2021年、期待しかない若手ロック・バンドたち
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今回は、2021年、期待しかないロック・バンドたち、という切り口でいくつかのバンドを紹介しようと思う。
それでは、どうぞ。
アメノイロ。
アメノイロ。の魅力は、全体的に漂うノスタルジーな雰囲気だと思う。
アメノイロ。っていうバンド名がとてもよく似合う透明感のある世界観がたまらないのだ。
ボーカルの澄み切った感じ。
それぞれのサウンドが紡ぐ切ない装い。
人の<出会い>と<別れ>の二択でいえば、<別れ>にスポットを当てた歌が多く、透明感の中にある絶妙な濁り=別れに対する後悔だったり未練の描き方が、言葉にできない美しさを解き放つのだ。
「あとがき」「インスタントカメラ」「水彩の日々に」など、今のアメノイロ。が代表する楽曲の多くが、そういう絶妙な切なさを描いている。
過去形中心で語っていく回想の言葉から、ふいに戻る現在系への描写。
主人公の視点をベースにして、過去から今の流れを辿ることで生じる、心の中にある空洞の表現がたまらなくグッと来てしまうのだ。
ただ、それ以上にアメノイロ。が良いなあと思うのは、単純に繊細なだけでは終わらないパワフルさ。
というのも、音源におけるボーカルとかサウンドの印象だと、もっとライブはこじんまりとした音を放つのかと思っていたんだけど、実際にライブを観てみるとかなりエネルギッシュな音を放っていて、ギターロックとしての勇ましさがそこにあったのだ。
音が場に留まることなく、そのまま前に突き抜けていく勢いがあった、とでも言えばいいだろうか。
そういう意味でも、ぜひライブで観てほしいバンドなのである。
anewhite
「カヤ」が爆発的なヒットを放つanewhite。
今年1月にブログで取り上げた際の「カヤ」の再生数は60万ほどだった。
この時点でも十分に凄いんだけど、今はもうすぐ100万にいくほどまでに数字を伸ばしている。
世の中はショート動画文化なので、イントロなしでいきなり歌始まりにしたり、ビートメイクをキレキレにした中毒性あるメロディーで勝負する歌も多い。
そんな中で、anewhiteの「カヤ」はしっかりとイントロを作り込むし、わかりやすいフックで魅せるというよりも、歌そのものの良さ(それは演奏も含めての話)で勝負している感じがして、それがたまらなく良いのだ。
しかも、歌の良さを鋭くしていく上での拘りが光っていて。
「カヤ」でいえば、最初は2本のギターのカッティングで構成されている。
その後にバンドの音を全て足していき、ボーカルが入るとすぐにまた音の引き算をしていき・・・みたいな流れになっているんだけど、その流れのひとつひとつが秀逸なのだ。
曲全体だけではなくて、Aメロ・Bメロみたいな単位でもドラマチックな流れを感じられて、だからこそ、フレーズのひとつひとつがふいにぐっと響くのである。
「ソワレの街で」でいっても、冒頭の<1泊2日〜>のフレーズの部分と、その後の<染み付いて〜>のフレーズの部分で各サウンドのアプローチが変わっていて、そこでもフレーズに宿る温度感に変化があって、だからこそのサビが花開いたときの衝動がより劇的になっている。
とにかく細部にまでこだわった楽曲構造だからこそ、楽曲全体の「良い」の解像度がとても高く響くんだよなあという話。
そして、ライブだと、それがよりダイレクトに伝わってくる。
だからこそ、楽曲が持つ透明感が溢れながらも、バンドとしての躍動感もそこにあるのだ。
<anew>と<white>という、anewhiteにしか魅力がライブで展開されていくのだ。
四人組のギターロックというフォーマット自体は確かによくある形式なんだけど、細部を自分たちらしく研ぎ澄ませてきた凄まじさが、確かにanewhiteの音楽には、そしてライブの中には宿りまくっているのである。
Ochunism
いわゆるシティー・ポップというジャンルに括ることができそうな洒脱なサウンドで魅了するOchunism。
スタイリッシュな印象を与える音使いは、このバンドならではの魅力である。
6人組のバンドだからこその広がりのあるサウンド。
特にサンプラーとドラムで打楽器を構えているのは、Ochunismの快楽的ビートを生み出すうえで重要な要素のひとつになっているように思う。
かといって。
人数が多くて音の種類が多いからといって妙に情報過多になるというわけでもなくて。
メンバー全員が楽曲を心地よくするために<然るべき音>を鳴らしている感じが良いのだ。
しかも俺の得意プレイはこれだからこれしかしないぜ、って感じではなくて、楽曲ごとにアプローチ方法を変えてくるのも良くて。
バンドのコピーとして「ジャンル不特定6人組バンド」というだけあって、アプローチ方法が豊富なのである。
確かにあえてジャンルをまとめようとすれば、先人のバンドの名前を使って○○っぽいという表現をすることができる。
でも、Ochunismの楽曲を広げて聴けば、すぐにOchunismらしさを抑えつつもそのカテゴリーからはみ出ていく音楽に出会うことになる。
個人的に好きなのは「freefall」。
このバンドらしい心地よさとかっこよさが折り重なった、軽妙なキラーチューンのひとつのように思う。
あとライブに関していうと。
楽曲の雰囲気はスタイリッシュで洒脱。
もちろん、演奏もそのイメージ通りの完成度の高さで自然と身体がグルーヴに酔いしれる。
んだけど、ひとたび演奏が終わってMVを始めると、妙にゆるふわな愛嬌さがあって、一気に
ギャップを体験できるところも良い。
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クレナズム
シューゲイザーの新星であるクレナズム。
ただ、クレナズムにおけるシューゲイザー性って独特で。
同じジャンルで形容される他のバンドと比較しても、通ずる部分はあってもまったく違う魅力を放っているのだ。
例えば、いわゆるシューゲイザーっぽくない音楽にトライしたとしても、ある種のシューゲイザー性を感じさせたり。
逆にシューゲイザーっぽい音楽を鳴らしたとしても、クレナズムだからこそ宿るポップネスがそこにあったり。
メンバー全員の音楽性がバラバラで、それぞれ個性が違うからこその宿る魅力なのかなーと思っている。
クボタカイとタッグを組み、Shun Marunoがプロデュースを務めた、今年発表された「解けない駆け引き」では、また違う魅力を解き放っている。
つくづく、良い意味でジャンルを超克していくバンドであること感じさせる。
とはいえ。
自分がクレナズムを特に好きだなあと感じる部分は、美しさと儚さの混じり具合にある。
波紋のような美しさを音を鳴らしたあとに、爆音を鳴らしたり。
彫刻刀のような鋭さで静と動を磨いたサウンドの中、割れ物のような繊細な感情を言葉にする、そんな儚げな世界観がどこまでも好きなのだ。
そんな自分が、特に好きなクレナズムの楽曲がこれ。
ドラムのしゅうたが鍵盤を担当した「365」の切なさが、何回聴いても自分の中でツボなのである。
なきごと
なきごとも魅力が多いバンドである。
列挙し続けたら雑多になってしまうんだけど、ひとつ確実に言えることは、水上えみりと岡田安未の二人がタッグを組んだことが全てであり、最高だったなということ。
なきごとの絶対的な魅力は、水上えみりの生み出す楽曲にある。
代表曲である「メトロポリタン」もそうだが、その独特のワードチョイスと不思議な世界観がたらまないのだ。
パトロールポリスメン
メトロポリタン3連泊
他のバンドでは絶対に出てこないワードチョイスを何気ない文脈にもっていき、しかもそのフレーズがまったく浮くことなく、歌の世界観に溶け込ましていく。
ここが流石だし、水上えみりのソングライティングとボーカルとしての表現力がそれを成せているのだと思う。
今年発表された「知らない惑星」でも、そういう独特のワードチョイスは健在である。
ふいに<疲労困憊の小籠包>というワードが出てくるんだけど、MVでもその小籠包あたり、そのユーモアセンスがたまらない。
でも、そのワードは単純に突飛なワードを使っているというわけではなくて。
「知らない惑星」のテーマはパラレルワールドとのこと。
つまり、人生において何かを選択するとき、選択しなかった方を選んだときの世界があるはずで、それがこの歌のタイトルとなる<知らない惑星>を意味している・・・のだと思う。
そういう歌の骨格を踏まれて歌詞を読むと、一見すると荒唐無稽に見えるワードチョイスのひとつひとつが、歌の世界を構成する確かなパズルとして光っていることに気づく。
つまり、そのワードチョイスをした然るべき意味が、その言葉の中に宿っていることを実感するわけだ。
こういうセンスに触れるたびに、ソングライティングとしての水上えみりの凄まじさを実感する自分。
で。
なきごとは、ほとんどの歌でしっかりイントロを用意するバンドなんだけど、このイントロが毎回ワクワクするのだ。
その理由は、岡田安未のギターフレーズが魅力的だからこそ。
それこそ「メトロポリタン」もそうだし「知らない惑星」もそうだけど、岡田安未のギターフレーズが輝くイントロがあるからこそ、水上えみりの文学性のある歌詞がより輝くのである。
バンド屈指の代表曲である「癖」でも、イントロが楽曲の持つ世界観をより立体的なものにしている。
そう考えたとき、なきごとはこの二人のタッグで良かったなあと思うし、この二人だからこそ楽曲の表情や美しさが劇的なものになるのである。
ちなみに。
この記事では、なきごとの中でも比較的幻想的な歌詞が魅力的な歌を紹介した気がするけれど、個人的には「忘却炉」のような、ある種の感情をむき出しにしたドロドロ(?)な攻撃的ロックチューンのなきごとも、ものすごく好きだったりする次第。
まとめ
そんなわけで、5組のバンドを紹介したんだけど、今回紹介したバンドは8月8日に開催される自分が主催のイベントに出演してもらうバンドだったりする次第。
要は、自分が<間違いない>と思うバンドを主催イベントに出演してもらいました、という話だったりするアレ。
いや、ほんと主催イベントに関していえば、間違いないバンドしかいないので、イベント自体は間違いないものにしかならないと思っているわけだけど、もし知らないバンドがいるのだとしたら、「この辺りが間違いないんですよ」ということが少しでも伝わったら嬉しい限り。
各バンドとも、細かく書けば、もっと列挙したいことが溢れちゃうんだけど、とりあえず今回はこういう形で紹介してみました。
この記事が、そんなバンドとの出会いのきっかけのひとつになったら嬉しい限り。
では、今回はこの辺で。
ではではでは。
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