GRAPEVINEの話

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GRAPEVINEの記事を書くぜ!と意気込んでみたものの、キーボードをタッチした手が止まってしまう。

うーん、と思うのだ。

一体、何を書けばいいんだろう、と。

語弊がありそうなので補足しておくと、GRAPEVINEには良いところがたくさんある。

歌は上手いし、演奏も上手いし、歌詞は深いし、曲の幅も広くて、新曲も魅力に満ちあふれている。

書こうと思えば、いくらでも書くことはあるのだ。

ならば、単純にそれを書いたらいいのではないか?と思うかもしれないけれど、それが難しいのだ。

なんせ20年以上のキャリアがあるバンドである。

円広志みたいに「この曲に触れたら80%は語ったことになる」みたいなアーティストではない。

アルバムの話

アルバムのセールス的には「スロウ」や「光について」といった代表曲が収録されている『Lifetime』が一番である。

正直、「スロウ」と「光について」だけを聴いても、GRAPEVINEの魅力は十分伝わると思うのだ。

深さを感じさせるひねくれた歌詞と、シンプルなんだけど、どこまでも広がりを感じさせるサウンド。

排他的な感じもあるんだけど、メロディーが美しいから、不思議と嫌な気分にはならない絶妙なバランス。

GRAPEVINEの魅力が詰まっている。

確かにワイワイ騒ぐ感じではないし、目立ったキャッチーさはないのかもしれない。

けれど、こんなにも<刺さる>という言葉が似合う歌もないのではないかと思うのだ。

セールス的にはピークとなる『Lifetime』。

良いアルバムなのである。

とはいえ、GRAPEVINEのキャリア的にはここがピークというわけでもない。

この後、さらに上にいくことになる。

特に、初のセルフプロデュースとなった『イデアの水槽』は、00年代のロック史に残るような名盤だと思う。

上の2曲はアルバムに収録されているシングル曲である。

そのため、比較的ポップな歌なのだが、この曲が収録されているアルバムはまったくポップではない。

アルバム全体としてはサイケデリックな要素もあるし、突然、轟音をかますこともあるし、なんせ暗くて、独特の聴き心地がある。

容赦なく実験的なトライを行ったこの作品は、当時でも相当異端なアルバムだった。

だからこそ、刺さる人にはとことん刺さるアルバムだった。

そんなこのアルバム。

リリースは2003年で、今から15年以上も前の話になる。

確かに『イデアの水槽』は名盤なのだ。

そのため、このアルバムがキャリアのピークなのではないか?と揶揄できるかもしれない。

思う。

とっくにピークが過ぎてしまったバンドだったら、たぶんこの記事を書くことにも、困らなかっただろう、と。

ただ、残念ながら事実は違う。

GRAPEVINEは今でも容赦なく、良い歌を作ってくる。

2019年にリリースされた『ALL THE LIGHT』というアルバムに収録された一曲。

この歌は、GRAPEVINEにしたら明るい歌である。

というか、歌の終わりにささやかな希望の絵を見せてくる、GRAPEVINEにしては珍しい歌、とでも言えばいいだろうか。

この歌が収録されている『ALL THE LIGHT』は、ホッピー神山をプロデューサーに招いたこともあり、ここ最近のGRAPEVINEとは違う着想やアイデアが反映されている。

そんなこのアルバムの完成度は、はっきり言ってすごく高い。

過去のアルバムと比べてどうのこうと言うのは難しいけれど、少なくともこのアルバム単体でみると、ただただめっちゃ良い。

「すべてのありふれた光」もそうだが、GRAPEVINE的なロックサウンドを踏襲しつつも、どこか新しい世界を見せてくれるのだ。

歌詞も音も絵が見えるし、見えてくる絵がどこまでも素敵なのだ。

そうなのだ。

このアルバムは、他のロックバンドにはない不思議な充実感を与えてくれる。

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一通り、GRAPEVINEを語ってみたが・・・

わかったかと思う。

GRAPEVINEは、ひとつのアルバムとか代表曲だけをつまみ、数千字だけで語ることが困難なバンドであるということが。

だから、キーボードをタップして、なんとなく文字をうってみたのは良いものの、何から語ったらいいのか、そもそも何を語ればきちんとバインの魅力を伝えられるのかが、まったくわからないのである。

例えば。

同じようにキャリアが長くて、声の大きくないオタクにウケが良いバンドだと、くるりなんかもいたりする。

くるりもデビューから最新曲まで、常に全てがハイライトになるバンドだ。

代表曲だけをつまんで語ることが難しいという意味では、まったく同じである。

ただ、くるりの場合、アルバムごとのカラーがあまりにもはっきりとしていて、この時代はこれがやりたかったんだな!とか、俺はこのモードのときのくるりが好きだぜ!みたいな視点で語れるから、まだ記事にしやすい。

でも、GRAPEVINEは違う。

同じように音楽的に幅広いんだけど、このアルバムはこのモードだよね!とか、この時期のGRAPEVINEはルーツロックをベースにしつつも、○○にも影響を受けていたから、アルバム全体が○○っぽくなっているよね!みたいな語りをすることが難しいのだ。

なんせ、本人たちにそういうコンセプト的なこだわりがないから。

だから、余計に語るのが難しいのである。

GRAPEVINEの音楽について

ただ、あえてGRAPEVINEの音楽について言葉を紡ぐなら、ギターロックにこんな可能性があったなんて!と感動させられるところにあるのではないかと思っている。

例えば、ギターロックって聞けば、特定のイメージを連想することが多いと思う。

もちろん、この特定のイメージは人によるとは思う。

THEE MICHELLE GUN ELEPHANTみたいな荒々しいガレージロックをイメージするかもしれないし、Hi-STANDARDみたいなファストなサウンドをイメージするかもしれない。

実際、前述の人たちは後続に圧倒的な影響を与えたからフォロワーも多いため、ギターロックの印象そのものに大きな影響を与えている。

ただ、フォロワーが多いバンドが生まれると、逆説的にギターロックの可能性が狭まっていく。

ギターってこういう音を鳴らす楽器なんだろ?バンドってこういうサウンドを作るチームなんだろ?みたいなイメージが生まれてしまい、少しずつギターロックの印象を固定化させてしまうのだ。

そう考えた時、GRAPEVINEのサウンドって、どこまでもギターロックから自由だなあと思うのだ。

もちろん、UKロックから影響を受けたということはわかるんだけど、バンドってこういうものでしょ?ロックってこういうものでしょ?ギターってこんな音を鳴らすんでしょ?みたいな常識を転覆させる魅力を持っているのだ。

だから、GRAPEVINEの音楽って他のバンドの名前を出して語ることが難しいし、この記事でも言葉にすることが難しいのだろうなあと思うのだ。

そして、これまた逆説的ではあるけれど、この言葉のしにくさこそがGRAPEVINEの大きな魅力なのだ。

これって、代えの効かないバンドという言葉の言い換えだと思うから。

GRAPEVINEに影響を受けたバンドは多い。

ストレイテナーのホリエ、SuchmosのYONCE、UNISON SQUARE GARDENの斎藤、マカロニえんぴつのはっとり。

名前を挙げたらキリがない。

そして、こうして名前を挙げてみて実感するが、GRAPEVINEを好きと公言するバンドマンの多くが、独自性を持って、代えの効かない存在として、ロックシーンに名を刻んでいるように感じる。

流行とは違うところで音を鳴らすバインにカッコよさを覚えたのだから、そういう立ち位置になるのも当然なのかもしれない。

が、ここで言いたいのは、このエピソードからもわかる通り、それだけGRAPEVINEって独自性のあるバンドなんだよ、ってことなのである。

そのことが伝えられたら、幸いである。

まとめ

何も語られないまま、まとめに入ってしまった。

困った、困ったぞ。

なんかまだ全然GRAPEVINEの魅力を伝えられいない気がするのに、一体何をまとめたらいいんだろうと思う。

あ、そうそう。

ボーカルの田中の歌詞の素晴らしさに触れたいなーと思っていたんだけど、ここに話をもっていくと、さらに文字数が増えてえらいことになるので、今回は割愛させてもらう。

ただ、坂口安吾や安部公房に影響を受けて作詞をしているバンドマンって彼くらいなのではないかと思うのだ。

暗いの中にも美しさがある歌詞を書けるのは、こういった文学作品にも影響を受けているからなのかなあーと思ったりする。

つまり、歌詞の影響の受け方ひとつとっても、GRAPEVINEの唯一無二性が際立ってくるという話。

ちなみに個人的には、坂口安吾ならば「堕落論」が好きです。

未読の方は、ぜひ一度、読んでみてほしい。

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