想像させてしまう、余韻があるのである。
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スピッツ 「青い車」
死というワードが登場しないのに、死のことを考えてしまう歌。
それがスピッツの歌の大きな魅力のひとつだと思う。
スピッツの歌って本人の意図とは別にして、歌が描く枠組み以上のものを想像させてしまう強さがある。
この二人ってどうなってしまうんだろうとか、このフレーズは何を描いているんだろうとか、そういう思考を深めていく魅力が隠されているように思うのだ。
この「思考する」ことこそが、哲学的という言葉の本質に近いものだと思うんだけど、そう考えた時、スピッツの歌にある”答えは出ないけれど、考えさせられる”という性質こそが、より哲学的な歌詞に近いものなのかなーと思うのである。
まあ、スピッツの場合、哲学的というよりも芸術的という言い方の方が的確な気はするんだけどね。
Official髭男dism 「ビンテージ」
ヒゲダンは良い子すぎる、みたいなことを言う人がいる。
人生の屈折を歌から感じさせないみたいなことを言う人がいる。
確かにクリープハイプのようなテイストとはまったく違うとは思う。
でも、ポップスにありがちな平面な解像度の歌かといえば、そんなことはないと思っていて。
ヒゲダンの歌に特徴があるとすれば、「悟り」の精神なのかなーとは思っていて。
こんなことを言えば、どうせこんなふうに言われる。
SNS世代だからこそ、よくも悪くも違う立場や価値観の相手の想像力を先回りしてしまう。
ヒゲダンの歌には、そういう傾向がわりとあるように思うのだ。
「ビンテージ」も本質的には、悟ってしまうが故に、先回りしてしまう歌である。
でも、この歌は最終的にそこを反省し、もうひとつ違うステップに踏み出している。
そして、負の側面も肯定する意志を見せるのだ。
この感じがとても良いなあ―と思っていて。
そして、そういうフラットな視座を与えてくれるフレーズのひとつひとつが良いのである。
まとめ
というわけで、単純に自分がお気に入りの歌をいくつか紹介してみました。
まあ、ベタな曲選なので、特段まとめることもないんだけど、自分は諦念と希望が入り混じっている歌が好きなのかな―と改めて思った次第。
あなたはどんな歌詞に思考をドライブさせられますか。
よかったら一度、考えてみてはいかがでしょうか?
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