前説
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あ、このバンドってキャッチーだなーと思うバンドがいる。
メロディーが良いからそう思うのは当然なんだけど、それだけでは説明がつかないところもある。
例えば、米津玄師の「Lemon」をメタル界隈の重鎮がシャウトしながら歌うとする。
きっとその歌を聴いた人は(メタルに精通していなければ)“キャッチー”には聞こえないと思うのだ。(いや、しらんけど)
キャッチーにおいてメロディーは当然重要なんだけど、それだけではないわけだ。
重要になってくるのは、そのメロディーをボーカルがどう歌い上げるのか。
そこにかかっている。
そして、そのボーカルの声をサウンドがどう盛り上げるのかで、そのキャッチーさにさらなる磨きがかかる。
そう考えたとき、KANA-BOONって「そこ」が綺麗に揃っているからこそ、キャッチーなんだよなーと思ったのだ。
この記事では、そんなKANA-BOONについて書いてみたい。
本編
下記はKANA-BOONの新曲である「スターマーカー」である。
僕のヒーローアカデミアの主題歌としてもおなじみの楽曲である。
アニメソングとしてのツボを丁寧に抑えた楽曲だと思う。
個人的には、ゲストミュージシャンとして、フジファブリックの金澤ダイスケが参加しているところが推しポイントである。
KANA-BOONは三人体制となった。
そのため、どうしても今までとは違う流れの中で楽曲制作をしなければいけない部分もあったはずだ。
場合によっては、そこに“穴”を感じてしまう恐れもあったし、楽曲に微妙な違和感を覚える可能性もあった。
でも、その心配は杞憂だった。
と思えるような楽曲だった。
それはきっと金澤ダイスケが加わっていることが大きいと思う。
なんせ、鍵盤の音が見事にKANA-BOONの音楽に彩りを与えているからだ。
KANA-BOONの歌はキャッチーである。
そのキャッチーを、鍵盤の音が的確に後押ししているのである。
KANA-BOONもタームごとに曲のノリが変わっていくバンドだけど、今作はわりとアニソンであることにしっかりコミットした楽曲である。
アニソンならではのAメロ⇒Bメロ⇒サビのわかりやすい変化を忠実に楽曲の構造に落とし込んでいる。
アニソンの場合、この各パートの変化をわかりやすく描くことが重要になりがちなんだけど、「スターマーカー」では、キーボードが入ることで、その変化の輪郭をより濃くしているところがある。
それこそ、マーカーで構造をしっかりとなぞっているような、濃さがあるのだ。
そのため、楽曲の進行にメリハリとキラキラが増加している。
この曲の持つアッパー性も、美しく輝いている。
そういうことをトータルして、フジファブリックの金澤がコラボすることで、KANA-BOONの持つキャッチーさがより明確になった、と言えるわけである。
もともと、良いメロディーと良いボーカルを持ったバンドだった。
今作では、そこにさらにキーボードという武器を揃え、前述した魅力的なキャッチーさをより強固にしたのである。
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メンバーが欠けた経験をしたバンド同士
事情は大きく違うけれど、KANA-BOONもフジファブリックも、メンバーが抜けたことを経験したバンドである。
そして、変化をきっかけにして、より大きくて意味のある一歩を踏み出したバンドでもある。
そういう意味でも、両バンドは似ているところを感じさせる。
思えば、フジファブリックも大きな転換をしたあとに、リリースしたシングル曲は、アッパーでキラキラしたアニメ主題歌だった。
バンドの物語だけで言えば、もっと劇的な歌にした方がファンに刺さりそうなものなのに、あえて必要以上のことは語らずに、純粋に「前向きであること」のみを印象づける歌を生み出した。
その点をみても、どこか「徒然モノクローム」と「スターマーカー」は似ている気がするのだ。
金澤がどういう狙いでKANA-BOONの楽曲に自分の音をあわせていったのかはわからないけれど、金澤の音は今のKANA-BOONの魅力と綺麗にハマっていることは確かだと思う。
なんせ「スターマーカー」がここまで純にキラキラしているのは、キーボードがきらびやかに楽曲を彩っているからだよなーと聴いていて思うから。
キーボードって面白い楽器だと思う。
切ない旋律や空気を生み出すのもお手の物だし、こういうキラキラで明るいポップスを作る上でも、重要な役割を担いがちである。
要はキーボードのトーンで、楽曲の色は大きく変わってしまう。
そういう主導権を握っている楽器だと思うのだ。
今回の歌も、キーボードのトーンが楽器の方向性を決定づけたと思う。
そして、それはきっと今のKANA-BOONの伝えたいメッセージそのものとリンクしていたように思うのだ。
シンプルに前向きであることを表現するうえで、この歌が僕のヒーローアカデミアの主題歌である意味も大きかったように思う。
アニソンだからこそ、よりまっすぐに前向きであり、キャッチーであれたように思うから。
そして、この楽曲はたくさんの人にしっかりと受け入れられている。
新しいKANA-BOONは、好調なスタートを切ったように感じるのである。
まとめ
もちろん、三人体制のKANA-BOONと書いてしまうことに対する違和感というか、なんとも言えない気持ちはそう簡単に拭えるものではない。
仲良しバンドの代名詞だったKANA-BOONだからこそ、よりそのことを感じてしまう。
とはいえ。
変わってしまったことをずっと言葉にしていても、どうしようもない。
だからこそ、今の話をしたい。
少なくとも、これだけは言える。
今のKANA-BOONが生み出した楽曲に、間違いなかった、と。
これだけは確かだと思うのだ。
まだまだKANA-BOONはノスタルジーの対象ではない。
「スターマーカー」を聴いていると、そのことを強く感じるのである。
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