米津玄師「orion」歌詞の意味は?解釈と考察!
米津玄師の「orion」の歌詞について書いてみたい。
この歌は「3月のライオン」のエンディングとして書き下ろされた歌であり、米津玄師はこの歌を作るにあたって原作の漫画を読み直したとのこと。
で、この歌は「3月のライオン」の主人公である桐山零をイメージして作ったということだ。
とはいえ、僕は「3月ライオン」はあんまり詳しくないので、その辺は華麗にスルーしながら歌詞をみていきたい。
作詞:米津玄師
1番Aメロについて
あなた=輝かしい存在。
眩しくて目眩がするのだから相当の輝かしさである。
また、次に出てくる、それ=あなた、であろう。
つまり、あなたはまるで空から不意に落ちてきた七色の星のような存在であると言っているわけだ。
弾ける火花みたいに〜というのがあんまりしっくりこないので、これは置いておこう。
ちなみにこの歌に登場する「僕」のイメージは根暗であり、すごく引っ込み思案な印象である。
だから、何か始めてもすぐに立ち止まってしまうのだろう。
だけど、あなたの明るさおかげで、僕はまた歩いていけることを教わった。
「僕」にとって「あなた」はまるでカウンセラーさんみたいな存在である。
いずれにせよ、最初の段階で登場人物を整理させ、お互いのキャラクターの設定も完了し、感情移入させる土台を作り切ったのは流石は米津といったところである。
では、歌詞の続きをみてみよう。
1番サビについて
「神様」という言葉が出てくるが、逆に言えば神様という超人的な存在にお願いを叶えてもらえない限り、あなたと結ぶことはできないことを予感させる。
僕にとってあなたが大切なことはわかるが、ずっと離れないようにするというのは、えらく横暴な話である。
まあ、あなたに面と向かって「ずっと一緒にいてよ」と言えないからこそ、神様にお願いをするわけだけども。
ところで、僕は「星座のように二人を結んでほしい」と願うが、これはどういう意味を持っているのだろうか。
お互いが星座を構成する星になり、そこに線を引いて星座にする、ということだと思うが、お互いが星になれば確かに離れることはないけど、そんなに距離的に近くはないように思う。
なんか変な話だ。
まあ、「結ぶ」というのが大事なのだろう。
だって空に輝く星の並びに本来意味なんてないけれど、人間がそれを結んだからこそ星座という意味ができたわけだ。
それと同じように、僕とあなたの離れた距離も結ぶことで意味を宿し、それを「特別な関係」に消化させるようにしたい、ということなのだろう。
星座になったらもうニコイチなわけで、離れることもないわけだし。
けれど、これって元々繋がりがあればわざわざ切望することではないような気がする。
つまり、繋がりがないからこそ、無理矢理繋がりを求めている気がするのだ。
だって、カップルであれば星座になって結びたいなんて願う必要はない。
元々赤い糸で結ばれてるのだから。
片想いだからこそ、「結びたい」と願うわけだ。
この辺り、どう捉えたらいいのだろうか。
とりあえず続きの歌詞をみてみよう。
2番Aメロについて
「上手じゃない」とは何が上手じゃないのだろうか。
なんとなくだけど、あなたと上手くコミュニケーションが取れていない感じが伝わるし、けれど、それでも僕とコミュニケーションを取ってくれているあなたという存在もなんとなく伝わってくる。
解れた袖の糸で作る星座ってどんなんだろうと想像するけど、それは誰がどうみても星座なんかじゃないわけで。
お互いの指を星とするなんて、なおのこと無茶苦茶なわけだけど、でも僕とあなたはそんな無茶苦茶な想像すらも共有できる関係なわけで、心の繋がりの深さがこのエピソードで語られる。
僕とあなただからそれが「星座」になるわけだ。
けれど、そこにあるモチーフが解けた袖の糸というのは、不穏な感じがする。
星座のように結んでほしいと願う僕に対して、解れるというのは対極のイメージであり、つまりそれはあなたとの別れを意味するように感じるわけで。
だからこそ、あなたがそこにいてくれるだけでいいなんてことを言っちゃうわけなのである。
2番のサビについて
今ならどんな困難も愛して見せるのに、の「のに」という言葉がキモだ。
なんで「のに」なの?
今も二人が一緒なら「のに」みたいな逆接を使う必要はない。
目のことを「眼」と表現する辺りも、意味深だ。
これは瞳のことではなく、心の中にある眼差しみたいなことも意味してる可能性がある。
そんな眼が淡い色をしてるということは、眼というものが薄くなり、消えかけているようなら景色を想起させる。
また、夜明けが「澄んでいる」ことは何を暗示しているのか。
これは心象風景のようにみえるわけで、すごく落ち着いてる心の感じを表しているようにみえる。
僕は困難も乗り越えられる状態の、いわば赤のメラメラモードなのに、あなたは淡くて澄んだ感じのする落ち着いたブルーに近いイメージ。
この対比は何を意味するのだろうか。
続きをみてみよう。
Cメロについて
陶器といえば、割りやすく、割れたらもう戻れないものである。
白は純粋さ、染まっていないことを暗示している。
つまり、真っ白い陶器とは、純粋な心のことを指しているのだろう。(傷つきやすい心なのだろう)
まあ、この比喩がかかるのは「声」なわけだが、言わんとすることはわかると思う。
僕の心は嵐のように荒れていた。
闇の中にいるような気分だった。
つまり、僕は病んでいたわけだ。ずっと。
そんなときに僕の頭上に落ちてきた煌めく星。
これはもちろんのあなたのことであり、僕にとってあなたがなぜこんなにも大切なのかを改めて説明しているわけだ。
だから、僕はあなたとずっといたいと望むわけだ。
けれど。
ラストのサビについて
そんなあなたにお別れをしなければならない予感。
それが嫌だから神様にお願いをする僕。
けれど、神様なんていないし、結ぶこともなく終わるわけだ。
だから、この歌の末尾は「ほしくて」というすごく中途半端な言葉で終わるわけだ。
なんとも切ない話である。
ちなみに米津玄師はこの歌詞をかくにあたって「3月のライオン」の主人公桐山零をイメージしたという。
けれど、自分は桐山零じゃないから結局のところ自分の言葉になってしまうわけで、結果的には自分のことを歌った歌になったとも彼は語っている。
常に孤独を抱えてきた米津だからこそ、この歌にもどこか儚げさが宿っているのかもしれないし、僕が完全なリア充になることはないわけだ。
ちなみにタイトルのorionはオリオンのことであり、オリオンとは星座のひとつである。
冬の星座の代表である。
僕が君と結んで作りたかった星座はきっとオリオン座だったのだろう。
なぜオリオン座だったのかはわからないけれども。
ちなみにオリオンとは狩人のことである。
僕はあなたを狩ろうとして神様にお願いしたが、それは上手くいかなかったみたいな。
この歌は、そんな寓話が根底にあるのかもしれない。