ネタバレ注意のライブレポ
10月13日、大阪のなんばHatchで行われたFCライブツアー「Bee-side Sea-side U-side」に参加してきた。UNISON SQUARE GARDENのファンクラブ「UNICITY」の会員のみが参加できるライブである。
しかも、今回はシングルのカップリング曲のみで行うライブということで、パッと見た感じは何とも敷居の高いツアーとなっている。「シュガーソングとビターステップ」も、「オリオンをなぞる」もやらない…ユニゾンを好きになって幾年か経つ自分でも、どんなライブになるのか最初は検討もつかなかった。
今回はカップリングにちなんで、いつもはあまり触れられない側面的な部分に目を向けて、ライブレポを書いてみようと思う。
※曲についてのネタバレが一部ありますので、一般ツアーのみ参加予定の方はご注意ください。
あと内容はかなりマニアックです。
ついていけんわ!っていう人は、ロッキン・ライフの中の人が書いた、かっちょいい新曲についての記事をご覧ください。
「Phantom Joke」という新曲を出したUNISON SQUARE GARDENの変態性について
側面① 曲に寄り添った演出
今回のライブで特に目を引いたのは、演出の素晴らしさである。例えば照明ひとつにしても、それぞれの曲に合わせた演出が施されていた。
「三月物語」はオレンジ、「flat song」は水色、「スノウループ」は白…というように、その曲の魅力を引き立てる色を照らすことで、ライブの雰囲気を作り上げることに一役買っていた。
「リトルタイムストップ」では、前奏やサビ後の照明をあえて薄暗くすることで、よりメロディの音を鮮明に際立たせていた。
照明だけを取り上げても、ユニゾンの妥協しないライブへの姿勢が垣間見えるので、意識して見てみると楽しいかもしれない。普段あまり披露されないカップリングだからこそ、それを顕著に感じた。
さらに「ピストルギャラクシー」では、”その頂上まであと何マイル?”のタイミングに合わせて、鈴木貴雄(Dr.)が頂上を示すようにスティックを天に掲げていた。
「I wanna belive、夜を行く」は、斎藤宏介(Vo.&Gt.)のボーカルから始まるアレンジで披露された。同じく頑なに演奏されなかった「お人好しカメレオン」の、舞洲での15周年ライブを彷彿とさせるような。
普段は曲やパフォーマンスに目が行きがちかもしれないが、ちょっとした演出に目を向けるだけで、思わずニヤッとするような彼らの仕掛けに気づくことができる。これもライブのひとつの醍醐味だと思う。
側面② バチバチに仲の悪い3人
UNISON SQUARE GARDENといえば、メンバー同士がバチバチに仲の悪いことで有名である。どのくらい仲が悪いかというと、ツアーで訪れた遠征地で、プリクラを撮ってしまうぐらいに。しかも、3人一緒に指でハートポーズを作るぐらいには。
そんなスリーピースバンドのライブは、とてもシビアな雰囲気のなかで行われる。その顕著な例として、ステージの端にいる田淵智也(Ba.)のところまで斎藤が何度も近づいては、演奏が停止すると同時に止まる…という場面があった。田淵はというと、止まった瞬間に斎藤の方を見つめている。まるでだるまさんが転んだをしているかのように。
それが終わると、今度は田淵が斎藤の方まで、すり寄るように近づいていく。斎藤は逃げるように田淵から離れていき、そのままステージを1周していた。しかも満面の笑顔で…。
このようにメンバー同士でも、気安く馴れ合わない独特の温度感は、ライブの雰囲気を引き締めるために必要不可欠なものとなっている。念のためにもう一度言うが、彼らはバチバチに仲の悪いバンド(公式)である。
側面③ U-sideコーナー
UNISON SQUARE GARDENのライブといえば、MCはほとんどしないし、ライブ中に観客を煽ることもない。ただ曲を演奏することだけに、ほとんどの時間が使われている。そんな彼らが、FCツアー向けに企画したものが、「U-sideコーナー」である。
想像してほしい。バラエティで流れるような軽快なBGMとともに、田淵が両手を上げて謎のダンス(通称:田淵ダンス)を踊っている様子を。しかも、そのコーナーを1度ならず2度続けて行うという、天丼的手法を用いて。普段の彼らからすると、考えられない光景であるし、会場も少々異質な雰囲気に包まれていた。
だが、それもひとえにFC会員に少しでも何かを返したいという、彼らなりの気持ちの現れだと思う。自分のために音楽を鳴らすけれど、そこには目の前の人を喜ばせることも含まれている。そんなユニゾンらしいやり方で。
コーナーの内容は、一般ツアーではやらない2曲をダーツやサイコロで決めるというもの。普段披露しないスタイルやもう恥ずかしくてやらない?レアな曲が聞けるかもしれない、ファンからするとかなり魅力的な企画だ。この日はとある奇跡が起こったのだが、ライブに参加した者だけの共通事項なので、ここで書くのは控えさせてもらう。気になる人は、ぜひ参加者に直接聞いて欲しい。
せっかくなので普段のユニゾンらしさも
ここまで側面…というか、なかなかマニアックな視点でレポを綴ってきた。
せっかくなので、普段のユニゾンらしさも伝えていけたらと思う。
ユニゾンのライブでの醍醐味といえば、高いパフォーマンス力を誇る演奏と聞く人の琴線に触れるようなフレーズたちである。
「シグナルABC」では、セッションから曲への繋ぎが絶妙で、奏でる演奏や温かい歌詞も含めて、見る人全てを巻き込んでいくような多幸感に満ち溢れていた。
「さわれない歌」の”ちょうど良い温度感”の言葉たちはどんな時でも背中を押してくれるし、「ノンフィクションコンパス」の心地の良いメロディが3人の無敵感をより引き上げていた。
FCかつカップリング限定という、かなり変則的なライブとなったが、ユニゾンのかっこいいステージは依然変わらないままだった。
15年間積み重ねてきたものは、どんな風景になっても変わらない幸せを届けてくれる。
そう感じさせるには十二分な時間であった。
まとめ
このライブを1番楽しんでいたのは誰か?
そんな問いをあるとすれば、答えはUNISON SQUARE GARDENの3人だと断言できる。
まるで我が子の晴れ舞台を慈しんで見つめるような…優しい笑顔で演奏しているのが印象的だった。
そんな姿を見て、同じように笑みがこぼれる瞬間もあったし、楽しい気持ちを表現するかのように自然と体も動いていた。
自分たちのために音楽を鳴らすことが、結果的に周りの喜びに繋がる。
まさにUNISON SQUARE GARDENというバンドを体現するようなライブだったと思う。
カップリングといえども、侮ることなかれ。
新たな一面を見せる楽曲たちは、僕らの心を当たり前のように揺さぶってくれる。
11/14からはいよいよ一般向けツアーが始まる。ユニゾンの音楽を愛する人なら、必ず楽しめる内容になっているので、ぜひ期待しておいて欲しい。
筆者紹介
大阪に住む20代社会人。好きな斎藤宏介は「春が来てぼくら」です。