
最近ずっとリピートしている楽曲のひとつがNEEの「熱暴走」だ。NEEらしいトリッキーさをきちんと担保しつつも、3人体制になったNEEだからこその変化と力強さを伴わせた作品だと感じる。
いやね、マジでこんなに全てのパートでワクワクする歌もそうはないと思うのだ。
変な言い方をすると、全部がサビ。どこを聴いてもインパクトが絶大で、脳内にその音楽が残るのだ。しかも単にメロディーが中毒的なだけではなく、サビ終わりの間奏でも魅せてくるし、ボーカルの切り替わり方も絶妙。3人それぞれがボーカルを取るからこその魅せ方でワクワクを持続させる。なんなら、メロディーや楽曲構成でも強烈なフックが多数あるのに、サウンドやボーカル、歌詞のワードチョイスも同様かそれ以上にインパクトがあるというのが強すぎる。
NEEというバンドがいかに素晴らしいか。そういう魅力を余すことなく詰め込んだような作品である。
では、なぜそう感じるのか?というところにスポットを当てながら感想を書いていきたい。
楽曲構成軸の話
「熱暴走」は、まず楽曲の全体構成が面白い。冒頭で全部がサビだということを書いたが、本当にどのパートもインパクトがあるのだ。
意味のない明日を繰り返し続ける
忘れられずに 哀 京 京
意味のない明日を繰り返し続ける
瞬間気圧低下 哀 哀 哀
冒頭のこのフレーズだけでもメロディーが頭に残る。特に「哀 京 京」のメロディーの載せ方。Aメロは淡々と処理する楽曲が多い中で、冒頭のこのフレーズだけでもキャッチーかつ頭に残るメロディーを緻密に入れ込んでいるのが、まず巧みだ。
とはいえ、楽曲全体でみると、確かにこの部分は比較的ゆったりとしたパートではある。だからこそ、楽曲がブーストしていく目まぐるしい展開では、より強い印象を残すことになる。
Bメロのお互いのパートを歌い合う流れも良い感じだし、その後の「忘れた生き方と共存する / 終わりが見えなくてもいいから / 愛してもいいか」と問いかける部分のパンチ力も強烈。で、「あ、ここがいわゆるサビかあ〜」と思って油断をしていると、「散々な 夢を見た僕らは」のフレーズで、さらにもうひとつギアを入れるようなノリで楽曲をさらに盛り上げるのが強い。「愛してもいいか」と「愛していいか」という微妙に言葉とメロディーが異なるフレーズを対比させることで、他の楽曲にはない圧倒的な高揚感を生み出すのだ。
1番が終わった段階でもとんでもない音楽体験をしているぞ、今という気分になるんだけど、1番のサビ終わりの間奏がまたトリッキーで。ハードコアよろしくのゴリゴリのサウンドで展開していたかと思うと、ふいにゆったりモードのスカのようなビートメイクで意表をつくのだ。このコントラストがマジで素晴らしい。
ちなみに2番のサビ終わりでは、1番のサビ終わりとはまったく異なるエッジの効いたヘビィなサウンドで、特にギターが荒ぶりながら「細く、それでいてダイナミックに」ギターが展開を作る流れになるのだ。しかも、女性の声のようなサンプリングも巧みに散りばめるというアイデアとセンス。メロディーや構成だけでも豊富で濃密な体験を与えてくれるのに、サウンドでも「サビ」をやるぜと言わんばかりに、目を離せない展開が目白押しなのだ。
マジで、この作品は一聴してみてほしい。
新生のNEEとはなんとなく距離を開けてしまったというリスナーほど、絶対に目撃すべき音楽体験がそこにある。確かにあの頃とは異なる境地ではあるけれど、良い意味で想像を裏切られまくる高揚感にゾクゾクすることは間違いない。
サウンド軸
先ほども簡単に書いたが、マジでサウンドが変幻自在。確かに3ピースバンドとしてのシンプルさがベースにあるわけだが、細くてソリッドで、どしりとくる重たさもあるというパワフルさ。かつ、しなやかに魅せるところは丁寧に柔らかく魅せているのだから、いかにこのバンドのアンサンブルに隙がないのかがよくわかる。ギターの音の変化だったり、ドラムのビートの流れだったり、ベースの鋭さだったり、それだけで満足になる要素が色んなところで詰まりまくっている。
ボーカル軸
バランスを取りながら、それぞれのボーカルが登場する構成なのが良い。激しいシャウトもあるし、キュートなボーカルの流れもあるし、マジで芳醇なボーカル体験を感じることができる。そのうえで、ラストの「愛してもいいか」をこれまでとは違うボーカルで締めくくる流れが秀逸で、結果として最後にきちんと一番インパクトが残る流れになっているのが良い。
歌詞軸
歌詞のチョイスも良い。というか、メロディーに対するはめ込み方が素晴らしい。そのうえで、NEEらしく、繊細に内面にアプローチしたり、ふいに胸にぐさりと刺さるフレーズ選びも健在で、歌詞でも気になるポイントを色々と散りばめているのが良い。ダークさもあるし、でも妙な明るさもあるし、NEEの歌らしいエネルギーをきちんともらえるし・・・。爆発的なサウンドだからこそ、歌詞のトーンが本当に絶妙で、ボーカルの展開のさせ方とあわさって、色んな意味で見事だと思うのだ。
まとめに替えて
結論、NEEの「熱暴走」、マジで良い意味で”暴走”していて、マジでやばい。
そういうことがついつい伝えたくなった、そんな話。