あいみょんの「満月の夜なら」について書いてみたい。
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前置き
この歌は満月の夜に溶け合う二人の恋愛模様を描いた、そんなディープな作品である。
あいみょんらしい過激さを上手に落とし込んだ作品という感じ。
この歌は、タイアップ作品というわけではないので、歌詞を見ながら色々と考えてみたい。
考察
「君のアイスクリーム」という、大久保佳代子ばりの下ネタっぽいフレーズで始まる出だし。
そこから先も、捉えようによっては下ネタにしか見えない官能的なフレーズが踊っている。
まあ、考えたら男女二人が夜の密室でやること言ったら……って話なわけで。
とはいえ、これはあいみょんの作戦であるとも言える。
捉えようによってはどうとでも解釈できる抽象的はフレーズを並べることで、聴き手のフィルターをあぶり出しているわけだ。
僕のような煩悩のカタマリの人間には全てが下ネタに見えてしまうという罠。
本当はもっと崇高な意味があるのかもしれないのに。
ちなみに他媒体のあいみょんへのインタビューに読んでみると、聴き手がそれぞれどういう意味なのか考えながら、各々の解釈に従って聴いてもらえたら嬉しいと述べている。
もちろん、官能的に捉えるようにしているのは意図的とのことで、歌詞から大久保佳代子が見えてしまう僕の見解自体も間違いではないということである。
だが、それだけでこの記事を終わりにしてはまずいので、もう少し色々と考えてみたい。
歌詞に出てくる色んな色
この歌には、色んな色が登場する。
歌詞から拾うだけでも、白、ピンク、杏色とある。
また、直接色の単語を出していなくても、「溶かして燃やして」というサビのフレーズでは赤がイメージされるし、「夜」という単語からは黒が連想されるし、表題となっている「満月」は黄金色を連想させる。
解釈によっては、暗い部屋でイチャイチャしているだけのリア充の歌、というふうに捉えられるこの歌だが、どこか歌詞世界に奥深さを感じるのは「世界観が色に囲まれているから」と言えるかもしれない。
ところで、あいみょんはなぜこんなにたくさんの色を歌詞に使ったのだろうか?
狙いは色々とあるとは思うが、個人的に感じたことを述べていきたい。
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まず、この歌は映像的な描写をするフレーズが多く、一般的な恋愛ソングのように「主人公の心理」を述べるフレーズは極力削ぎ落とされている。
こうなると、登場人物の心情は見えにくくなるものだが、映像描写を通じて色を鮮やかに描くことで、その描写に感情が宿りはじめる。
例えば、ピンクの頬なんてその最たる例で。
このフレーズが出てくるだけで、「あ、君はいま羞恥の感情を持っているんだろうな」と思えるわけだ。
あるいは、歌詞に出てくる色の変化=二人の心情の変化と捉えることもできる。
元々は白かったはずの二人の感情(要は恋愛感情なんて持っていなかった)は、ピンクという名のドキドキのフェーズを経て、燃えるように赤くなっていくみたいな。
そして、結び合った二人は最終的に月と同じ「黄金」の境地に到達するのである。
なぜ月は満月なのか?
なぜ「満月の夜」なのかは気になるポイントだと思う。
変な話、三日月でもいいはずなのに、なぜ満月の夜なのだろうか?
おそらく、二人はそれぞれ欠けた存在であり(特に心が)、個々だと三日月のような存在なのだ、ということを意味しているのだと思う。
そんな欠けた部分を持つ二人は、欠けた部分を埋め合わせるようにして距離を接近させ、暗い部屋で二人きりになった。
この長い夜、満月の出ている間に、三日月の僕らは少しでもお互いの欠けた部分を埋めるべく、夜の営みを行うのである。
だから、空に出てる月は満月である必要があったのだ。
近くても近くならない二人
普通に歌詞を読めば、二人の距離は身体も心も近くなっていって、欠けた心を満月のように二人で満たしていく歌、というように読めるのだが、MVをみてみると、登場する二人の男女は一度も交わることなくすれ違っている。
もちろん、歌詞とMVの世界は別物であろうが、歌詞もよく読んでみると、「今僕が君に触れたならきっと止められない最後まで」という言葉が「もしも」という仮定法で接続されていることがわかる。
サビの歌詞もよく読んでみると、願望と望みが言葉として託されているだけで「リアルに今起こっていること」は言葉にされていない、というようにも見える。
もしかしたら、夜が長く感じてしまうのは本当はそこに「君」がいないからであり、もし今日が「満月の夜なら」君とこんなことやあんなことができたのにーという悲しみが込めた歌なのだ、というふうにも捉えられることができないだろうか?
だから、官能的なフレーズは全て比喩で固められ、映像景色も色でボヤかされるのである。
全ては空想だから。君がいることも全部。
だから、タイトルも「〜なら」という仮定法な言い方をしているのだ。
僕の心も、空に浮かんでいる月も、満月とは程遠い欠けたままなのである。
という、そんな妄想。
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