Cody・Lee (李)の「1096」が突き刺さった件
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自分は真空ジェシカというお笑いコンビが好きだ。
なぜ好きなのかといえば、面白いと思うからだ。
なぜ面白いのかといえば、ネタとか大喜利とか番組の立ち振る舞いに独特の個性を感じるからだ。
きっと一般的なお笑いコンビであれば、こういう攻め方はしないだろうし、もっと大多数の人がわかる「安牌」を攻めるはず・・・というところも、わりと自分の我を貫いてやりたいことを突き通すイメージだからだ。
テレビ番組の出演をみると、ふざけすぎと思うこともある。
いや、その振る舞いスベッているのではないか?
そう思うこともある。
でも、周りの反応的に風当たりが強くても、スタイルを変えないところが好きであり、面白いのだ。この前、某生放送の番組で、VTR振りの振りをされたとき、「VTR」と述べずに「エス」と「イー」と「エックス」のアルファベットを羅列した発言をした川北を見たときは、その我の貫き具合にすげえ、と思ってしまったのだった。
そんな真空ジェシカも、まったく脇道に逸れたボケをしない場面がある。
それはM-1の本番と、ぷよぷよをプレイしているときである。
曰く、ぷよぷよは漫才である、とのことで、これらを行うときだけは不要なボケは行わず、ストイックかつ誠実にそれらに向き合うのだ。
95%は独特と個性と変化球を貫くけれど、残りの5%はド直球で勝負する。
そんなイメージなのだ。
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Cody・Lee (李)の音楽的魅力
前置きが長くなってしまったが、Cody・Lee (李)もまた、そういうタイプのバンドだと思っている。
というのも、普段発表している楽曲ってわりとクセの強いものが多いイメージなのだ。
例えば、彼らの屈指のキラーチューンである「我愛你」。
イントロの時点でクセが強い。
その場面の声が似ているという理由で石崎ひゅーいのCDTVのステージで「さよならエレジー」の曲名をコールした千鳥のノブが、きっとスキも見せずに臆面もなく「クセがすごい」とつっこんでしまうのではないかと思うくらいに、Cody・Lee (李)の個性が迸っている歌である。
「異星人と熱帯夜」も「愛してますっ!」も楽曲の方向性はわりと異なっているが、他のバンドにはない独特の個性が充満している。
Cody・Lee (李)って、あえて言えば、志村時代のフジファブリックのエッセンスを継承しているバンドのように思うんだけど、それはフジファブリックに似ているというよりも、シーンにおける無二性具合がフジファブリックに似ている、という感じがするのだ。
水の中に油を入れても絶対溶け合わないように、Cody・Lee (李)の音楽ってどういうシーンの中に投じても混ざることなく、個性を解き放つ印象なのだ。
そう。
95%の歌は、クセのある変化球じみた楽曲で勝負するのだ。
でも・・・。
裏を返せば、5%だけド直球の歌を放り込んでくるわけだ。
「1096」は、そんなCody・Lee (李)のド直球の歌なのではないかと思っている。
この歌は、ボーカル/ギターの高橋響が高校を中退し「とにかく落ち込んでいた」という18歳の冬に作られたものということで、等身大の姿が見えまくる、とても言葉の強い歌である。
タイトルにある1096というのは、青春時代の3年間を示した日数である。
冬から春にかけて、18歳の自分の繊細な心象を描きながら、未来へとバトンをつなげる、そんな歌のように思う。
とにかく「1096」では、これまでのCody・Lee (李)の楽曲にはなかった胸の動かされ方をしたのだ。
感動というと、少し言葉がチープになるかもしれないが、あまりにもまっすぐに積み上げられた言葉が胸に迫ってくるのだ。
テイストはまったく違うが、フジファブリックの「若者のすべて」に出会った時のような、今までの変化球と違ったストレートだからこそ、言葉のひとつひとつがずしりと刺さる心地を覚えた。
「1096」は歌詞もさることながら、アレンジも素晴らしいと思う。
最初はピアノのみの伴奏で、淡々とメロディーを紡ぐ。
しかし、サビの最後のフレーズを歌うタイミングでソリッドなバンドサウンドが合流して、楽曲の空気を大きく変えるのである。
そして、2番のBメロが終わると、バンドサウンドのテンションはピークを迎える。
様々な感情が交錯した当時の心境かのように音が重なり反響する。
しかし、ボーカルは過剰にエモーショナルになるのではなく、あくまでも自分のペースでメロディーを紡ぐ感じなのもいい。
あと、何気に好きなポイントがもうひとつあって。
“君”のセリフが歌詞として一回登場するんだけど、そこだけは高橋響のボーカルではなく、尾崎リノのボーカルになるのも良いのだ。
さらには、そこから高橋と尾崎がユニゾンする大サビの流れも完全にキマっていて、自分的には終始ぐっときっぱなしだったのである。
まとめに替えて
普段変化球を投げることが多いバンドだからこそ、ふいに投じた渾身のストレートがどこまでもツボになる。
Cody・Lee (李)の「1096」を聴いて、そんなことを改めて感じたという、そういう話。
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