Mr.Childrenの「ケモノミチ」がラスボス感と優しさで融合されている件

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世の中には色んなアーティストがいて、それぞれのかっこよさがあると思っているが、Mr.Childrenは少しかっこよさの硬度が違うよなーと思っている。

自分はよくMr.Childrenは”ラスボス感がある”というような形容の仕方をしている。

例えば、ロックフェスにMr.Childrenが出演するとする。

ロックフェスというのは色んなバンドが連続して出演していて、どこかトリのバンドにバトンを繋いでいく、みたいな部分もあって、その流れだったり、その日の順番だからこそのドラマ性がフェスのドラマチック性に繋がるケースも多い。

でも、Mr.Childrenって安易にトリ以外の出順で出演できないし、オーラというか風格があるように思うのだ。

いや、もちろん、過去にMr.Childrenの次の出順で出演したバンドはいくつもいるし、そのバンドなりアーティストなりはきっと素晴らしいライブをしたとは思うんだけど、でもMr.Childrenが作り出す空気感というのは、安易には「その次」を許さず、最後に登場する大物感がどことなく漂っている印象を受けるのだ。

特に自分は、物心がついたときにはMr.Childrenって大物アーティストで、大きなセールスを叩き出していたバンドだったので、よりそういうイメージが強いのかもしれない。

ちなみに、先ほどフェスの例を出して、Mr.Childrenのラスボス感を言葉にしてみたけれど、こういう話をすると、ファンの母数が多いからそういう風に感じるだけでは?という指摘が入るかもしれない。

もちろん、実際にフェスに出ると、Mr.Childrenはたくさんの「Mr.Childrenのファン」を集めるし、それがMr.Childrenの凄さをより際立たせている部分もあるとは思うのだが、Mr.Childrenってライブがどうとか、売れている楽曲を持っているとか、そういうものを差し引いたとしても、やっぱりラスボス感が漂っていると、自分は思ってしまうのである。

ニューアルバムに収録される「ケモノミチ」を聴いて、改めてそんなことを思うのである。

Mr.Childrenっぽいアレンジと、それを超克するパワー

ある程度のキャリアのあるバンドだと、わりと壮大なバラードソングってひとつやふたつ持っていたりする。

で、そういうバラードソングをドラマチックにする場合、Aメロではシンプルにアコースティックギターでコードを弾いて、シンプルなアレンジ構成でボーカルが淡々としたメロディーラインを歌い、Bメロで少しずつメロディーに高低差を作りながら、アレンジに少しずつ色んなサウンドが混じり、サビではストリングスがどかーん、ボーカルのハイトーンもどーかん、Aメロではそこまで存在感を示さなかったバンドサウンドがどかーん・・・・というようなアレンジ構成で楽曲をドラマチックにする、というケースが一定数あるように思うのだ。

Mr.Childrenもまた、そういうアレンジをいくつか行ってきた実績があるし、「ケモノミチ」もまた部分的にそういうアレンジを踏襲している楽曲であるように思う。

こういうアレンジを行う場合、アレンジの存在感が強くなりすぎる・・・というケースが一定数あるように思うのだ。

音圧がどうとかというよりも、ボーカルの存在感をアレンジの存在感が喰ってしまう・・というケースもあるし、バラードの雰囲気感が強くなりすぎて、そのバンドの個性を喰ってしまうというケースもあるように思うのだ。

でも、Mr.Childrenってそういうことが起こらない。

少なくとも、「ケモノミチ」においては、アレンジがどういう風に推移しようとも桜井の歌声が力強く響き続けるため、ボーカルがアレンジの中に埋もれる状態に陥ることがないのだ。

しかも、Mr.Childrenが凄いのは、近年、そのボーカルがアレンジの中で際立つ感じが、より強くなっている気がする、というところ。

言っても、どんなバンドでもキャリアを積めば円熟の安定感は際立つものの、高い声が出にくくなったり、声量に穏やかさがみられたりして、パワー一点だけで比較したら、若い頃よりも落ち着いた印象を与えるケースってあるように思うのだ。

でも、Mr.Childrenにおいては、そういうことがない印象で。

ハイトーンボイスでパワーのあるロングトーンを披露するし、歌声ひとつだけでも、どんなメロディーにもドラマチックな魔法を与えている印象を受けるのだ。

このキャリアを持ちながらにして、ボーカルはさらにパワフルになっている。

故にバラード調のドラマチックなアレンジも、どこまでも神格的な響きを与える。

結果、Mr.Childrenは新曲をもっても、どこまでもラスボス感が漂っているように感じるわけである。

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ドラマチックな装いもありながら、優しい響き

また、「ケモノミチ」で印象的なのは、ストリングスが作り出すドラマチックな雰囲気もありながらも、終始、優しい響きを持っているというところ。

サビのアレンジもよく聴いてみると、そこまで「盛り上げてやるぜ!」って温度感で音を組み立てている印象を受けない。

ここは、Mr.Childrenの楽器隊が絶妙な音の配置をしているから、という印象を受ける。

メンバー4人はどういう言葉の応酬でこのアレンジを組み立てて行ったのかはわからないが、引き算も意識しながら4人が軸になってアレンジを組み立てているからこそ、優しさの印象を維持させながらアレンジが構成されているのかな、と思うのである。

これよりももっとバンドサウンドが強くなったら、「ケモノミチ」という楽曲の表情が変わってしまっていただろうし、かといって、バンドサウンドにアイデアがないようなアレンジになっていたとしたら、サウンド的な面白さは薄くなってしまっていたように思う。

この「ゴール」に辿り着くにあたって、バンドが楽曲に寄り添う温度感が絶妙だよなーと楽曲を聴き直して思うのである。

楽曲がこの温度感にたどり着くことができるのは、Mr.Childrenの4人だからこそであると思うし、その気になれば色んな”技”を魅せることができる3人が、「ケモノミチ」では”こういう役割”に徹する動きをしているところ、何気にサビでのドラムアプローチは面白さがあるところも含め、Mr.Childrenだからこそ、が際立つアレンジになっているようにも思うのである。

まとめに替えて

バンドはどこまでいってもチームであり、どういうバランスをとるかで、楽曲の良さって変わるように思う。

そう考えたとき、「ケモノミチ」のこの感じって、ボーカルもアレンジも含めて、Mr.Childrenにしか出せない強さが際立つ楽曲だなーと思うのである。

そして、Mr.Childrenをこれまでずっと続けてきたし、年齢の枠に収まらずにギラギラを磨いてきたからこそ、どこまでもラスボス感が際立っているんだろうなーと改めて感じた次第。

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