前説

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皆さんはアーティストのグッズを購入することがあるだろうか?

また、グッズを購入するとき、どんな理由でそれを購入するだろうか?

当然、そのアーティストが好きだから、というのが前提としてあるだろうが、デザインがオシャレだからとか、キャラクターものだからとか、普段着で使えそうだからとか、細かな決め手は色々あるかと思う。

いずれにしても、グッズのデザインがどんな風にされているのかは重要なポイントであるかと思う。

では、そのグッズをデザインする側はどんな想いやロジックで、グッズのデザインを決めているのだろうか?

この記事では、いくつものCDジャケットやグッズのデザインを手がけているサノヨシユキさん
(@habit_design)にお話を伺い、デザイナー側がどういう想いで「そのデザイン」に着地させているのか、インタビューさせてもらった。

また、今回はインタビューの模様を前編後編に分けてお伝えしようと思う。

まずは、サノさんが直近のグッズデザインを手がけられた四星球の法被を中心に、お話を伺わせてもらった。

インタビュー開始

――どのような経緯から、四星球のデザインをするに至ったのですか?

サノ:去年から四星球さんとやりとりをさせていただいているんですけど、今年に入って夏のグッズを考えてるんでほぼ全部任せられないかってなって(話を受けて)。えっそんなに?喜んでって(なりました)。

――法被のデザインをするに至った流れを簡単に教えてください。

サノ:ライブに行って打ち合わせとかして、これまでにいくつかTシャツとかタオルを作っていて。そのうちに、いよいよ法被をやろうかと話がきて。実は、今まで四星球って法被を作ったことがなかったんですよ。あれだけ法被がトレードマークなんですけど、オリジナル法被は1回もなかったんですね。おそらくコストの問題だとは思うんですけどね。法被って高いんですよ。でも、メジャーになって、より人気もでてきて、よい販路を確保できたのかも。いよいよ満を持してやろうと思いまして、って言われて、それだったらサノさんにお願いしたいって言ってくださって。

――おおっ!そうなんですね!

サノ:今までの四星球のグッズに「祭」って(言葉を使ったデザインが)、いっぱいあったんですけど、大体既存のフォントとか、普通の「祭」だったんですよ。だから、「祭」(のロゴ)からブランディングして、四星球だけのオリジナルの「祭」のロゴが欲しいっていう依頼があったんですよ。で、(新しい)ロゴを載せるのは何ですかってなったら、法被ですってなったんです。

――なるほど!

サノ:法被の話になっただけでも、テンションが上がりましたね。僕も正直、法被は絶対やりたかったんですよ。四星球のグッズを手がける以上は、ブリーフか法被、絶対どっちかはやりたいってずっと思ってたんですよ。普通に四星球のファンだったんで、僕が作らなくても法被は欲しいっていうのがあったんです。

――ふむふむ。

サノ:これまでに、それらしいのは作られてたんですよ。地元とコラボした法被とか。それも良いものなのですが、ただそれは本当に完全オリジナルの四星球の法被ではなかった。だから、ファンの話を聞いたら、みんなずっとオリジナル法被を待っている感じがして。いよいよ、満を持して京都大作戦の1日目で発表するってなった時は、どわあーってなって。だから、1ヶ月前から依頼がきたんですけど、もう練りに練りましたね。アイデアを。

――期待しかないですもんね。

サノ:とにかく、ファンのイメージを全部形にしよう、と。100%全員のファンに着せたい、っていう気合いがありまして。もちろん、常にグッズを作るときは全員に着て欲しいと思ってやってるんですけど、ここほど期待しているアイテムもないんで、これは絶対に当ててやる、当てなければならないっていうプレッシャーがあって。だから、色んなアイデアをぶち込んで、デザインを提案したら、それがもうほぼ一発オーケーで。

ーーそれは一案だけ出したんですか?

サノ:一案だけですね。別案を作らなくてもいいという自信があったので。1案をボーンと出したらU太さんから即返事がきて、これです、オッケーですと。一発でバチっと決まりましたね。それはなかなかないことなので、めっちゃ嬉しかったですね。

ーーどういうところが拘りですか?

サノ:四星球の祭りってライブじゃないですか?四星球のライブに来る人は全員、笑顔になりますよね。もちろん泣きもあるんですけど、とにかく楽しませる笑いがあるのが四星球のライブだ、ライブが祭りだ、だったら祭の文字自体もまずは笑わしてやろうって。だから、「祭」は笑顔にしました。

サノ:祭りが笑ってるロゴこそが、四星球の祭りだろうと。ロゴがバシッと決まったあと、法被(のデザイン)を作っていこうってなったとき、一個だけU太さんからオーダーがあったんですよ。普段、彼らが着ている法被は別にあるのですが、あまりにもそれと全然違うと、ファンもイメージのズレが出てくるかもしれないので、オーダーは和風なテイストで、法被っぽい法被にしてほしい、と。ただ、和のイメージをそのままぶちこむのはダメだと(も思いました)。こんなんじゃ、ファンは納得しないだろうと思ったので、すべてのモチーフに四星球だっていうポイントをどんどん盛り込んでいこうと思いました。

サノ:四星球ってブリーフを履いてるじゃないですか?で、法被って市松模様がよく入っているので、その市松模様をブリーフにしようと。ぱっと見は外側から見たら普通の市松模様の法被なんですよ。でも、よく見たら一個一個ブリーフになっている。

サノ:(このように)ファンしか気づかないんですけど、ファンが見たらあーってなるようにしました。他にも4人のイメージを全部入れていこうと思いました。康雄さんはいつも桜を背負っているので、桜プラス四星球の四つ星を足して、四つ星桜として入れました。

サノ:それも、元々モチーフにした法被に桜があったためです。あと、(元々モチーフの法被には)桜と富士山と波が入ったんですよ。それは入れなきゃいけない。で、富士山はどうしようかなってなった時に、富士山を書いてる最中に、あれ富士山の柄って虎柄に似てるなあ(※モリスさんは虎柄パンツがトレードマーク)と思って。じゃあ虎富士にしようと思いました。

サノ:検索してみたら、虎の富士は誰も思いついてなくて。モリスさん(のイメージ)は虎富士で行こうと思って、虎富士を書いたんですよ。

サノ:あとは、UFOとか宇宙人とか段ボールとかメガネが飛んじゃっているのを入れたり。

(この辺も全てファンならわかる四星球のモチーフが入れ込まれているわけだ)

サノ:あと、波がばっさーんってなっているのも実はこれ、よくみると波飛沫が文字になっていて。「COMIC BAND IS HERE」って書いてるんです。

サノ:これは四星球のキャッチコピーで、それを背中に背負っているんですよ。でも、それをまんま見せるんじゃなくて、和柄の中に入れて、気づく人は気づいて欲しいなっていう形で、モチーフを入れていきました。そしてその波のイメージに合わせて大きく「四星球」のバンドロゴもデザインしました。

ーーすごい考え込まれているんですね。

サノ:(先ほども話した通り)4人のイメージを入れてるんですけど、虎富士がモリスさんで、康雄さんはピンクをいつも背負ってるフロントマンなんで空を舞う華やかなイメージとしてピンクの桜、海や空に全体を包む青色は一番の柱であるU太さん、メガネとかダンボールが飛んでいるのはまさやんさんのイメージです。

--なるほど。

サノ:まさやんさんはライブのステージをさらに彩る、ダンボールのアーティストであったり、ギタリストであったり、バンドのオモローを底上げする演出家でもあるんで、法被の中に、演出家として登場させようと思って、組み込んでいます。というのも、僕の中でストーリーがあって、まさやんさんは波に飲まれて溺れているんですよ。それでメガネとかダンボールが飛んでいるという設定で。

--そこまで作り込んでいるんですね。

サノ:ちなみにタオルも作ってるんですけど、実は裏設定を作っていて。法被とタオルは続きのストーリーになっていまして。法被の中ではまさやんさんが溺れかけているっていう設定なんですけど、実は法被の裏にはポセイドンとかもいるんですよ。ポセイドンって四星球のファンは気づくキーワードだったりするんですよ。それが映ってるんですけど、この溺れたまさやんさんを、僕の中ではポセイドンが助けてくれるのか否かっていうストーリーにしたんです。

--へえ!

サノ:タオルではまさやんさんのメガネと、ポセイドンがいなくなってるんですよ。つまり、法被では溺れていたまさやんさんが、タオルではいなくなってるわけです。助かったのか、ポセイドンが助けてくれたのか?っていうことを濁す感じのストーリーになっているわけです。法被とタオル、どうせ作るんだったら同じ感じじゃなくて、ちょっと遊びを入れてこうって思って、同時に作ったりしました。遠くからみたら普通の法被っぽく見える。でも、寄っていくと、全てのモチーフに四星球のイメージが入れ込まれている。実際に手を取って見てほしくて、より細かなディテールに凝って、作りましたね。おかげで販売初日の京都大作戦ではかなり好評だったようで、四星球のライブ終わりすぐにU太さんから電話がきて「法被完売しました!」と聞いた時はデザインがファンに届いたと実感できてめちゃくちゃ嬉しかったです。

--ファンのニーズが詰め込まれているって感じですけど、こういうのはSNSとかで調べるんですか?

サノ:めっちゃ調べますね。まあ、それを見たからって、様々な意見があるのでその人の意見をまんま取るなんてことはないですけど。でも、僕の考えている方向を、ファンも同じ方向に向いているのかなーと、軌道修正的な感じで見ます。

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--四星球はあんまり細かなオーダーがない形でグッズ制作をしてましたけど、逆に色々指示された方が良いとかあるんですか?

サノ:制限がつく方が燃えるタイプではありますね。アーティストの場合は自由に作品を発表すると思うんですが、デザイナーは依頼のルールとか制限のなかで、いかに相手を納得させるか、喜んでもらえるか、結果を出すかっていう意識があるので。(ちなみに)セックスマシーン!!(以下、セクマシ!!)はそういうオーダーで作りました。

--セクマシ!!はどういうオーダーをしてきたんですか?

サノさんは例えばとして、あるグッズの制作についてのお話をして頂いた。セクマシ!!のあるグッズのオーダーは、下記のようなものだった。

・名前問題がうちは凄くて、それをデザインの力でどうにかしたい。

・バンド名を、女子が着ても恥ずかしくない、いやらしくないと思わせたい=バンド名を前面に出しすぎない。

・おしゃれにしたい

・今までになかった感じが良い

・最近長いロングケーブルのマイクを持ってステージの外に出て行くというパフォーマンスをするようになったので、長いロングケーブルをモチーフにしてほしい

以上のオーダーを踏まえ、全ての要素を入れ込んだグッズがこちらである。

細かくグッズを見てもらうと、全ての要素がグッズの中に落とし込まれていることがわかる。

話だけ聞くと、無茶なように見えるオーダーも、頭をフル回転させることで、デザインとして形に落とし込むのだ。

どんな要望にもきちんと打ち返すところがプロの技だなーと感じる。

前編のまとめに替えて

実際、当ブログのロゴもサノさんに作って頂いたのだが、この時も、ふわっとしたオーダーしかしなかったのに、サノさんはきちんとロジックを組んだ上で、オシャレで素敵なデザインに落とし込まれたロゴを納品して頂いたのだった。

ここで言いたいのは、どんなデザインにもファンが想像する以上のロジックが展開されており、作り手の世界観や想いが余すことなく反映されているということなのだ。

あなたがお気に入りのグッズにも、きっとそういう想いが込められていると思う。

一度、マジマジとデザインをみて、どんなロジックでそのデザインになったのか、膨らませてみてはどうだろうか?

では、前編はここで一旦終わりにしたいと思う。

より刺激的な話は、後編に続くのである……。

後編記事:デザイナーさんはどのようにしてCDジャケットのデザインを作っているのかを訊いてみた

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