前説
[ad]
andropというバンドをご存知だろうか?
いや、知っているに決まってるでしょ?何を言っているんだという人もいれば、ナンデスカソレは?新しい飴ちゃんデスカ?という人もいることだろう。
たぶん、このブログでは出演アーティストの予想記事を除けば、一回もandropの名前を出してこなかったと思う。
謝罪できるならば、今、この場でそのことを謝罪したい。
申し訳ない。
というわけで、今回の記事では、そんなandropのことを紹介してみたいと思う。
本編
andropの幅広さ
andropって、楽曲の幅が広い。
もちろん、こういう紹介をしたら、幅の広いバンドなんていくらでもいるでしょ?と突っ込まれそうな気がする。
んだけど、andropの幅広さって、他のバンドとちょっと違うと思うのだ。
まずは、この歌を聴いてみてほしい。
この歌は今年発表された「koi」という歌だ。
イントロのピアノの雰囲気からも分かる通り、いかにも映画主題歌感のあるドラマチックなラブバラードである。
盛り上げることに関してはど真ん中なアレンジを施されたこの歌は、ミスチルとかバクナンとかが好きそうな人に刺さりそうな王道バラードである。
なお、2018年に発表された「Hikari」という歌も、ピアノの音が前に出ている楽曲で、メロディーの良さを強調するようなアレンジになっている。
この歌もドラマ主題歌というタイアップソングであり、ひとつのサビだけで大衆をグッと引き込めるように、わざと歌もの感を強めたアレンジを選択しているのだと思う。
キャッチーで、王道感があって、良い歌だなーと思う。
ただ、ここでポイントとなるのは、andropにとっては、こういうドラマチックなテイストの歌が必ずしも王道というわけではないということだ。
人によっては、こういう楽曲の方がandropらしさを感じるのではないだろうか。
andropの功績をひとつ挙げるとすれば、2010年代のダンス系ロックに、ひとつ可能性を提示したことだと思う。
ダンスミュージックとロックの融合といえば、サカナクションを連想する人もいるかもしれないが、andropが果たした役割も大きいように思う。
ここでは、サカナクションとandropの違いを述べたりはしないけれど、同じくダンスロックに傾倒しつつも、この二組のサウンドは見事にバラバラである。
両者の作品を聴いてもらったら、そのことは理解してもらえるのではないかと思う。
[ad]
バンドに新たな可能性を提示したandrop
andropの「ダンスロック」としての特徴は、エレクトロとかアンビエントな要素を向き合い方だと思う。
というよりも、メンバーに常設のキーボード担当がいないので、楽曲ごとに自由なアプローチができているのだ。
ギターを幾本も重ねることで厚めの音を構築することもあれば、ギターは一本にして、あえて隙間のあるサウンド作りにすることもあるわけで。
ほんと、andropは楽曲ごとに緻密な音のディレクションがなされている。
サビの直前とか、ボーカルパートに入る前に、どういうリズムの打ち方をしているかに注目するだけでも、そのことがよくわかると思う。
というか、先ほどの「voice」を聞いてもらったら、AメロもBメロもサビに入る前も、かなりリズムの打ち方にこだわりを示していることがわかるし、Aメロのベースの主張が激しい部分だけでも、<緻密なバンドアンサンブル>の意味がわかるのではないかと思う。
で、andropがなによりも凄いのは、様々なダンサンブルなリズムパターンをバンドサウンドの様々な場面に落とし込んでいることである。
バンドでも、こういうサウンドを鳴らすことができるんだぜ。
ダンスミュージックをこういう解釈で、ロックと融合させることができるんだぜ。
そういう新たな可能性を見せつけてきたのが、andropというバンドの凄さなのである。
ギターの音色とか、ドラムの躍動具合とかで、ロック的なカッコよさを提示することがベタだったバンド音楽のなかで、こういう魅せ方もできるんだぜ!と提示したのがandropの功績なのだ。
今となってはダンスとロックの融合こそがベタになったのかもしれないけれど、andropがそういうサウンドを打ち出したからこそ、定着した部分は大きい。
王道バラードを選ぶこともできれば、ダンスナンバーに舵を切ることもできる。(もちろん、ロックに比重を置いた歌もたくさんあるしね)
そういう幅広さを選択できるのは、メンバー全員の演奏力が高く、演奏に対する様々な引き出しを持ち合わせているandropだからだ。
かつ、どういう装いでも楽曲がキャッチーに輝くのは、サウンドの根本にある、内澤が作るメロディーが美しいからだ。
まとめ
内澤って、他のバンドマンとは違うジャンル(エレクトロやアンビバレンスなど)の造形が深く、それ故、andropの音楽って他のバンドとは違う方向性の幅広さに展開されている。
ここでは単にandropの音楽をロックとダンスミュージックの融合なんて言い方をしたけれど、この「ダンスミュージック」だって、本来なら色んな切り分け方ができるものだ。
ダンスミュージックって一言で言っても、BPMの違いとかリズムの打ち方で、細かなジャンル分けができるわけだ。
で、andropはそのことを理解したうえで、色んなパターンを取り込んでいるのである。
andropの音楽はBPMとリズムに対して、相当に自覚的であり、それがandropの音楽の幅広さと繋がっている。
なんにせよ、andropが2010年代のダンスロックのひとつのムーブメントを作ったことは間違いない。
そして、そのandropが近年はモードを変えてきている。
そのことは「Hikari」や「koi」という作品からも明らかであるわけだ。
これから先、andropがどんな方向性に向かうのか、この時点では断言できない部分もあるけれど、高いテクニックを擁するandropだからこそ、作り上げることのできる作品を提示することだけは確かだと思う。
andropの躍進は、これからなのだと思う。
まだまだ目が話せないバンドなのである。
[ad]