前説
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ファーストアルバムをリリースした時点で、ある程度有名になっているアーティストにとって、セカンドアルバムって鬼門だと思う。
なぜなら、セカンドアルバムの出来が今後のアーティストの息の長さを左右するところがあるなーと思うから。
もちろん、どのアルバムだって気合いを込めて制作に励んでいることは間違いない。
が、ファーストアルバムが一番そのアーティストの濃いところを詰め込んでいる可能性が高いよなーとは思う。
セカンド・アルバムからは時間との戦いになってくるというか、限られた時間の中での制作になることが多いけれど、ファーストアルバムはそれまでの活動のすべてがひとつのアウトプットに集約されるケースが多いから。
だから、作品的に一番濃くなりやすいのかなーと勝手に思っている。
ただ、良いアーティストってきちんとそういう中でも、ファーストアルバムがセカンド・アルバムを超えてくる気がしていて。
というか、ファーストアルバムと聴き比べた時に、セカンドアルバムの方が「おっ!」って思えるアーティストって、これからどんどん進化するし、そうならない人はやっぱりなかなか進化しづらいのかなーと、過去のアーティストを回想するとふと思ってしまうのだ。
さて。
渋谷すばるも今年、セカンドアルバムをリリースしたアーティストである。
作品のタイトルは、「NEED」。
自分は正直、そこまで期待していなかった。
というと語弊があるかもしれないが、ファーストアルバムはきっと気合いを入れて制作しているけれど、セカンドアルバムは悪い意味でファーストアルバムの焼き直しになってしまうんじゃないかと思っていたのだ。
なぜなら、ファーストアルバムで、あまりにも「自分はこれがやりたい」を提示してしまったから。
実力は折り紙付きではあるものの、良くも悪くもすでに洗練されているから、若手アーティストのようなゴリゴリの技術的な変化ってもうないのかなーと思っていたから。
やりたいことを「二歳」で出しまくったから、「二歳」と比べると「NEED」はわりと普通なアルバムになってしまうんじゃないかと思っていたわけだ。
でも、その見立てはあまりにも安易だった。
今はそんなことを思っているのだ。
要は、「NEED」が「二歳」よりも良いやん、と思えたのだ。
少なくとも、自分は「NEED」の方が好きだった。
自分の予想は大きく覆されたわけだ。
そこで、この記事ではそんな「NEED」の感想について、簡単に書いていきたい。
本編
渋谷すばるの「NEED」という作品の話
「NEED」という作品が前作よりも良かった。
先程そのように述べたが、具体的にその理由はどこにあるのか、ということを少し書いてみたい。
「二歳」という作品は「自分が本当に音楽でやりたかったこと」が溢れている作品のように感じたのだ。
ただ、それが強すぎる作品でもあった、といえる。
例えば、ザ・クロマニヨンズなどの先人のバンドたちの色があまりにもはっきりと見える作品でもあった。
それが作品の良さでもあったけれど、自分の好きなジャンルに対する愛が強すぎるがゆえに、渋谷すばるだからこそさできるアプローチみたいなものが少し薄まっている気もした。
渋谷すばるは、渋谷すばるであるわけで、そういう色がもっと見えたらいいのにと思うところがあった。
「二歳」を聴いた時、そういうところが気がかりといえば、気がかりでもあったわけだ。
でも、渋谷すばるの作品は、きっとこれからそういう色がどんどん強くなるのかなーと思っていた。
なぜなら、それこそが渋谷すばるのやりたいことだと思っていたから。
でも、「NEED」を聴くと、そういう見立てとは違った進化を遂げていたのだ。
「たかぶる」のような、前作のロックイズムを踏襲するストレートなロックナンバーもある。
けれど、それだけには収まらない潤沢さみたいなものを「NEED」から感じたのだ。
ロックなアプローチも取り入れることもあれば、繊細な鍵盤のサウンドで彩る曲もあって、アーティストとしての幅であったり、進化みたいなものを「NEED」という作品から感じたのだ。
実際、「NEED」という作品は、かなり色んな色合いの楽曲が入っている。
「Sing -a cappella-」は、タイトルのNEEDの意味が浮かび上がるメッセージ性の強い歌になっている。
ボーカルだけで進行するところも含めて、実にハートフルなナンバーになっている。
かと思えば、「風のうた」はわりと爽やかさのあるポップソングな色合いである。
優しいボーカルが印象的で、「穏やかな風」の雰囲気が楽曲全体から滲み出ている。
「Sing」では、「Sing -a cappella-」で提示したメッセージを回収するような、これまた言葉の強い歌になっている。
わりとロック色も強い、気骨のあるバラードソングとなっている。
「二歳」のアルバムはジャンル愛の強い作品なのだとしたら、「NEED」はジャンル自体はわりと多様化している作品である。
そして、その多彩がすべて渋谷すばるの表現と密接に結びついているように感じたのだ。
だから、どの歌も渋谷すばるの良さが出ているし、作品中で伝えるべきメッセージもダイレクトに伝わる感じがするのである。
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アルバム全体に思うこと
アルバムを通して、はっきりとメッセージ性なりテーマみたいなものが浮かび上がるし、よりアルバムとしての作品を作ることの「意味」を強く感じさせる作品になっているのだ。
メッセージ性の強い歌詞と、勢いのある感情豊かな渋谷すばるのボーカルの魅力が溢れている、そんな作品になっているなーと思ったのだ。
バラードに好きな曲が多いアルバムで、その理由はボーカルのかっこよさがすごく印象的なアルバムになっているからだと思う。
で。
トータル的な感触として、音楽に対して自由になった渋谷すばるの音楽愛が見えるような作品で、それがとても良かったのだ。
表現者として、言いたいことを表現するための力みたいなものに磨きをかけた渋谷すばるの凄さみたいものを「NEED」という作品を通して感じたのだった。
コロナ禍によって、音楽の価値が改めて問われるようになった時代だからこそ、「歌が必要」と訴えかける渋谷すばるの言葉と歌声が、どこまでも迫力と説得力があった。
言ってしまえば、そこに胸うたれてしまう自分がいたのである。
まとめ
立場上、どうしてもストレートに音楽を評価されづらい立場ではあるよなーと思う。
でも、それが勿体ないなーと改めて感じる作品だった。
「二歳」を超えた作品をリリースしたところにも、渋谷すばるのアーティストとしての凄さが物語られているように感じる。
こういうタイミングで、こういうアルバムを、高いクオリティーでリリースできる渋谷すばるのアーティストとしての凄みを自分は感じたから。
きっと、まだこのアルバムを聴けていない人の中でも、刺さる人ってたくさんいると思うのだ。
それぐらいに、「NEED」という作品が良い作品だって、僕は感じたから。
もっとこの作品が遠くに届いたらいいなーと切に思うのだ。
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